トップページ | 2015年2月 »

2015年1月

2015年1月31日 (土)

個人的メタル受容史

 今回のエントリーは、私個人がメタルをどう聴いてきたかの一人語りなので、BABYMETALには殆ど関係が無い。

 BABYMETALはメタルか否かは、今現在も国外・内では論議の的となっている。
 この争点が合致を見る事はないだろう。BABYMETAL側は「メタルファンも聞いて欲しい、独自な音楽」だという主張であるのに対して、メタル側からすれば、「メタル要素も無くはない別物」という認識を変える事はないからだ。

 私がBABYMETALを知る以前、ハードな音楽を聴きたいと思う時というのは、耳の中に刺激を与える様な激しいものを求めている訳で、SU-METALの様かはともかくも、女の子の声が入ってるものは敬遠したと思う。

 我々の世代であると、ハードロックは誰しも普通に聴いてきた。
 私が初めて洋楽のコンサートに行ったのは、KISSの武道館だった。KISSは中学生だった我々にも大人気だったが、おどろおどろしいメイクに反して音楽は判り易いロックンロールだったのも大きい。
 すぐその後かに、Deep Purpleを脱退したリッチー・ブラックモアのRainbow公演が武道館で行われた。まあこの頃の武道館のコンサートというものは、音がわんわんと回ってとても音楽を楽しめる様なハコではなかったのだが。

 私がバンド演奏を始めたのも中学だが、今に至るまで純粋なハードロック、メタルをやるバンドに属した事が無い。20年くらい前には、まだ身体が動ける内に一度はロックバンドをやりたいと思った事もあるのだが、とうとう果たせなかった。

 リスナーとしては、80年代のL.A.メタル(現在はヘアーメタルという蔑称もある)が好みで、特にWingerが好きだった。ギタリストのレブ・ビーチは、後にドッケンに入って腕を奮った。
 90年代に入って、脚本家となり、地方局制作のホラードラマを弟が監督する作品があったのだが、盛大にちょっと古いL.A.メタルをBGMに使って貰った。当時のテレビは、既成曲の使用が今よりも遥かに簡単だったからだ。
 しかしビデオ化された際、このBGMは当然使えず、著作権フリーの様なつまらないインスト曲に差し替えられてしまったのだが。

 Metalica, Anthrax, Megadeathといったバンドが、とにかく速いテンポのメタル=スラッシュ・メタルで人気を集めたが、私の好みではなかった。Slayerは好きだった。
 思い返すと、ヘヴィ・メタルとカテゴライズされるバンドはあまり聴いていなかった事になる。Led Zeppelinなどの流れがハードロックとすると、Iron Maiden, Juda's Priestといったバンドがヘヴィ・メタルとして区分されていたが、私はそれらの音楽を好まなかった。
 90年代はオジー・オズボーンがソロ時代で、(そういう意図は無かったろうが)若手のギタリストを次々にスターダムに上げていた。

 この10年程の間に私が聴いてきたものは――、
 最近リユニオンしたExtremeが大好きだった。尤もこのバンドの音は、私のホームであるファンクなのだが。
 その意味ではミクスチュア系も聴いてきた。Korn, Limp Biskets, 等々。

 私はプログレも少し好むので、Dream Theaterは数年前まではよく聴いた。
 しかし一番好んできたのはSlipknotだった。初期は日本人特殊メイクアーティスト、Screaming Mad Georgeがデザインしたグロテスクなマスクを被っているヴィジュアルにまず驚き、しかし演奏する時は流石にもっと通気性のあるものに変えるだろうと思っていたら、あのマスクのままワイルドな(昨今のメタル界ではブルータルなという表現になる)ステージをしていて愕然となった。
 あんなに人数揃える必要があるのかも疑問だったが、パーカッションというにはあまりに野蛮な、ビール樽管を溶接したオブジェを金属バットでぶっ叩く破壊的なパフォーマンスに納得させられてしまった。オブジェには牛の生首が刺さっていた事もある。
 また彼らはステージの上で、バンドメンバー同士が殴り合いの喧嘩までする。
 そうしたバンドなのだが、音楽的には、特に最初の3枚までは独創性に溢れていた。スタジオ盤だけでも充分に楽しませる。

