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2015年2月20日 (金)

Evanescence

私達はオンリーワンを目指している」とSU-METALは言う。
 アイドル、アーティストには頻繁に問われる「何(誰)を目指しているのか」という質問に対する、いつもの答えだ。
 でもBABYMETALは、誕生した時点で既にしてワン・アンド・オンリーだった。
 どこまで自分達が進化出来るか、という意味だと受け取るべきなのだろう。

 SU-METALはヴォーカリストとしてまだまだ完成形すらも見えない。さくら学院自体がそうであった様に、BABYMETALは歌唱スタイルについて鋳型にはめようとする事は一切しなかった。
 メタル、ロックの歌唱法が強いられる事は無かったし、アイドル歌謡曲らしい歌い方についても然りだった(『ド・キ・ド・キ☆モーニング』は別として)。

 これは素晴らしい導き方だったと思うけれど、中元すず香にとってロールモデル、参照モデルが全く無いというのも、それはそれで茨の道だろう。しかし彼女とBABYMETALはそういう選択をした。

 メタルを女性がストレートな声で歌うという前例がない訳では無い。近年であればWithin Temptationというバンドが長寿であるが、一瞬だけ、もっと知られた存在があった。


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 Evanescenceが登場した時、私がまだCDショップに時折通っていた頃で、店頭で相当プッシュされていたのがこのバンドだった。
 あまりにも流行った反動からなのか、今はもう誰も言及しないし誰も覚えてもいないかの様に感じられる。

 ゴシック的なムードは持ちつつ、サウンドはデジタル・ミクスチャーで、様々な要素の巧い抽出をした作りだった。それにエイミー・リーのクリーンな声で哀切を込めた歌が乗る。
 ジャケットの写真は華奢な女性をイメージさせたが、PVやライヴ映像を見ると、彼女は意外と骨太な感じで、確かにそういう声ではあった。



 もの凄く売れたのだが、ファースト・ツァーの真っ最中に、楽曲を手掛けていたギタリスト、ベン・ムーディが脱退してしまう。
 すぐに新たなギタリストを補充したのだが、1枚目の様な才能を発揮する事は無かった。
 数年前に3枚目のアルバムを出して、そこそこ売れてはいたが、存在感はもう失われていた。

 Evanescenceは次々とメンバーが辞め、残りも解雇していき全員入れ替わった。
 最初に抜けたベン・ムーディは元メンバー達を集め、「アメリカン・アイドル」で優勝した女性をヴォーカルに迎えて We Are The Fallenというバンドを結成する。「Fallen」はEvanescenceのファースト・アルバム・タイトルで、まるで自分達こそが本物であるという誇示にも見える。サウンドもまさに同じ路線だったが、あまり話題にもならなかった。
 一応は「アイドルが歌うメタル」であったが、件のヴォーカリストはエイミーよりも更に骨太型の姉御的な風貌であった。


 Evanescenceには個人的な思い出もある。
 古賀新一原作のマンガ「エコエコアザラク」は幾度も映画やテレビシリーズになったが、私は最初のテレビシリーズ、佐伯日菜子版(1997)の脚本を書いていた。この佐伯版「黒井ミサ」は、「エコエコ」映像化史上最も人気があった。

 数年後、新たなキャストで「エコエコ」をまたもドラマにする企画が立てられ、「エコエコアザラク -眼-」(2004)の脚本も手掛けたが、同じ様なものを再生産したくなかった私は、黒井ミサをもっと若く、中学生にまで年齢を下げようと主張した。少年チャンピオンに連載されていた初期の「エコエコ」では、ミサは中学生だったのだ。また、原作者と会ったとき、ミサのモデルは子役時代の美空ひばりだったという話を聞いていた事も、この発想の元になっていた。「この子ならいける」という若い女優も製作プロデューサーと見つけていた。

 そういう想定で第一話の脚本を書いたのだが、スポンサーの意向でもっと大人っぽい、上野なつひがミサ役に決まる。
 この新シリーズで如何に上野なつひ版黒井ミサを新鮮にアピール出来るかと悩んだ。

 普通脚本家が口出しをする事柄ではないのだが、宣伝写真のスチル撮影の時、メイク担当の人に私はEvanescenceの「Fallen」(2003)のCDを渡して、ジャケット写真のゴス・メイクも試してみて欲しいと依頼した。
 ゴス・ファッションは、何年か周期で流行するが、日本の町中(原宿界隈以外)で見掛ける事は殆どない。
 黒井ミサが毎回その顔で出てくる設定にするつもりは全く無かったが、ここぞというところでそうしたルックの変更があると、新しいミサが作れるのではないかと思ったのだ。

 本編でも一話分、そういうメイクで登場する回があるが、それはその回の特例という扱いになった。上野なつひは、無理にエキセントリックな芝居をせず、視聴者が共感出来る様な新しいミサ像を自分で創り出してくれた。


 BABYMETALは、聖飢魔IIの様なメイクはしなかったが、××METALという別名でステージに立ち、その時には神が憑依しているのでMCはしない、という事になっている。
 あくまでそれらは「設定」だという事が、BABYMETALと観客との間では合意されている。
 あの髪型、あの衣装だから、普段の自分では出来そうもない事もやってのけられる。そういう効果もあの「設定」にはあった。
 ゴスまで行かなくとも、もっとメイクをキツめにする選択肢もあった筈だが、そこは「やはりアイドル」という抑制が働いた事を、私を含め多くのファンは感謝する他は無い。




 この季節はほぼずっと風邪をひいているのだが、今日は熱も少し出て動けずだった。うーむ、仕事が……。
 かつて「エコエコ」などで組んだ清水厚監督と、久々に組めそうで楽しみ。

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コメント

SU-METALは表情が見える声ですよね。それと、pをfで歌うというか、fのまま落としていけるといった印象です。

エコエコ…
独特な世界観、大好きでした。

エコエコアザラク、
上野なつひ版は見ていませんが、
佐伯日菜子版とその前の吉野公佳版は見ています。
(美少女好きなんで)

BABYMETALの、BABYMETALとしての姿も好きですが、
NHKやベビメ大陸、台湾の番組で見せたような姿も好きです。
(さくら学院では、その姿が存分に発揮されますが)
22日は、公開授業初参観です。

以前、数年ぶりに東京に住む後輩を訪ねたとき、「久しぶりに東京来たけど、
あまりパッとしないねぇ」などと思っていたら、東急渋谷駅で降車客の先陣を切って
改札に向かう、脛毛ばっちりなゴスロリドレスのおっさんを見て
「あぁ~、やっぱ東京は狂ってる!!」ってテンション上がったわ~。
ゴスを守り続けるのは女装のおっさんか黒色すみれか、ってぐらいですわね。

Evanescence、悪くなかったけど、私には刺さりませんでした。ダークな雰囲気は良かったのですが、何かがピンと来ませんでした。

アメリカンアイドルはずっと観ていましたが、日本の「アイドル」とは観点が違うため、アイドルとは言っても日本人から見るとルックス、歌唱力はもとより、企画力も備えた立派な「実力派アーティスト」でないと勝ち残れません。でも、その結果「何かだけはダントツにいいけど、実力派としての総合力はやや不足するかも」という挑戦者は、視聴者の投票によりふるいにかけられます。

今回の話も納得できました。ゴスをやるとかなりのゴスになってしまいがちですが、「ツボにはまる程度の適度なゴス」というのも、ある意味立派な個性なんですね。

そういえば、ダークな感じとしてはフィンランドの女性グループINDICAがPrecious Darkなどで醸し出している雰囲気が、これもEvanescenceほど行き過ぎてなくてややゴスなアイドル的です。

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