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2015年2月25日 (水)

『ド・キ・ド・キ☆モーニング』考 2

Dok2i_2

 BABYMETALの振り付けは、日本よりも世界の方でより多くカヴァーされているが、難度が最も低いであろう「ド・キ・ド・キ☆モーニング」ですら、「これは完璧」に見える動画は殆どない。
 重ねて言えば、「ギミチョコ!!」に至ってはほぼ皆無に近い(アフリカ系女性が一人で演じたものが動きは完璧だった)。

 Perfumeの「踊ってみた」動画は、素晴らしく良く出来たものを幾つか見たが(正しい振りであったかは判らない)、なぜBABYMETALはそうではないのか。
 ダンスのアウトサイダーが思いつける理由は、「簡単そうに見えて難しい」くらいしかない。

「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のMVは発表時、日本ではあまり、というより殆ど話題にならなかった様だ。一方で、海外の日本ポップ文化にアンテナを張っていた若者が面白がって、メタルヘッズの掲示板などにリンクを張った。大方はネガティヴな反応を見せる中で、一部にはBABYMETALの意図を正しく読み取って関心を抱く人もいた事には驚く。ただ、それも膨大な産業的ポップ・カルチャーの中でほんの少数の領域での議論ではあった。

 メタル+アイドルの原形曲である本作では、振り付けたMIKIKO-METALもさほど振り切ってはいない様に見える。メタルらしさとしては一応斜めヘドバンがあるのだが、あまり激しいものにはしていない(それでも最初は首が痛くなったそうだ)。
 YUIMETAL+MOAMETALの振り付けに着目すると、Aメロの合の手を入れる部分は、SU-METALに顔をぐっと寄せる場面があり、これはキャメラマン、スイッチャーに「ここはバスト(サイズ)で3人撮ってね」という言外の指示だ。
 この部分の振り付けは、後に大きなステージで披露する場合にはかなり離れた位置で行う様にアレンジされるが、少なくとも振り付け時、MIKIKO-METALの想定としてはテレビ・フレーム内で最大限に振りを魅力的に見せる事を、無意識的に意図されていたのではないかと思う。
 既にさくら学院のプログラム振り付け師、舞台演出家であったMIKIKO-METALは三人にとって「ミズノ先生」であった。タイプの違う三人は、振り付け甲斐があっただろう。

 Bメロ「知らないフリはキライ、キライ」、二人はそれまでと表情を一変させ、人形の様になってくるくると周り、Locking、というよりも古式ゆかしいロボットダンス(昔っぽい目覚まし時計の暗喩か?)を披露した直後、「よねっ?」から笑顔に戻り、SU-METALとシンクロする。高い演劇性を要求する振り付けだと言える。
 見逃せないのは、MIKIKO振り付けの特徴でもあるフォーメーション移動の際に、YUIMETAL+MOAMETALの足踏みはリズムの倍速で動いているところだ。音源のブラストビート(バスドラ連打)と同じ部位ではないのだが、しかし音源の特徴にもなっているブラストビートを身体的に表現するものとして、この振りが生み出されたのではないかと思う。
 最もトリッキーな、三人が回転する内に最初とは異なる方向に揃うという部分は、特に他よりも多く回る下手側が、YUIMETAL、MOAMETAL、どちらが回っても完璧な事に感銘を受ける。

 そして、このBメロをきちんと再現した「踊ってみた」が無いのだ。
 特に90度に曲げた左右の腕を上下させるところ。簡単な様でいて、二人の様にリニアな動きで停止位置で決めるといった動作を二人揃えるのは難しい事らしい。

