« 『Catch Me If You Can』考 | トップページ | Intermission:BABYMETALの音像 »

2015年3月30日 (月)

『BABYMETAL DEATH』』考

Bmd

Release: Single『イジメ、ダメ、ゼッタイ』初回限定盤に収録
Credits: 作詞・作曲:KITSUNE of METAL GOD 編曲:ゆよゆっぺ


 1秒ヴァージョンとこのフル版、どちらが先に作られたのかは不明だが、1秒版の仮想BPMよりも、この曲に於ける「自己紹介」部のBPMは若干遅い気がする。
 パート代わり毎にBPMを上げていくアレンジだからだと思うので、後から作られた説を一応採る。

 ゴシックの教会音楽の様な前奏曲は、基音を潰してプリエコーを深くとった、果てしなく長いリヴァーブの低音が響き、徐々に不穏さを増していく。
 Aパートの6連の刻みギターは多分打ち込みではないか。終盤のソロも打ち込みかもしれない。しかしBパートのリフなど、リアルなギターも不可欠な要素として組み込まれている。

 神バンドの一人、大村孝佳は「一番難しい曲はどれか」と問われてこの曲を挙げた(『Road of Resistance』発表前)。
 恐らくドラムにとってもそうだろうと思う。
 音源に打ち込まれたパターンは、人間が再現する事を考慮していなかったとすら思える。

 私個人の嗜好としては、機械の様なブラストビートよりも、ハーフタイム・シャッフルの様なグルーヴのあるドラムを好むのだが、この人間技を無視したドラム・プログラミングにはやはり耳を引きつけられ、この楽曲のリード楽器はドラムだと思う程だ。

 デスヴォイス・コーラス隊(という程多く重ねられてはいないが)にリードされ、やっと三人が自己紹介をする。
 テンポにきっちりと合っているので、実際に歌入れはされたと思うが、2回繰り返されるテイクは恐らく同一のものをサンプリングして使用されている。
「MOAMETALでふっ」(声裏返り)が全く同一なので判る。

 

 ライヴ映像よりも先に曲を聴いていたのだが、6分弱もあって正直なところ長すぎないかと思っていた。自己紹介や展開をまた繰り返す事も無かったのではと。

 しかし、多くの場合ショウのオープニングを飾るこの曲の、「遂に始まるぞ」感は尋常では無い事が判った。
 WOWOW放送のSSAライヴではアンコール明けだったが、この曲が進行してく毎に、胸の圧迫感を感じるまでに昂ぶらせてくれる。


 曲が始まっても、BABYMETALの三人はシンプルな動きに留まる。
 上体を大きく上下させ、両腕を上げた上体で頭を激しく振る。
 言うまでもなく『ヘドバンギャー!!』にあるモーションから切り出された振りだ。

 意味するところは明かだ。
 彼女達は設定として「ステージではキツネ様が降りてくる」と言い、ステージで何をしたのかという記憶は曖昧になっているのだと。
 この設定はしかし、演出の為に「そういう事にしておこう」と考えられたものではなく、SU-METALらが実際、ライヴにおける自分のパフォーマンスをあまり覚えていないという事実から導かれた「解釈」だろうと思う。
 中元すず香とSU-METALの差は俄には信じられない程であり、単にメイクをしているからなのではなく、全く顔つきも目の力も異なっているのは誰しも悟るところだ。
 彼女が女優であれば間違いなく憑依型アクターである。
 彼女達が普段のさくら学院生徒ではなく、全く異なる存在として驚異的なパフォーマンスをするには、『BABYMETAL DEATH』という憑霊の儀式が必要だったのだ。
 このプログラムはまさに、トランスする為のシャーマニックな装置である。


 とは言え実際には、本番直前のステージ袖で、既に彼女達はゾーンに入っているらしく、その時にはKOBA-METALも迂闊に声を掛け難い雰囲気であるらしいのだが。

 しかし、例えばSonispherのステージ・イン直前のスナップを見ると、見たことも無い観衆の数に対してなのか、少し脅えた様な顔をしていた様だ。
 それでもその後、イヤーモニターのトラブルがMOAMETALにあっても、彼女達は自分の力を100%以上発揮して、あの結果となった。やはりこのプログラムで始めれば、いつもと違う雰囲気であってもゾーンに入れたのだと思う。

