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2015年1月29日 (木)

Over The Future

Babymetal_logo

 BABYMETALのロゴマークには、三人それぞれを象徴する意匠が組み込まれていると知った時、非常に驚いた。
 小さなガイコツマークは、YUIMETALが小学生時から好きなマークらしい(何故)。さくら学院の校章を考えようというお題に対しても、このマークを書いていた(無理に決まっている)。
 モノクロで使われる事が多いので目立たないが、2つのハートマークはMOAMETALのパーソナル・マークであるらしい。
 ではSU-METALのは?
 古いロゴには、ライトニングのSマークが書かれていたらしいのだが(SU-METALのサインには今も書かれる)、今は広げた翼が描かれている。
 これはBABYMETALの母胎であったさくら学院の、更なる前身=可憐Girl'sの、後期のシンボルであった。アニメ『絶対可憐チルドレン』後期オープニング『MY WINGS』で最大にこの意匠が用いられている。

 可憐とBABYMETALは、単に中元すず香が属したユニットの過去現在という単純な割り切りが出来ない。

 YUIMETALこと水野由結は、小学生時に熱烈な可憐Girl'sのファンであった。
 メンバーの武藤彩未(現在はソロで活躍中)とは家族ぐるみの付き合いがあったのが端緒なのだろう。
 この彼女が自ら手書きで記したブログには、ただ好きなだけでは無く、深く想い入れる個人的な事情が極めて理性的、論理的に書かれている(更に厭になる程、字が美しい)。
 さくら学院ブログ 15歳 水野由結

 可憐Girl'sは、アニメ放送終了時の2009年3月に「任務完了ライヴ」を行い解散した。
 このライヴの時、場内なのか場外なのか状況が判らないのだが、完璧な振り付けでずっと踊っていたのが、幼い頃の水野由結だった。

 水野由結と菊地最愛が、さくら学院に“転入”する時のオーディション用と思われるダンス映像があるのだが、この時に彼女達が踊っているのが「Over The Future」だ。

 そして可憐Girl's解散から3年後、2012年12月、BABYMETAL単独ライヴ「I、D、Z ~LEGEND "D" SU-METAL聖誕祭」にて、その時だけ披露された楽曲があった。
 そのイントロが流れ始めた時、場内のファンは一斉に沸き上がった。
「Over The Future - Rising Force Version」を歌い始めたのはYUIMETALとMOAMETALだ。
 可憐Girl'sよりは少し大きいだけだが、踊る姿はオリジナルのイメージに近い。
 しかし彼女らの歌声はより自信に溢れており、振り付けも基本的にオリジナルを踏襲しているが、動き、曲げ、伸ばし全てが洗練されており、より大きなモーションになっていて見栄えが全く異なる。
 BABYMETALの持ち歌にはないストレートな歌を、二人は本当に気持ち良さそうに歌っている。
 このまま二人で歌いきるのか、と思っていたら、曲の半ばから突如SU-METALが舞台に上がり、ソロで歌い始めた。
 すぐに三人は可憐Girl'sのフォーメーションを再現していく。
 やはりSU-METALが歌い出すと、他の二人の歌声は分が悪くなってしまう。
 更にはダンスも、SU-METALの暴虐的なまでの激しさは舞台への視線を独占してしまう。

 こんなに激しい振り付けだったのか。
 可憐Girl'sのそれを再び見直すと、いや、確かに振り付けは同じだし、他の二人より一つ年少で(当時は)一番小柄なSUZUKA(可憐Girl'sでの表記)は、他の二人より大きく動いていた。

 最後のコーラスを終えるや否や、この歌は、チア・コールの様に「You We can fly! Over the future world!」と叫んで終わるのだが、このBABYMETAL版「Over The Future」の終わり方のあまりの見事さに、本当に鳥肌が立った。もう何回も飽くる事無くリピートしてしまった。

 このカッコ良さの1つは、SU-METALが歌い終わった後に一旦後ろに振り向くのだが、肩を一旦外に振ってから急激にターンをして舞台後方に数歩歩む。それがあまりにも決まっているところにある。
 てっきり、これはBABYMETALからの振りだろうと思ったのだが、やはり可憐Girl'sのオリジナルを見直すと、SUZUKAの歌終わりのポジションは下手側なのだが、確かに肩を入れる仕種をしていたのだった。