 MIKIKO-METALの振り付けを見ていつも頭に浮かべてしまうのは、動きの数値化だ。
 決してMIKIKO-METALはそういう振り付けを指示してはいない筈だが、私には身体を動かすポイントが数値化している様に見える。こういう書き方をすると、まるで非難している様に読めるかもしれないが、そうではない。有機的な動きを極めて効率的に生み出す振り付けだと(勝手に私が)感じているという事だ。例えば――、
 ・・ ・  ・   ・    ・
 このドットは水平方向に移動するポイントを最も単純化したものだ。これは単純な二次元移動だが、当然肉体であればXYZの三軸が、各関節の動きと同時に敢行されて複雑な動きとなる。MIKIKO振り付けによる動作は、上の様なタイム感覚がある。
 FlashやAfterEffects, 3Dソフトをいじった事のある人は判ると思うが、動きをプログラムする場合、その軌跡に時間毎のポイントを指定する。これが
 ・  ・  ・  ・  ・
 この様に単純な等間隔であると動きが機械的だし、その動きそのものに「色気」が無いのだ。
 MIKIKOの振り付けは、Perfumeもそうであったし、その直系がBABYMETALであり、このエモーショナルな動きは言わばMIKIKO Choreographyの基本の様に感じる。
 しかしBABYMETALでは、これだけでなく全く異なる要件の難度がひたすら上がっていくのだが、ここではデビュウ曲に話を絞るべきだろう。

 この曲は80年代アイドル歌謡曲のクリシェで出来ていると、前に述べた。
 振り付けもまた、イメージの多くをそこから得ている。MIKIKO-METALがこれほど「ベタ」な振り付けをした事が以前にあったかどうか判らないが、ここまでのものは無い筈だ。この曲が「ネタ」で出来ている事を充分に理解し、楽しんで振り付けている様に見える。
 コーラス「リンリンリン」、片腕を上げて2ポーズを交互に見せる部分は、幾らでも前例を見出せるアイドル振り付けの基本だろう。しかし強いて言えばだが、「サタデーナイト・フィーバー」のそれが最も有名である。ドヤ、と決める時にこれ程効果的なポージングはない。
 MIKIKO振り付けの特徴の一つ、歌詞を入念に拾うというのも「お、ね、がい」に見て取れる。
「ちょー待って! ちょー待って!」も同じくだが、この横に身体を向け、前方に手を振りながらジャンプをするという振りは、私の世代以上ならどう見てもザ・スパイダースの、特に井上順(当時は順之)が盛んにテレビで披露していたものを彷彿する。
 MIKIKOはまだ全然若い女性なのだから、そんな“いにしえの芸”など知らない筈なので、これは私の見込み違いの可能性があるが、しかしピンクレディー・リスペクトな振りも後にはつけている(まあピンクレディーは世代を超えたアイコンではあろうが)。
 このプログラム振り付けの山場は言うまでも無くブレイク・ダウン。普通は静止ポーズになるというくらいのところを、三人は本当にマンガの様に首を左右に揺ってから(ほぼ痙攣である)、バタリと床に突っ伏す。この突っ伏す直前の動きに、私は痺れた(もっと短い拍数のものが「4の歌」にもある)。
 SU-METALはこの部分について、最初に人前で披露する時「笑われるんじゃないか」と心配したらしい。しかし本当に笑われる事で、「あ、笑われるのって楽しいんだ」と開き直れた様だ。
 ブレイク・ダウンから再びコーラスに戻る時、短い拍数しかないのに三人は寝起きの伸び、欠伸をして、更に映像の逆転早回しの様な回転までする。もう歌の振りの領域ではなく、演技そのものである。
 終盤にはポジションが縦になったり、まるで先行して移動するキャメラと追いかけっこをしている様なアクションもあり、徹底してフロントからの「映像」として振り付けられている。

 エンディングの決めポーズは、腰を折って敬礼っぽく掌を顔上にかざす。
 少なくとも90年代以降、こんなポーズはイマドキのアイドルもしないというダサい典型のポーズだ。2000年代以降、地下やネットで、コスプレイヤー、アイドルの拡大・拡散化に伴い、このポーズが再び「アリ」になっていたのかもしれない。しかし「ユルい」。ユル過ぎる(いい意味で)。

 この敬礼のポーズが、後の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の中でも指折りの鳥肌が立つ振り、敬礼の布石となった――、という事はまあないのだろうけど。


