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2015年2月 8日 (日)

METAL EVOLUTION

 メタルというジャンルの音楽についてのドキュメンタリ映画は案外と多い。
 一部で話題になった『アンヴィル 夢を諦めきれない男たち』は紛れもなく傑作であり、私も涙無くしては見終えられなかった。監督はその後『ヒッチコック』というフィーチャー・フィルムも撮る程に出世した。
 Metalicaのスランプ期を追った映画も興味深かったが、私が印象深く記憶しているのは、Slipknotの3枚目かについていた特典DVDで、何の説明もない彼らのツアーを記録したドキュメンタリだったが、馬鹿騒ぎの様なツァーをしながら精神的に疲弊していく様が生々しく記録されていた。二度と見返すまいと思った。

 Sam Dunn サム(サミュエル)・ダンという人類学者がいる。RUSHのゲディ・リーをちょっと貧相にした感じのカナダ人で、メタルファンである。彼が2005年に作ったドキュメンタリ映画が「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」だ。
 この映画で、彼は多くのメタル・ミュージシャンにインタヴュウをしているのだが、なぜメタル・ミュージシャンの言質を得ようとしたかと言えば、一般的にメタルは社会には害悪だと見なされてきたものであり、バンドにもよるが悪魔崇拝といったギミックでの発言をしてきたアーティストも多く、「本当のところ」を聞きだそうとしている。
 この映画の立脚点は、「メタルはマイノリティのもの」にあるのだ。
 商業音楽の世界では、メタルは過去も現在も、マイノリティに属してきた。
 サム・ダンは自分自身がインタヴュワーとして出演しており、これは普通の若者とは異なる趣味を持って育った自分自身を解き明かす旅でもあった。

 2009年、続編である「グローバル・メタル」を彼は製作する。今度は、世界中で如何にメタルが受容されているかについてのルポルタージュで、特にアジアに目が向けられている。
 中国の様な国でもメタルを愛好し、演奏する若者がいる。音楽表現としてのメタルはまさにグローバルである事を立証して見せた。
 見返していないで書いているので、自分も確証がないが、BABYMETALが何故世界的に(メタル・シーンに於いて)受け容れる人が多かったのかについて、もしかしたらこの映画が一つの答えを持っているのかもしれないと思う。

 この2本の映画は日本でもアミューズ・ソフトから販売されているが、私はWOWOWの放送で観ていた。

 そして2年程前だったか、今度はメタルの進化を辿るという遠大なプロジェクト、「メタル・エヴォリューション」というテレビ・シリーズを製作した。45分番組×11本で、様々なサブジャンルのメタルがどういう系統で成り立っているかを調査したものだが、とても見応えがあった。
 何度か放送されているのだが、つい先日、何度目かの再放送があり、幾つかを見返した。

 これはサム・ダンの人柄なのだろうが、人類学者のフィールドワークという構えたインタヴュウではなく、むしろマニアが憧れのアーティストに会って話を聞くスタンスであるにも関わらず、メタルのプロパー達は専門誌向きなスタイルを作らず、自然体で、本音に近い事を話しているのだ。
 Meshuggah(『悪夢の輪舞曲』のロールモデルと思われる)のドラマー、トーマス・ハーケは実に知性的で、あんな凄まじいドラムを刻むミュージシャンのイメージとは全く異なっていた。その彼が「あいつらは本当に危険だ」という、観客にギターのヘッドで攻撃しようとさえするバンドのギタリストも、自分達が狂った様なステージをする事について淡々と言葉にしていた。

 自然体を引き出せなかったのは、イングヴェイ御大と、Slipknotのスポークスマン、クラウンだけだ。
 BABYMETALはファンを「モッシュッシュ・メイト」と呼ぶが、ファンに固有の呼称をつけるのは昨今の流行なのだろう。Slipkontはファンを「Maggots」(蛆)と呼ぶ。クラウンは、「蛆はやがて蠅になって自由に飛ぶ事が出来る。俺達のライヴは救済なのだ」と、あまり説得力の無い説明をする。実際には、自分達が(社会に於いて)腐乱死体と同じであり、その俺達に集まるお前らというニュアンスの方が先にあった筈だ。
 サム・ダンの「何故君たちのライヴはそう攻撃的なのだ」という問いに、クラウンは「WAR」と答える。
 そういう言い方しか出来ないのだろう。

 Slayerが、一枚だけNuMetal風味なアルバムを出していたのは知らなかった。様々なバンドが華々しい成功を収める一方で、Limp Bizketの様にフェスで暴動を煽ってしまい、KORNのジョナサン・デイヴィスにすら唾棄されている有様はなかなか辛いものがある。

 色々と興味深いディテイルが判るが、なかなか「で、どういう事なの」という結論には行き着かない。何しろ最終話が「プログレ・メタル」がテーマであり、それは確かにDream TheaterやMastodon, Tool, Opeth(全部聴いてるな)などがいるけれど、メタルのサブジャンルとしては一層マイナーなグループなのだ。