20140827000805


 自己紹介パートはダメ・ジャンプを三人が跳ぶ。
 この楽曲は「BABYMETAL版ミッキーマウス・ソング」という意図で作られた。振り付けでは他の代表曲のエッセンスが導入されているのだが、この曲では裏拍で、しかも3連で跳ぶのでよりトランス性がある。

 終盤のギターソロも、メカニカルなフレーズをライヴではきっちりと再現される。
 この時BABYMETALの三人は、ステージ上をあたふたと右往左往する、ミュージカル的な動きを見せる。これも、一見滅茶苦茶な動きの様に見えて、三人の距離感は一定に保たれた計算された動きとなっている。後方など視界外への方向に小走りで身をかわす様にはひたすら驚嘆する。(『4の歌』とどちらが先に振り付けられたのだろうか。あれにも異なる狙いで同じモーションがある。)


 ライヴでの再現など考えずに作られたかの様なドラムを、青山英樹と昨年幾度か登板した前田遊野は見事に再現した。
 あの白塗りのメイクでもキツそうな表情は垣間見える。まるで中距離ランナーの様な姿に映る。彼らもまたアスリートなのだ。







 今日(日付は昨日)、さくら学院2014年度の卒業ライヴが行われ、四人の生徒が卒業した。中元すず香を含む卒業生も全員集合しており(舞台裏で)、絆の強さが改めて感じられる。

 菊地最愛と水野由結は、ほぼ5年間さくら学院の歴史と共に過ごしてきた訳で、その感慨は如何ばかりかと思う。

 BABYMETALとしても、確実に一つの節目を迎えた。
 どう考えても、これからのYUIMETALとMOAMETALは、それ以前とは異なる心理的ステータスにある訳で、そのパフォーマンスが進化する事は間違いないだろう。

« 『Catch Me If You Can』考 | トップページ | Intermission:BABYMETALの音像 »

コメント

自分にとってこの曲は、Babymetalとそれ以外のアイドルとの分水嶺です。他に海外ハードロックの大御所とコラボしたアイドル等もいますが、その立ち位置はメタル側の自分から見るとあくまで一般とメタルの間に流れる大河の向こう側でこちらを覗いてみましたという程度にしか見えず、共感も覚えません。

Babymetal Death を聴くまでは正直、このBabymetal というプロジェクトの立ち位置を測りかねていましたが、これを聴いてこのプロジェクトの本気度を確信しました。これを自己紹介曲とすることは、自分にはBabymetalが大河を渡り、一般的な潜在ファン層を切り捨てることになってもこちら側を立ち位置としていくことの表明と感じられました。

いつも楽しく拝読させていただいています。

メタル、にも、アイドル、にも、殆ど興味の無い私が、
「ギミチョコ」一発で、魅入られ(憑依され)てしまい、
毎日、新しいライブ映像(プログラム)を求めて、ネットをサーフする始末。
しかし、自分の「転向」っぷりになんとか裏付けを求めることは
素直ではないのは分かりつつ、やめられません。
ので、ひとつ感じたことを。

今のbabymetalに対する、語り、の、量/質、は
ヒト昔前の、プロレス、に対するモノに似ているような気がします。
ヤオ/ガチ、と云う二項対立ではなく、目の前に現れている
「ミスチフィカシオン」(意識/無意識、的にほのめかされている)を
「もののあわれ」として愛でる、感じでしょうか。

少女が大人のように(あくまで「ように」が重要death)歌い踊る姿を、
(神のようなテクニックの)「神」バンド、が支える図は、
ルー=テーズ/カール=ゴッチ直系の道場神話に支えられた
新日本プロレスみたいdeath。

ほのめかし、や、不完全、に対する感受性が欧米に見られるのは
一神教的思想の綻びが現れて来たのでしょうか?
神バンドは4人も神がいることなので。

BABYMETALの楽曲の中で一番好きな曲かも知れません。
異世界へと誘う魔曲とでも言えるのではないでしょうか。
海外の掲示板で、女の子達がほぼ歌ってないやないか!という突っ込みがありましたが、あれば自己紹介曲だからと、とりなされていたのが、印象的でした。

私も多少はドラムをかじったのですが、コピーしようとも思いません。(ツインバスの時点でアウトですが)凄まじい撃ち込み&蹴り込み?です。
当に神バンドと呼ぶに値する、演目と言えるでしょう。