 この「Over The Future」を巡る“物語”は、多くのブログやネット掲示板で指摘されていて、私は後追いで知った。
 BABYMETALは、素顔を隠すギミックを導入している為に(SU-METALの普段の姿は『世を忍ぶ仮の姿』という設定になっている。これは聖飢魔IIに倣ったものだろう)、こうした裏側のエピソードは、ファン側が断片の情報から紡いでいるのだ。

 この動画は、3つの「Over The Future」を一画面に合成して見せてくれる。
 更に、作成者のコメントは深い考察をしていて、とても感銘を受けた。

Over The Future : 思うところ・・

 最初にこの曲を聴いたときの印象は、素晴らしいとまで思えなかった。やたらに転調する楽曲は好みでないのと、サウンドも90年代ぽいというか、Stock, Atkin, Watermanぽいと感じたからだ。
 しかし歌声には不思議と懐かしさをも感じた。考えてみると、いにしえのテレビ漫画主題歌(昔のアニソン)の中には、少年少女合唱団が歌うものがよくあったからだ。

 BABYMETALの "Rising Force Version" を聴いて(見て)以来、この曲は全面的に素晴らしいと認めざるを得なくなっている。
 身も蓋も無いフレーズ「ダイターン」などを織り込みながらも、困難に立ち向かっていく者を鼓舞する歌詞と、それをストレートに表現する曲調(Cメロの二拍三連のところは、力を込める振り付けと共に強い印象を残す)が、幼き水野由結にどれだけの勇気を与えたのかを思うと、こうした楽曲というものはいつの時代にあっても、常に誰かが送り出していくべきものなのだと思った。


 

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コメント

はじめまして。

Over The Future (Rising Force Ver.) 。
これ、再生数が56万回のあたりで一度著作権者からの申し入れということで再生停止になったんですよね。

でも数日後、再生回数そのままでまた見れるようになったんです。

その間、著作権者側でどのような検討がなされたのかはリスナーサイドは全く分かりませんが、個人的にはBABYMETALメンバー各々にとって象徴的な歌であり、でも、通常のベビメタライブでは当面演ることは出来ない理由があり、、、ということで黙認するのでこれで我慢してくださいねということなのかなと受け取っています。

そのうちオフィシャルなベビメタトリビュート作品なんかが出来て、この歌に関しても掘り下げた内容になってたら嬉しいですね^^

We can try over the future world!

名無しな方、ご指摘ありがとうございます。
チア・コールなので Youかと思い込んでいたけど、確かにWeですね。

BOB3-METAさん、コメントありがとうございます。
仰る事をYouTubeのコメント欄でも拝見しました。YUIMETAL+MOAMETALのヴォーカルは、プリ・レコーディングな様ですが、それでもこれを舞台で披露出来た事は、彼女ら、特にYUIMETALには大きな意味があるでしょう。
私もこの曲を、またセットリストに入れてくれることを強く願っています。

某掲示板にリンク貼られてたのでこのブログを今一から読んでます。

BABYMETALのOver The Futureで一番素晴らしいのはYUIMETALの放つ輝きだと僕は思うんですよね。
あの大好きなOTFをやれる喜びと誇りが動きと表情からほとばしっていて見ていてとても引き込まれるし、凄く美しい。
ブログで背景を知っている故のこちらの思い込みかなと思わなくもないのですが、普通なら感傷に流れてしまってもおかしくないのに、それをパフォーマンスとして見事に昇華させている彼女のプロ意識と才能にただ驚くばかりです。
指摘されて初めて気付いたのですが、SU-METALが最後に肩をぐっと入れるの、確かに凄くカッコいいですね(笑)
今その場面を確かめようと動画を見ていて気付いたのですが、だん

途中で送信してしまいました。
ダンスソロから3人が輪になるところ、ターンするYUIMETALが確かに肩を入れて回っています。
きっと偶然じゃあないんでしょうね。
神は細部に宿ると言いますが、自分では気づかなかった新たな魅力を教えてもらいとても嬉しいです。
有難うございました。

はじめまして。
動画をとりあげて頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

振付けの御話しがあったので、私も振付けについて。

BABYMETAL の Rising Force Ver. では、可憐Girl's の振付けに、
修正や変更を施していますね。
3人のソロパートのダンスを追加したり等。

その中で、一番スッキリした修正?箇所をひとつ。
冒頭の『だから負けない 明日へ さぁ行こう!』を歌い終わるところです。

可憐Girl's では、顔を下げていく動作のところですね。
BABYMETAL の Rising Force Ver.では、この歌詞を歌い終える直前に、
クイッ!っと、顔を上げます。