 BABYMETALが海外で凄まじい支持を得たというのは事実であるけれど、現代音楽産業のメイン・ストリームでの出来事ではないという事はあまり報道されていないと感じる。
「ギミチョコ!!」のMV再生回数が凄いといっても、Lady Gaga, Taylor Swiftといった時代を代表する存在に比べたら、マイナーに過ぎないのだ。
 むしろ、歌詞を英語にする事すらもせず、日本のドメスティックな価値観で先鋭化したBABYMETALが、「世界でもこうなればいい」という想定を遥かに越える成果を得られたのも、マイナーなジャンルであるメタルであったからだとも言えよう。

 サム・ダンは「NuMetal」のエピソード冒頭で、「~とかのバンドがああいう事したり」とひとしきり説明した後、「俺には我慢がならない」とぶちまけた。NuMetalに存在価値などあるのかという切り口で始まったので期待したが、それからのドキュメンタリ部は割と普通に紹介するばかりで、これは残念だった。

 それまでと違うサウンド、アプローチをするバンドが現れると、新たな括りのサブジャンルが生まれる。それはメタルに限らず、ハードコア、はてはポストロックに至るまでもそうなのだが、メタルに関しては、この10年程の間に特筆すべき動きがなかった。サム・ダンが総括出来たのも、そういう状況がある。
 大きなフェスティバルはベテランが、かつてのヒット曲を演奏するのがクライマックスなのだ。
 そうした状況を、メタルヘッズであるKOBA-METALは感じていたのだと、インタヴュウでも述べている。
 BABYMETALが触媒になって、メタルに新たなサブジャンルが生まれるかもしれないのだ。
「METAL EVOLUTION」をチラチラと再見しながら、ぼんやりとそう思っていた。
 サム・ダンは果たしてBABYMETALを受け容れるのだろうか(笑)。


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コメント

はじめまして。

BABYMETALさんの活動を

 「ネタから出たまこと」

・・・と評されるKONAKA-METALさんの感覚中枢が素晴らしいです。

副産物が主産物の魅力に並んだ事例に通ずる感覚でしょうか。

shirakataさん、コメントありがとうございます。
仰る通り、ネタとまこと、虚構と真実と、その境界が危うくなる存在として、私は夢中になっている様です。

荀子「青は藍より出でて、藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し」
学問のことわざの様ですが、(自然)環境とロジックとの関わりの東洋的に解釈として音楽にも使えるのかも

初めましてBABYMETALのメイトさんフォロワーさんから読ませてもらいました。

素晴らしい記事でした。

僕も「サム・ダン」の映画を含む一連のシリーズは全部見て永久保存して、たまに見返したりしてます。

ここ日本においては、まだまだマイノリティーなジャンルにある
「ヘヴィーメタル(HM/HR)」についてBABYMETALは初めて「風穴を開けてくれる存在」として期待してます。

また、BABYMETALを通じて何か書いてくださいね。

はじめまして。別のブログでこちらの存在を知り、一気に読ませていただきました。自分もほぼ同じような経緯でファンになりましたので、うんうんと共感しならが読ませていただきました。ただ、ファンになった者の欲目かもしれませんが、BABYMETALにはメタルのジャンルにとどまらず、戦略次第ではレディ・ガガなどに伍してメジャー・フィールドでも活躍できる可能性があると思っているのですが・・・。(だからこそレディ・ガガも注目したと思うのですが)。まあ先のことは"only Fox God knows"なので(笑)、彼女たちの冒険をハラハラ・ドキドキしながらも見守っていきたいと思います。

皆さん、コメントありがとうございます。

BABYMETALとメタルとの関係性というのは、色々面白い側面が見えてきます。また改めて考えてみようと思っています。

みぃつけたぁ(笑)
ワタシはPerfume→MIKIKO繋がりで存在を知ったのですが、最初に聴いたのが「イイネ!」だったので、いまひとつピンとこなくて放置していました。
が、小中さん同様にNHK特番にしてやられ、ネットを漁って今日に至ると。
あのとき食いついていればと後悔しきり。
ちなみにワタシの武道館BDは、現在T田氏のところに貸出中です。
私信で失礼しました。

はじめまして。

> クラウンは、「蛆はやがて蠅になって自由に飛ぶ事が出来る。
> 俺達のライヴは救済なのだ」と

マリリンマンソンが1996年に似たようなことを言ってますね。そこからパクったんじゃないのかな、とも思いました。

HAGARI-METALさん、「まぁだだよ」
今度Perfumeの事を色々教えてね。

無記名さん、情報ありがとうございます。
確かに彼なら言いそうだし、彼の言葉なら「ほほぅ」と聞けますね(笑)。

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