 しかし数年前にベーシストが、ロックバンドの宿痾の様に亡くなってしまい、また事情は判らないながら、ドラマーが離脱してしまった。
 ジョーイというドラマーは、メタルのドラムというよりも、スチュワート・コープランドの様な高いチューニングとフィルの入れ方をしていて、これがサウンドの要であった。そればかりか、オリジナル楽曲の多くにジョーイは関わっていた。
 最新アルバムは、ジョーイ抜きで作られた。やはり、音楽的な面白さは後退してしまっていた。

 昨年の日本で開かれたノットフェスをテレビで見たが、ヴォーカルのコリーが「コンバンハトーキョー」とやたらフレンドリーで驚き、またステージの野蛮さも相当にマイルドなものになっていた。仕方ないのだろうが、寂しかった。

 Slipknotが出始めた時、「あれはメタルではない」という言質を読んで喫驚した。
 それは確かにギミックもあるし、メンバーにはターンテーブル担当もいるのだが、HipHopの要素は殆ど無い。紛れもなくメタルだと思い込んでいた私は、メタルのセグメンテーションの厳格さに、正直に言えば呆れた。
 今はSlipknotの事はNuMetalではあろうが、メタルではないと言う人は流石にいないだろう。

 一方で、メタルとは成り立ちが異なり、パンク出自のハードコア・メタルというものがあって、もう××メタル、××コアといった区分はもう把握しきれないでいる。

 

2015年1月29日 (木)

Over The Future

Babymetal_logo

 BABYMETALのロゴマークには、三人それぞれを象徴する意匠が組み込まれていると知った時、非常に驚いた。
 小さなガイコツマークは、YUIMETALが小学生時から好きなマークらしい(何故)。さくら学院の校章を考えようというお題に対しても、このマークを書いていた(無理に決まっている)。
 モノクロで使われる事が多いので目立たないが、2つのハートマークはMOAMETALのパーソナル・マークであるらしい。
 ではSU-METALのは?
 古いロゴには、ライトニングのSマークが書かれていたらしいのだが(SU-METALのサインには今も書かれる)、今は広げた翼が描かれている。
 これはBABYMETALの母胎であったさくら学院の、更なる前身=可憐Girl'sの、後期のシンボルであった。アニメ『絶対可憐チルドレン』後期オープニング『MY WINGS』で最大にこの意匠が用いられている。

 可憐とBABYMETALは、単に中元すず香が属したユニットの過去現在という単純な割り切りが出来ない。

 YUIMETALこと水野由結は、小学生時に熱烈な可憐Girl'sのファンであった。
 メンバーの武藤彩未(現在はソロで活躍中)とは家族ぐるみの付き合いがあったのが端緒なのだろう。
 この彼女が自ら手書きで記したブログには、ただ好きなだけでは無く、深く想い入れる個人的な事情が極めて理性的、論理的に書かれている(更に厭になる程、字が美しい)。
 さくら学院ブログ 15歳 水野由結

 可憐Girl'sは、アニメ放送終了時の2009年3月に「任務完了ライヴ」を行い解散した。
 このライヴの時、場内なのか場外なのか状況が判らないのだが、完璧な振り付けでずっと踊っていたのが、幼い頃の水野由結だった。

 水野由結と菊地最愛が、さくら学院に“転入”する時のオーディション用と思われるダンス映像があるのだが、この時に彼女達が踊っているのが「Over The Future」だ。

 そして可憐Girl's解散から3年後、2012年12月、BABYMETAL単独ライヴ「I、D、Z ~LEGEND "D" SU-METAL聖誕祭」にて、その時だけ披露された楽曲があった。
 そのイントロが流れ始めた時、場内のファンは一斉に沸き上がった。
「Over The Future - Rising Force Version」を歌い始めたのはYUIMETALとMOAMETALだ。
 可憐Girl'sよりは少し大きいだけだが、踊る姿はオリジナルのイメージに近い。
 しかし彼女らの歌声はより自信に溢れており、振り付けも基本的にオリジナルを踏襲しているが、動き、曲げ、伸ばし全てが洗練されており、より大きなモーションになっていて見栄えが全く異なる。
 BABYMETALの持ち歌にはないストレートな歌を、二人は本当に気持ち良さそうに歌っている。
 このまま二人で歌いきるのか、と思っていたら、曲の半ばから突如SU-METALが舞台に上がり、ソロで歌い始めた。
 すぐに三人は可憐Girl'sのフォーメーションを再現していく。
 やはりSU-METALが歌い出すと、他の二人の歌声は分が悪くなってしまう。
 更にはダンスも、SU-METALの暴虐的なまでの激しさは舞台への視線を独占してしまう。