「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の原形曲は、さくら学院が発足する以前に既に着手されている。BABYMETALが中元すず香の為のプロジェクトとして、さくら学院と同時、乃至は先んじて計画されたのかどうか、私には判らない。
 この曲が発売に至るまでには随分とアレンジが変わった事は先に述べたけれど、もしメタルの要素が今よりも薄かったら、アイドル歌謡の典型を再生産したに過ぎない曲ではあったろう。

 この曲の歌入れ時のごく短いドキュメンタリが、さくら学院のDVDには重音部の活動記録として収められていて、中元すず香は何の気負いもなくレコーディングしていたが、明らかに水野由結と菊地最愛は初めてに近い経験で「ドキドキ」している様に見える。
 終わった感想を、「ちょっと難しかったね……」「ちょっとね……」と言い合っている。

 彼女達が感じた難しさは想像するに、メイン・ヴォーカルとユニゾンで歌うパートではなく、「Cuty Style」「超すごーい」といったかけ声――合の手ではなかったか。
 メロディがある訳ではなく、しかし音の高低もリズムもぴったり合わせる必要がある。

 彼女達はさくら学院にて、ほぼ常にペアとして存在感を発揮してきた。二人は単純な友人、パートナーという関係よりも戦友に近い絆を共有しているのだろう。
 後に、ある振り付けについて「二人がぴったりと合わせるのは大変ではないか」と問われると、二人とも「でも何となく合うんだよね」と共に答えていたのが印象的だった。勿論合わせようという意識はあろうが、鏡を前にレッスンを受けてきた時間は他の誰よりも長く、無理なく合わせる様になった事が、歌や合の手でもナチュラルに出来る様になってきていたのだ(決して最初から努力せずにそうなったのではない事が、次の曲で判るのだが)。
 しかも、二人は小柄である事くらいが身体的共通点で、表情も表現するものも、更に声質も異なるタイプだ。その二人がソウル・ツインズの様にぴったりと合わせる事でリッチな声になる。これが計算された采配で生まれたものとは、私には信じられないのだが。

 しかし、合の手というものにはそうそう手本になるものがない。ハロプロ系の楽曲にそういうものはあったかもしれないが、当時の彼女達ほど幼い声音、台詞があったとは思えない。

 いや、一つあったのだ。
 勿論、あの可憐Girl's「Over The Future」だ。
 あの歌には、メロではなく声を揃えたチア・コールがあったではないか。

 菊地最愛と水野由結は、さくら学院入校時のオーディション映像で、あの曲を踊っていた。あの映像がもしかしたら、最初に二人がペアを組んだ場面であったのかもしれない。

 

 この曲は、生歌ライヴ版でのコーラス・アレンジが音源と違い、
「リンリンリン」(YUIMETAL+MOAMETAL)
「おっはよーWake Up、お・ね・がいちょー待ってちょー待って」(SU-METAL)
「バ・タ・バ・タモーニング」(YUIMETAL+MOAMETAL)

 とパート分けして歌われていて、一層楽しい歌になった。
 また神バンドの演奏、特にProTools出しのエクステンドされた前奏から、ハイハットのカウントで畳み掛けるイントロにはいつも唸らされる。ライヴに於けバンド・サウンドのカッコ良さが凝縮されている。

 BABYMETAL楽曲の初期~中期に約束事として挿入されていったYUIMETAL+MOAMETALの合の手は、曲毎にヴァリエーションを変えつつ踏襲されていく。しかしステージで実際に歌う様になってからは、より音楽的なパートを担いつつある様だし、それを個人的には期待している。

 そして振り返ると、SU-METALが屈託無く笑顔で歌うのはこの曲だけだ。中元すず香の実像に最も近いのがこの曲なのかもしれない。もう5年もこの曲を歌い続けている事になるが、今後も是非歌い続けて欲しいと願う。

 2回に分けてグダグダと書いたが、一言でまとめるなら「可愛い曲です。」で、それ以外はオマケである。

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コメント

なるほど。MIKIKOMETALの振付は、演技・演劇の要素が入ってるんですね。歌詞を拾うだけでなく、演じさせている、と。まーた振付がめちゃくちゃ可愛いんですよねこの曲。女性人気ナンバーワンの楽曲であることも頷けます。
ちなみにMIKIKOMETALが言うには、最も取っつきやすいのがこのドキモニで、最も難しいのがメギツネだそうです。はじめと途中の、日本舞踊?めいたところがあるからですかね。

ある気功師がYUI&MOAの気が「阿吽」になっているとツベに有りました。
たしかYUIちゃんが「吽」、MOAちゃんが「阿」で、この二人の気がSUさんにパワーを与えているとの事。
なんか妙に納得しました。

『「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の中でも指折りの鳥肌が立つ振り、敬礼』

!!!!、激しく同意DEATH!!!!