この曲は僕が完全にベビメタファンになった曲ですね
ちょうど1年前にいくつかの曲を面白いと思いながら聞いて
この曲のあまりのかっこよさ、そして自己紹介的な歌詞しかない
ところなどが衝撃でした
これを中高生女子が!?かっこよすぎだろ!
ってドハマリしましたね

昨年の欧米ツアーで、OP曲として紙芝居のモノローグからこの曲へ突入する流れは、ファンカムで見ていても現場の高揚感が伝わってきて、本当に鳥肌ものでしたね。自分もあの場にいてあの瞬間を味わいたかったです。近々DVDが出るようですが、この場面が本当に楽しみです。

P.S. MOAMETALの"でふっ"が、キツネ祭りでは"ですっ"になっており、少し寂しかったです(笑)

初めまして。いつも楽しく拝読させていただいております。
メタル側からベビメタに入った人間からすると、ここまて遊び要素のないがっつりヘヴィなナンバーで古参の父兄さんまで盛り上がってくれるのは嬉しい限りです。

>全く顔つきも目の力も異なっているのは誰しも悟るところだ。

ほんとに、あの憑きっぷりはなんなんでしょうね。
中元すず香を美人と思ったことは一度もないのに(失礼な!)、SU-METALの美しさと言いましょうか神々しさといいましょうか……
「ちょっとそこで二、三人殺ってきた」みたいな、あんな目は全盛期の明菜だってできません。

どこだったか、SU-METALの容貌を仏像になぞらえたレスがありました。
かつて山口百恵は菩薩でしたが、きっとSU-METALは阿修羅なんでしょうなぁ。
いや、ちょうど三面六臂だし……

BABYMETAL DEATHは2012年10月O-EAST I公演、Metal Resistanceの最初の公演で初披露されています。1分ver.は同7月コルセット祭りで初披露含めて数回と思いますがBABYMETAL DEATHはできていてその前振りとしてナパームデスのオマージュで披露したもの、完成は同一のタイミングと思った方がいいです。
BABYMETALが本格的なメタルをやって行くという宣言の曲として、特に欧米のメタルヘッズへのメタル宣言のような位置付け、それとSUにキツネ様が降りて神格化するための曲と言えるかと思います。
一番判り易いのはSONISPHEREで、この曲で入場した後、会場全体をゆっくり見渡してニヤッとします。ここまでは中元すず香で彼女が10歳の時に可憐Girl'sでSSAに出演した時も同じ動きをします。以降ずっとそうなのでこれで緊張をほぐすのかくせなのかは不明。
しかし両手のキツネサインを回して首を激しく降り始め徐々にSU-METALになって行く。
演奏面では1/10キツネ祭り終了後のヘドバンイベントで大村・BOHさんがやはり一番難しいのはBABYMETAL DEATHと言っている、同じリズムでずっとユニゾンで演奏せねばならずこれがかなり難しいようです。
おそらくDragonforceと言えどもRofRは演奏できてもBABYMETAL DEATHはおいそれとは再現できないと思われる。

いつも興味深い書き込みありがとうございます。
毎回、楽しみに拝読させて頂いております。
この、BABYMETAL DEATHって楽曲、ファンになって最初の頃は「いらねぇだろ?」って思ってました。
しかし、ネットでライブ映像を漁りまくった結果、この楽曲がダイナマイトに点火する導火線だと悟りました。
ライブのスタートにふさわしい1曲目です!

ロック歴30年以上のおっさんdeath!!!
ネットをサーフしてて何気にソニスのファンカムにたどり着きました。
以前からbabymetal は知っていたのですがこの曲とギミチョコだけは知りませんでした。
イントロで、けっ!メタリカのパクリかよ!ざけんなよ!
と思いつつも最初のブレークの格好良さにもっていかれました。
狐様が降りてきた瞬間でした。
10本以上ギターを持っているのですが、この曲をコピーしたくて新たに7弦ギターを買ってこの曲を練習しています。
クソ難しいDeath!!!!!!

FM802でもメンバーはBABYMETAL DEATHが一番しんどいと言ってましたね。ずっとジャンプしているからだとか。
新しい曲はどんどん難しくなるとも言ってましたが。

https://youtu.be/IXt1XCSpN0w

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/596668/61359290

この記事へのトラックバック一覧です: 『BABYMETAL DEATH』』考:

« 『Catch Me If You Can』考 | トップページ | Intermission:BABYMETALの音像 »