 こんなに激しい振り付けだったのか。
 可憐Girl'sのそれを再び見直すと、いや、確かに振り付けは同じだし、他の二人より一つ年少で(当時は)一番小柄なSUZUKA(可憐Girl'sでの表記)は、他の二人より大きく動いていた。

 最後のコーラスを終えるや否や、この歌は、チア・コールの様に「You We can fly! Over the future world!」と叫んで終わるのだが、このBABYMETAL版「Over The Future」の終わり方のあまりの見事さに、本当に鳥肌が立った。もう何回も飽くる事無くリピートしてしまった。

 このカッコ良さの1つは、SU-METALが歌い終わった後に一旦後ろに振り向くのだが、肩を一旦外に振ってから急激にターンをして舞台後方に数歩歩む。それがあまりにも決まっているところにある。
 てっきり、これはBABYMETALからの振りだろうと思ったのだが、やはり可憐Girl'sのオリジナルを見直すと、SUZUKAの歌終わりのポジションは下手側なのだが、確かに肩を入れる仕種をしていたのだった。

 この「Over The Future」を巡る“物語”は、多くのブログやネット掲示板で指摘されていて、私は後追いで知った。
 BABYMETALは、素顔を隠すギミックを導入している為に(SU-METALの普段の姿は『世を忍ぶ仮の姿』という設定になっている。これは聖飢魔IIに倣ったものだろう)、こうした裏側のエピソードは、ファン側が断片の情報から紡いでいるのだ。

 この動画は、3つの「Over The Future」を一画面に合成して見せてくれる。
 更に、作成者のコメントは深い考察をしていて、とても感銘を受けた。

Over The Future : 思うところ・・

 最初にこの曲を聴いたときの印象は、素晴らしいとまで思えなかった。やたらに転調する楽曲は好みでないのと、サウンドも90年代ぽいというか、Stock, Atkin, Watermanぽいと感じたからだ。
 しかし歌声には不思議と懐かしさをも感じた。考えてみると、いにしえのテレビ漫画主題歌(昔のアニソン)の中には、少年少女合唱団が歌うものがよくあったからだ。

 BABYMETALの "Rising Force Version" を聴いて(見て)以来、この曲は全面的に素晴らしいと認めざるを得なくなっている。
 身も蓋も無いフレーズ「ダイターン」などを織り込みながらも、困難に立ち向かっていく者を鼓舞する歌詞と、それをストレートに表現する曲調(Cメロの二拍三連のところは、力を込める振り付けと共に強い印象を残す)が、幼き水野由結にどれだけの勇気を与えたのかを思うと、こうした楽曲というものはいつの時代にあっても、常に誰かが送り出していくべきものなのだと思った。


 

2015年1月28日 (水)

タブー感を越える

 海外のBABYMETALファンの中には、BABYMETALのルーツを探っている内にさくら学院のファンになってしまう人が続出している。
 12月のNHKの番組でも、イギリス人の「俺は×0年メタルを聴いてきたが」といういかついベテランがインタヴュウを受けていて、彼はさくら学院の旗を手にしていた。

 私自身はというと、どの様にBABYMETALは成立してきたのかという事は知りたいし、彼女達のBABYMETAL以外の表情を見る為に、仕方なく動画を見たりしていた。実のところ、20年以上アイドルという存在と無縁に過ごしてきたし、この歳になってアイドルの事を掘り下げたいとは思っていなかった。増して小中学生の「成長期限定ユニット」なのだ。それが良いと広言するのは私でも躊躇う。
 その私でも、段々と歴代院生の顔と名前が一致してきて、このユニットのユニークさには感心し始めている。これについてはまたいずれ。

 しかしそれにしても、BABYMETALはそうした「受け取り側の居心地の悪さ」を吹き飛ばしてしまう事には驚かされる。
 いや、未だに懐疑的な人はBABYMETAL好きの事を、ただのロリコンだと蔑む。
 欧米での小児性愛タブーは社会的にも強固に存在するが、そうした視点での批判は今まで目にした事が無い。当然である。BABYMETALには性的なイメエジが一切無いからだ。

 女の子らしいシルエットのゴシック&ロリータな衣装は、なかなか更新されずちょっと気の毒になるのだが、しかし腰は多層パニエで強固にガードされている。彼女達は躊躇なくジャンプし、脚を高く上げる事が可能となっていて、考え抜かれた意匠だと感心してしまう。
 振り付けの中に、色っぽさを思わせる仕種が無い訳でもないが、それも「ちょっと背伸びをしている」範疇だ。