小さな修正?ですが、
歌詞に沿った修正?がされた!と思いました。
(あくまで、個人的な感想です。)

可憐Girl's の振付けで、唯一 モヤモヤしていた箇所だったので
この修正?が、個人的にとても気に入っています。w

過去に戻って、可憐Girl's でもこの振付けにしてほしいです。MIKIKO先生。w

無記名さん、コメントありがとうございます。
武道館前のインタヴュウで、YUIMETALがあのプログラムをBABYMETALで出来た事を話している表情が、まあ本当に嬉しかったんだろうなぁという感じでしたよね。BABYMETALは全然「やらされてるもの」じゃないんだ、彼女達自身が引き寄せているんだと思った根拠の一つです。

I-ZOE-METALさん
動画の作成者の方にコメント戴けて恐縮するばかりです。すみません勝手に紹介するだけしてしまい。
そして、教えて戴いたところ、本当にそうですねぇ……。仰る通り、圧倒的に新版振り付けの方が歌詞にも合っています。
オケも作り直したくらいなのだから、また聴きたいのは当然として、次にどういう表情で歌うのかも見てみたいです。
また、一度は可憐Girl'sのリユニオンも見たいです。

今日(2/9)このブログの存在を始めて知り、楽しく読ませていただきました。
プロの書き手であり、音楽業界にも詳しく、なおかつ新規のファンという人が書くものはとても新鮮味と説得力がありますね。
YUIMETALに絡む「Over The Future」関係の事情はファンの間では涙腺崩壊ポイントとして名高いものですが、上手な文章で表現されるとまたひとしおですね。
Legennd Dの「Over The Future」のSu-METALのダンスについては近い感想を持っておりました。彼女の歌声がピックアップされることが多い中で、ダンスにおいてもYUI MOAを凌駕するポテンシャルを持っていることが、このユニットのレイアウトの骨格を作っているのだと思います。「CMIYC」の後半でSuが一人で前に出て、例の走る振り付けを踊るパートがありますが、あれだけシンプルなのに何故ダイナミックさが出ているのかと思っています。
長文コメント失礼しました。

50歳METALさん、同世代のコメント、ありがとうございます。
CMIYCは……、ダイナミックな動きはダンスの域ではないし、作る表情は演劇的だし、演奏は素直にノレるロックだし、いつも動画見ては小刻みなヘドバンして口をポカーンと開けてる気がします。
仰る通りあの曲は特にSU-METALのモーションが牽引してますよね。

こんばんは、初めて、投稿します。66歳のBABYMETALファンです。

『アイドルマスター SICの手帖』さんのブログで、2009年3月に「任務完了ライヴ」の
当日の出来事について、語られています。
http://blog.livedoor.jp/yakushimaruhiroko/archives/52076740.html

又、『ちゃっぷの記憶』さんのブログでは、2007年には、既にYUIさんはアミューズの
キッズ部門で活動しているので、AYAMIさんとは、ママ友(保護者同士)だったかと。
http://ameblo.jp/amechap/entry-11690350555.html

↑66歳のBABYMETALファンです。さんへ

あざっす!泣きそうになったTT てか泣いた..。。。

このブログの文章は、折にふれて何度も何度も読み返させて頂いています。
そのたびごとにいくつか必ず発見や感動の再確認やを感じるので、
本当に貴重な存在です。

さてOTF。

何度もこの曲のことは頭をよぎるのです。やはりこの曲には、何らかの
運命じみたものを感じずにはいられません。
3人全員をひっそりと裏でつなぐ名曲。

実質CDデビュー曲として歌い踊ったすぅ。
その可憐への思いで、芸能界で生き抜くことを決意した幼いゆい。
その隣で、一緒にOTFを歌い踊ってさくらへのオーディションに合格したもあ。