お教えください

>神バンドの演奏、特にProTools出しのエクステンドされた前奏から

”ProTools”とは何でしょうか

毎回興味深く拝読しております。
僭越ながら、ひとつご指摘申し上げたいのはYoutubeの動画の貼り込みについてです。
貴兄はhight=315,width=560として掲載されておられますが、これだと(私の環境に限る事象かもしれませんが)ブログのフォーマットの関係上、動画下のツールバーの右端が切れて表示され、ビットレートの調整の歯車マークまでは入りますがその右手にあるはずの別窓での”Youtube”で見るアイコンが表示されません。
この縦横の数値はYoutubeで「埋め込みコードを取得」したさいに自動的に得られる数値をそのままお使い…いや、そうではなくて横幅としてちょうどおさまる数値に縦横とも計算しなおして入れておられる数値かとは存じますが、それでも前述のような状況となりますので、今少し小さ目になさった方がいいかもしれません。

…というようなこととは別に、BABYMETALの魅力について語りたい・語り合いたいところですが、今回はこの件のみにて失礼いたします。
//// Put your KITUNE up!

最近のライブ映像を観てからこのMVと比較すると、やはり当時小学生のふたりはまだ「身体が出来てない」のがわかりますね。
とくにMOAの手足の細さたるや、ダンスをするための筋肉がまるで付いていません。(ジャージ姿で練習している動画を見るとよくわかります)
なのでどうしても腕の振りや脚の上がり方が現在とは違って見えます。

であるのにもかかわらず、このMVでMOAが魅力的なのは、その表情と表現力の豊かさに負うところが大きいと思われます。
「りんりんりん」でSUとツーショットになるところの表情など、年長のSUを凌駕する「アイドル顔」をしているし、この頃からすでに「アイドルモンスター」であったのかと。 「なんて恐ろしい子!」((C)美内すずえ)

↑名前入れ忘れました。

なるほど
うん、そうだね
と相づちをうちながら楽しく読ませていただいてます。

ユイモアの合いの手は、言葉のパーカッション。
意味よりもどう響くかでコトバを選んだり詰め込んだりしてますね。
ビートの裏を打つ響きや動きも快感です。(4の歌など特に)


BABYMETALのネタ元としてほとんど語られることはありませんが、私的には楽曲製作においてマキシマムザホルモンの影響はかなり大きいと思います。

歌詞カードを見なければ意味が解らない、日本人にも聞き分けられないアクセントの日本語で歌われる歌。
こんな誰にも理解不能な歌がBABYMETALよりずっと先に海外でも受けいれられました。

YOUTUBEで海外のファンがバンドや個人でホルモンのカヴァーを多数投稿しているのを見て私は新しい時代の始まりを感じました。
質が高くオリジナリティーがあれば言葉の壁は越えられるんだという希望を。

また私がホルモンで感じたのはラウドなサウンドにはスイートな女性アイドル・ヴオイスが非常にマッチするということでした。
ドラムのナオが時折入れてくるそれだけをもっと聞きたいと思っていました。
その望みをカワイイアイドルのダンス付で実現してくれたのがBABYMETALでした。ハマらんわけがない!

実際この『ド・キ・ド・キ☆モーニング』はマキシマムザホルモンの『恋のメガラバ』にギターリフも曲の構成もPVの演出もそっくりだと思いますDEATH!
https://youtu.be/M7yGQneO9R0?list=PLEEcU32DT70t2MatNju6-2_psBNFdOPY-

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