 それでも、客席、いやモッシュ・ピットを(BABYMETALは立ち席をこう呼ぶ)埋める観衆ばかりか、ビデオキャメラ越し、スマホのレンズ越しの映像を見る我々すらも魅了させる。
 献身的な彼女達のパフォーマンスは、実はかなり限界の領域で成立していた事を知っている。初の海外公演となったシンガポールでは、ステージから袖に入った途端、YUIMETALがへたり込んだ。
 ライヴを重ねた2013頃からは、徐々に体力がついてきた様だが、過酷なステージであるのは変わりなく、武道館二夜連続公演での初日(赤の夜)は、「ヘドバンギャーーー!!」の後半でYUIMETALが高いステージから転落する事故もあった(幸いな事に大きな怪我する事無く、次の曲で復帰した)。MOAMETALが「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の駆け出す場面で、足を挫いて転倒もしている。
 2014年のソニスフィア、6万人のメタルヘッズを前に全く臆すること無く全力を出しきった彼女達だが、曲間にMOAMETALが床にへたりこみ、スタッフに介護されている写真も見た。
 ただ、彼女達は今は1ステージをやりきっても元気で、神バンドやスタッフを戸惑わせる程になっている様ではある。
※このエピソードはHeavy Montreal の時のものだった。

 決められた振りをしているだけ、定められた表情をしているだけ。
 それはそうに違いない。しかしそれを観客の前で履行するには、とてつもない修練と技術と精神力、体力が必要なのであり、それ以前に大前提である「才能」が絶対条件として必要なのである。そこには一切のギミックが無い。
 だからBABYMETALのステージは、どの時のものを見ても感動するのだ。

 ネットの書き込みで、「それでもロリコンと言うなら、もう別に俺はそれでもいいや」という文言を幾度か見た。
 私も同感である。
 私は三人三様に好きであるが、ここはあるネットの至言で締めるべきだろう(元ネタはあるらしいが)。

 ゆいちゃんまじゆいちゃん

2015年1月26日 (月)

BABYMETALはバンドである。

 2月に出版する本の校了と、自分が出るライヴがあった為に更新出来なかった。
 ライヴというのは、成城大軽音学部の先輩が還暦を迎える事を記念したもので、ホーンセクションが8人、ドラマーは入れ替わり3人という大所帯で、六本木BeeHiveのステージに全員乗るのかが、最大の問題だった。最悪、私はステージ下に降りることも覚悟したのだが、何とか全員乗る事が出来た。
 このバンドは1983年からあるのだが、20年近くのブランクがあって、プロになっているメンバーはまだしも、社会人メンバーは演奏力を取り戻すのが先決だった。
 私は2年前からちょこちょことライヴをしているので何とかなった。

 世知辛い昨今、こういうところでアマチュアバンドがセットリストを上げようものなら、大変な事態を招きかねないので、詳述出来ないのだけれど、我々のレパートリーの多くは、複数の楽曲を繋げたり、別の楽曲の歌詞で歌ったりという、今のマッシュアップの様なアレンジをしている。
 私はスコアを書けないので、佐村河内氏の様に構成表を作って、あとは口頭でアレンジを伝える。当然、管楽器用には譜面が必要になるのだが、今回はゲストで出演してくれたバリトン・サックス・プレイヤーが見事に仕上げてくれた。


 BABYMETALはバンドか。BABYMETALはメタルか。
 今になってもこの論議は世界でも続いている。
 よく、「彼女達は楽器を弾いていない、曲を作っていない」という文言が、否定をする論拠となっているが、楽器を演奏しないリード・シンガーがいるバンドは無数にあるし、YUIMETAL+MOAMETALは「4の歌」という曲を作ってCDにまで収められているので、これらは全くの言いがかりに過ぎない。
 彼女達が神バンドというバックバンドを従える様になったのは2年程前からだが、もし未だにカラオケを流してのパフォーマンスが続けられていたら、私自身はやはりファンにはならなかったと思う。
 神バンドは(多分)音源の演奏には関与しておらず、音源を完璧に再現する事を望まれて起用されたのだと思っているが、2014年に入ってからの神バンドの存在感は、決して音源再現の域に留まるものではなく、彼女達のショウをとてつもなく後押しし、観客を鼓舞する存在になっている。
 スケジュールによってギタリスト、ドラマーが交代する事はあっても、バンドとしてのグルーヴを完全に得ている。サンプラーやシンセを同期させる為にクリックを聴きながらであっても、グルーヴを産み出すのだから、やはり彼らは個々の演奏者として優れているばかりではなく、バンドになっているのだ。
 私にとってのBABYMETALは、三人と神バンドなのだ。