そして彩未とすぅと一緒にさくら学院のメンバーとなったゆいもあ、
そして重音部へ。

ひとつ、結論の出ない疑問があります。
あの曲は、ベビメタで今後再演すべきなのかどうなのか。

「あの一度だけがあり得ない奇跡。重要すぎるから軽々しく何度も再演はしなくていい」

「三人を運命でつないだ奇跡の名曲、今後も再演してその価値をより広めるべき」

今もって、このどちらの意見に与するべきか、何度考えても結論が出ません。

 ねこMETALさんへ。私も折に触れてこのブログを読み返します(小中先生には感謝しかありません)。そしてOTFもまた折に触れて聴き返します。時代を超えた応援歌で、まさに運命的な曲だと思います。
 さくら学院や武藤彩未さん、BABYMETALの3人そしてスピカの夜からこの曲に触れた方も多いと思います。可憐Girl'sの解散ライブにミニパティの一人として立ち会った飯田來麗さん(現在スピカの夜にて島ゆいかさんと共演中)。振付を担当したMIKIKO先生。そしてKOBAMETAL氏も関わりが有るとも言われています。
 この曲が発表された時にはこんな展開が待っているとは誰も思わなかったでしょう。BABYMETALが披露したのも1度きり。恐らくは著作権等をAmuseが押さえて無いのではと推測いたします。
 絶対可憐チルドレンは今だ連載中。多くのメディアミックスも行われているので再演したくとも出来ないのが実情だと想像します。
 
 しかしながら多くの人々の応援歌であったこの曲がファンの間でだけで記憶されるのは勿体無いと思いますし。現在の彼女たちが歌うOTFを観たい、聴きたいと思うのは自然な感情であると思います。
 何より今の子供たちにこそ聴いて、元気を出してもらいたいと、私は考えます。
 
 私個人の願いとしては、出来ることならオリジナルメンバーに水野由結さんと菊地最愛さんを加えた5人によるOTFを”みんなのうた”にて放送される事を願ってやみません。  
 ブログ主様を差し置いてこの様な書き込み大変失礼致しました。

残念ながら
当方の動画の素材として使用させて頂いていたYouTube上の動画
BABYMETAL - Over The Future (Rising Force Ver.)
https://www.youtube.com/watch?v=lozHHpXdkFg
に規制が入ったようです。

よって当方の動画
Over The Future : 思うところ・・
https://www.youtube.com/watch?v=Evsbf03ny2I
を、 2015年8月14日をもって、公開を取り消させて頂きます。

> I-ZOE-METALさん
大変残念ですが、仕方ありませんね。
御作の動画を見られた事は幸運でした。

くなか様、はじめまして。
いつも拝見させて頂いておりました。
OTFについてはもう一つ触れておきたい事がありました。
歌詞が繰り返されています。これは水野由結さんの気持ちを忖度した小林啓氏があえてそうしたと私は思っています。
≫I-ZOE-METAL様
この動画は何度と無く見させて頂いていたのでとても残念です。
いつの日かOTFがBABYMETALの公式の持ち歌になる事を望みます。

「己の限界を試される時が来た。回り始めた時計の針はもう止めることできない。すなわち、MCもなければアンコールもない。武道会に召喚されたその瞬間から、すでにバトルは始まっているのである。そう、破滅へ向かって…」

アニメ放映期間で任務完了の可憐girl's
10歳から15歳までの成長期限定ユニットさくら学院

BABYMETALも道なき道を突き進み、結果、同じ様に破滅への道にたどり着く運命なのか?
それとも天才中元すず香にとって全ては通過点でしかないのか?

11月28日 BABYMETAL 5周年。
Over The Future : 思うところ・・ 
いろいろ理由?を付け、ひっそりと再公開しました。
ご報告まで。w

I-ZOE-METAL様
YouTube拝見しました!あざっす!

『涙は夢のありかを 探す輝き それぞれ 違う光を放つ』

いつもここでグッとくる…
ウイングマークもいいね!

>>to-metal さん。
ありがとうございます。
Over The Future の歌詞は、どこをとってもホントに良いですよね。
実はウイングマークを施す前のバージョン(初期バージョン)もあります。
こちらでその動画のアドレスを記しています。
彩未さんや、ゆいかさんのアップカットも含んでいるバージョンです。
http://tripleaxel.cocolog-nifty.com/babymetal/2015/08/over-the-future.html#comment-136308057

絶対可憐チルドレンのアニメでは、孫悟空が頭にはめられた禁箍児のような首輪を着けられた絶対的な超能力を持つ3少女が奴隷のように戦わされている状態から、
3人を人格を認めるボスが赴任し、3人が自分の意思で自分の考える正義のために戦うように成長するストーリーで始まります。
非凡な才能を持ち利発なbabymetalの3人は当然これを見て感情移入し思うところもあったでしょう。
”3人の子供がやらされているだけ”という感想を見るたびに、その意見の子供っぽさ浅はかさに笑いそうになります。

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