2015年1月22日 (木)

LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~

 NHKおはよう日本のリポーターのブログに大笑いをした。

419mtohzgl

 NHK新規(どの時期にファンになったかを、アイドル系のネット・コミュニティではこう表現する。私はNHKのスペシャル番組が契機だったのでこう表現)である私が、発売と同時に入手した最初のものが、「LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~」だった。
 そして既発売も含めブルーレイは三種買ったのだけれど、実は未だ観られていない。まずはネットで見られるものをと思っていたのだが、ダウンロードした動画は既に30GB近くにまでなっており、さすがに自分に呆れた。

 さておき、ライヴCDに関連した記事が期せずして昨日と今日幾つかアップされた。

エンタメNext
BABYMETALが今、あえて「ライヴCD」を発表する意義

 ちょっとこれは食い足りなかったが、確かにライヴのCDそのものを発売するのは昨今では珍しい。

 そして個人ブログだが、

BABYMETAL語り場
「赤い夜(CD)」KOBAMETALの本気度について

 周波数解析もしており、非常に興味深く読んだ。

「LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~」は、ネットではあまり重要視されていない気がする。
 BABYMETALはヴィジュアル要素が音楽とイーヴンにあって、その片側だけを抽出したものに価値を見出し難いところはあるかもしれない。

 発売以来、私の車ではずっとこのディスクがエンドレスで再生状態になっている。
 イヤフォンでも相当に聴き込んでいるが、未だに飽きない。
 上記ブログでも指摘されているが、このディスクは高音域、低音域が控えめになっている。リヴァーブ感が少ないのもそれが理由だと思う。

 マスタリング・エンジニアのテッド・ジェンセンがどうしてこういう音に仕上げたか、私なりの考えを述べてみたい。

 本ブログの最初の記事で、私がBABYMETALを一言で表現するなら「ネタから出たまこと」だと書いた。
 ネタは虚構性であり、今のメディアでは“ギミック”と表現される。
 まことは、勿論真実性だが、“リアル”なものだと規程している。
 私が最初にBABYMETALに驚嘆したのは、あれだけの激しいアクション(ダンス)をしながら、実際に歌を歌っているところだった。
 ダンスを見せる事がイベントの主題なら、プレイバック(口パク)でも構わなかった筈だし、他のグループならそうしている。またそれをファンが不満に思う事も無い。

 SU-METALが実際に歌いたいと思うのは当然の様に感じた。自分=歌とまで言い切る程、歌う事に真摯なシンガーだからだ。
 しかしまさか、YUIMETAL+MOAMETALまでが生で歌っているとは思わなかった。
 一部のパートはサンプリング音源を併用しているが、主なところは本当に歌っているのだ。とても歌いながら出来るとは思えないダンスをしながら。
「おねだり大作戦」「4の歌」のライヴ映像を見て、唖然となるしかなかった。

 私が「LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~」を聴いて感銘を受けたのは、神バンドの演奏力を再確認した事もあるが、ヴォーカルが生々しい事が大きい。
 SU-METALの歌そのものについては、また改めて幾度か書きたいと思うが、彼女の歌は完成されていない。技巧を殆ど使わず、真っ直ぐに歌う姿勢が多くのファンの共感しているところだと思う。
 しかしブレスが続かなかったり、音程が危うくなったりする瞬間が幾つかあるのだが、それらの瑕疵は、彼女の価値を貶める事には全くならない。

 YUIMETAL+MOAMETALの、特に「おねだり作戦」は、音源製作段階ではあまりライヴで歌う事を想定していなかったと思う。
 サンプリング音源の助けを借りても尚、声が続けられない瞬間がある。

 これらが何の補正もされず、そのままCDになっているのだ。
 このCDは、極めて良く出来たドキュメンタリでもあると思う。

 ギミック、フェイクではない、リアルなものがそのまま発売された。
 曲目は、現在唯一のアルバムと同一(そもそも『赤い夜』はそれをノンストップで歌うという趣旨のライヴだった)。
 恐らく原盤製作予算はそう掛けられなかったろう。予算の殆どをテッド・ジェンセンのマスタリングに託した。
 その意図は、充分以上にこのCDから聴きとれる。
 これはリアルなBABYMETALなのだ。

 だが、このリアルなBABYMETALは約1年前のBABYMETALであり、現在の彼女達ではない。



 

2015年1月21日 (水)

融合という概念の持つ危険性

 NHKの海外向けネット放送でBABYMETALが紹介された。

BABYMETAL Rocks the World

Nhk

「アイドルとメタルの融合」は、奇妙な言葉ではある。
 アイドルは音楽のジャンルではない。ティピカルなアイドルが歌う楽曲という事だろう。
 異なるジャンルの音楽を組み合わせ、全く新しい音楽を作り出そうという試みは、かつてより盛んに行われてきた。

 私自身が最も自分のホーム・グラウンドだと思っているのは、1970年代末のジャズ・ロックだ。ジャズとロックは長らく異質な存在だったが、1960年代末にマイルス・デイヴィスが、単に電気楽器を自身のコンボに導入するだけでなく、ロック・ギターのリフを楽曲のモチーフにした時から、ジャズとロックの今で言うマッシュ・アップが始まった。
 ウェザー・リポートやマハヴィヌシュ・オーケストラなどの先鋭的なグループが走った後に、ソウル・ミュージック、今で言うR&Bのグルーヴが導入される様になり、ジャズ・ロックは「クロスオーバー」と呼ばれる時期があった。
 私がリアルタイムで体験していたのがこの時期に当たる。
 楽曲の良さに加えて、演奏技術を楽しめるのが魅力だった。

 しかしやがて、クロスオーバーはもっとお洒落な呼び方になっていく。
「フュージョン」である。「融合」そのものだ。
 都会的でお洒落な、BGMに成り下がった。

 私が今尚、自分が最も親しんだ音楽について語るとき、自嘲を込めて「フュージョン」と投げやりに言ってしまうのは、相当なトラウマがあった訳だ。
 軟弱で、ジャズ的な要素が希薄なフュージョンは、異なるジャンルの音楽をミックスさせた時に起こるであろう事を証明していた。
 異なるジャンルを組み合わせ、聴き心地良く調整をすれば、音楽的には何の冒険性が無い、どちらとも言えない様な音楽になってしまうのだ。

 

 発表されているBABYMETALの楽曲数は、4年程の間に20曲にも満たない。ワンマン・ライヴを辛うじて成立する数しかないのは、やはり尋常ではない。
 しかし、その全曲で、様々な要素をまるで試す様に盛り込んでいき、曲のヴァリエーションが増えていった。
 現在のライヴでは、初期の曲も殆どアレンジも変えず(振り付けも)、最近の曲までその全てを披露される為、「BABYMETALの曲とは」という表層的な印象を単純化せず、人によって膨らむ事に結実している。
 当初からの戦略通りだとすれば、とてつもなく聡明であり忍耐強く、三人の少女がずっとその活動を続けて、歌も踊りも飛躍的に成長する事も全て判っていた事になるのだが。

 アイドル・ミュージックも、時代につれて変遷している。
 BABYMETAL楽曲に於けるアイドル性は、例えばデビュウ曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」(ATOKに登録してしまったので略せずに書ける)のBメロ~サビは、私には80年代アイドル曲に聞こえる。90年代風の転調がある曲もあるし、BABYMETALのアイドル曲性は、極めて観念的であり、「アイドル曲はこういうもの」という仮想のスタンダードを想定しているのだと思う。

 楽曲ごとの分析は個別に書きたいので、ここでは総論的な書き方をするが、メタルの要素を如何に取り込むかという方法論が、BABYMETALは天才的だったと思うのだ。

 BABYMETALフォロワーという訳ではないだろうが、アイドル曲にバンドサウンドを導入するケースが最近は非常に多い。それらとBABYMETALが一線を画し続けているのは、4年前からブレていない、メタル要素の抽出手法にあるのだ。

 アイドルが歌うのだから、とメタル要素を聴き易いレンジ、トーン、ダイナミクスに後退させなかった。寧ろそちらが主だというバランスになっている。更には打ち込みではあるが、ツーバス(2バスドラム)連打という、普通なら曲想を壊すからと忌避する様なものまで導入されていた。デビュウ曲からそれだったのだ。尋常ではない。

2015年1月20日 (火)

BABYMETALの基礎知識

 さて、BABYMETALとそれを巡るあれこれについて、書きたい事は幾らでもあるのだけれど、先ずは基本的な情報を踏まえておかねばなるまい。
 既に知っている人には退屈な内容なので、飛ばして貰って構わない。




 BABYMETALは、「成長期限定ユニット(=小中学生)」というアミューズの次世代アイドル、さくら学院の《部活動》として、2010年に結成された。当時は重音部(軽音ならぬ)の活動とされていた。
 SU-METALこと中元すず香が中1、YUIMETALこと水野由結、MOAMETALこと菊地最愛の二人は小学校5年生だった。
 2013年、中元すず香が中学を卒業すると共にさくら学院も卒業したが、引き続き《課外活動》としてBABYMETALは継続され、由結+最愛はさくら学院の活動と同時並行でBABYMETAL活動をしている――。

 中元すず香は、広島アクターズ・スクール出身で、Perfumeの後輩。
 アミューズに移籍して、アニメ「絶対可憐チルドレン」とのタイアップで結成された小学生アイドル・グループ、可憐Girl'sの一人として小学校5年でデビュウ。
 可憐Girl'sが小学校卒業に合わせて解散した後に、さくら学院のプロジェクトがスタート。由結+最愛は、一年目の途中からの転入生という形で参加した(実は最初からメンバーにはカウントされていた様だ)。
 二歳違いだが、さくら学院でBABYMETALの三人は同期だった。

 中元すず香の姉・日芽香は現在乃木坂46のメンバーであり、幼い頃は姉妹でも歌っていた。
 小学生時にミュージカルのキャストになってソロを歌うなど、普通のアイドル指向というより、より歌うという事に意欲を持っていたと思う。
 そしてプロ歌手としてデビュウしてから既に現在7年のキャリアも持っている事になる。
 彼女の歌を最大限に発揮させる舞台設定が、BABYMETALの最初の目的だったと思われる。

 由結+最愛は、小学生タレントとしてよく一緒になっていた様だ。経緯は判らないが、アミューズに同時期に入り、他の8人よりも年齢も身長も小さな、さくら学院生として活躍する。BABYMETAL以外に、クッキング、バトン等々の部活動にも参加している。

 BABYMETALのプロデューサーは、アミューズのキッズ部門を担当していたKOBA-METALという人物だ。BABYMETALのプロジェクトに於いては、××METALという一律的な抽象化が図られている。作詞、作曲、振り付けといった作家達がそうなっているのだが、そうする必要はあまり感じられない様に思う。

 普通ならば、プロデュース権を持つマネージャーであっても、音楽面ではプロデューサーを立てる筈だ。しかしこのプロジェクトでは一元化されており、音源製作も統括されている。
 それが可能であったのは、BABYMETALというプロジェクトが最初は全く予算の掛けられない、自主製作規模のものだったからだ。

 曲をレコーディングし、自社のインディーズ流通(その為、このデビュウDVDシングルを遅れて来た私の様なファンは入手が出来ない)。あとはPV(プロモーション・ビデオ)を低予算で作り(衣装は自前だった)、それをYouTubeにアップロードする。それだけしか出来なかったのだ。

 KOBA-METALというプロデューサーのユニークなところは、自身がヘヴィ・メタル音楽の忠実なファンだった事ではなく、それを趣味に留めず、アイドルの歌う曲に反映させたところにある。
 アイドルと、ハードロック、ヘヴィメタルの融合という試みは、これまでに例が無かった訳では無い。ではBABYMETALはどう違っているのか。それについてはおいおい考えていきたい。


 BABYMETALは先日1月8日に、さいたまスーパーアリーナで2万人を集めたライヴを行い、5月までの活動を休止している。大きな理由は、由結+最愛の二人が3月で中学とさくら学院を卒業するからで、それまでの期間はそれに専念したいというのが大きい様だ。

 お陰で私もこの機会にと、古参のファンに追いつくために日々勉強をしているのだが、もう大体判ったかなと思うと、「えっ」と驚く事がある。
 テレビ朝日のネット・ストリーミング枠で、毎日4枠ずつ流すLogGiRLという番組が今日からスタートし、その最初の時間枠はさくら学院が務める事になった。当然、由結+最愛も出演していたのだが、生放送番組が初めてだからとの事で、特に水野由結が凄まじい緊張をしていたのだ。
 5万人(6万だったという報道もある)のメタルヘッズ(メタル愛好者)を前に、緊張など微塵も感じさせないパフォーマンスをしていた彼女が、ネット放送ではああも緊張するものなのか。衝撃であった。

 という事で、アウトラインは把握しつつも、BABYMETALは私にとってまだまだ謎を多く抱えた存在である事が改めて認識されたのだった。

1e42a7b9s

2015年1月19日 (月)

BABYMETALの事を考える

 BABYMETALについて、日々考えている。
 私がハマったのは、昨年12月にNHKで放送された「BABYMETAL現象 ~世界が熱狂する理由~」を見たからで、まだ一ヶ月も経っていない。

 ただ、昨年7月にイギリスのメタルフェスに出演し、好評だったという報道を聞いて、少しずつ関心が向いていた。だから番組を予約してまで見ようとしたのだった。
 番組を見て以来、ネットで改めて情報を集め始め、このSonisphere 2014の、5万人もの観客、それもただの観客ではなくメタルファンという、アイドルとは相反する価値観を持つであろう人々を、ほぼ熱狂させているライヴを観て、完全にヤラレてしまった。

 BABYMETALは、今でも尚しばしばこう紹介される。
「アイドルとメタルの融合を目指す、メタル・ダンス・ユニット」

 しかし現在の彼女達は、この説明とは全く異なる領域に既に到達しているのだ。
 確かに元々は、そういう「仕掛け」として世に出た。
 しかし今は違うのだ。

 BABYMETALの事を考える度に想起する言葉がある。
「ネタから出たまこと」




 私は40年以上、洋楽を好んで聴いてきたし、自分でも演奏をする。
 ヘヴィ・メタル、ハードロックも聴くのだが、私は基本的には黒人音楽であるジャズやソウルの人間だ。

 BABYMETALは、当初はオケを流して口パクでパフォーマンスをする、今のアイドル流のステージをしていたのだが、エアーバンドを背後に揃え、数年前からは生のバンド「神バンド」の演奏をバックにパフォーマンスをしている。勿論ほぼ生歌である。
 NHKの番組を見た時に得た最大の衝撃はそれだった。
 アイドルでもあり、メタルバンドでもあったのだ。ネタではなく本当に。
 しかも、歌だけではなかったのだ。
 あれほど激しいダンスを全曲に渡ってやっているのが、とても信じられなかった。
 ステージで1曲演奏するだけで、どれだけ疲弊するかは自分自身がよく知っている。しかし彼女達の1曲での運動量は到底比較にならない。
 正直に言って、人間とは思えなかった程だ。

 あまりに疑問が肥大化した私は、某掲示板で古参の住人に訊ねた。
 どうして、中高生の女の子があれだけ激しいステージを出来るのかと。
 親切に教えてくれる人がいたが、ソロ曲が交互にあったり、ファンの間では「紙芝居」と呼ばれる映像ショーが差し挟まれるので、少しは途中で休憩が出来るのだと。最も大変なのは全曲で叩くドラマーではないかとも。(この事情も最近は変わってきているのだが)

 それにしても、アイドル然した、いやアイドルとしても未だ若い彼女達の見せるステージは、体力だけで何とかなるレベルではない。キレなどという言葉しか思いつかない自分が情けないのだが、これまで私が観た事のあるエンターテインメント・ショウのどれにも似ておらず、ある面ではこれを凌ぐものは無いとさえ思えた。

 なぜこんなグループが今いるのか。
 なぜ彼女達は世界の人々を惹きつけるのか。
 なぜ私は心奪われてしまったのか。

 それについて、どうしても書いておきたくなり、このブログを始める事にした。

 今は更新を止めているが、私は「浅田真央試論」というブログを書いていた。2013年の暮れから、2014年、ソチ・オリンピックに臨んだ、浅田真央の現役最後のシーズン(と当時は認識されていた。現在は『ハーフハーフ』で競技復帰の可能性もある)。それをリアルタイムで記述しておきたいという衝動で書いていた。

 このBABYMETALブログも、近い。いやBABYMETALの解散が近いなどという事では決してない。ただ、現在の17歳と15歳の少女達は既に4年程の期間を共に活動してきており、そして現在がある。結成当初と今は、基本的なコンセプト、本来彼女達が持っていたポテンシャルの高さに頼るのではなく、とてつもないハードワークと経験を持って、全く別の存在になったのだ。

 成長期にある彼女達の1年後は、更にまた進化して別の領域に踏み入るだろう。

 だから、「今」と「これまで」を書いておくべきだと思った。

 という事で、ほぼ文字だけのブログだが、こっそり始める事にしよう。

 

 

トップページ | 2015年2月 »