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2015年3月29日 (日)

『Catch Me If You Can』考

Catch_2

Single『イジメ、ダメ、ゼッタイ』通常盤にカップリング
Credits: 作詞:EDOMETAL 作曲:NARASAKI



 この楽曲は歌を聴かせようという意図が薄く、振り付けパフォーマンスをメインに見せるプログラムとして企図されたと思う。
 SU-METALが歌うパートは中間部まで無く、サビの部分は短い。しかしそれだけの部分でも、SU-METALの伸びやかな歌唱は愉しめる。

『ヘドバンギャー!!』に続くNARASAKI提供曲で、私個人的には一番肌に合うサウンドだ。CDを通して聴いていて、この曲になると今でも少し昂揚感を覚える。間違いなくロックだ。

 この楽曲はインダストリアル+デジロックというコンセプトで発注された様だが、リフはやはりSlipknot <sic>をモデルにしていると思う。
 デジロックについては、シーケンスを導入するという普通な発想ではなく、ドラムにドラムンベースを被せる手法が用いられた。
 これぞハイゲインというギターのザクザク感は、初期Slipknotを好んだ私には実に心地良い。

 誰しも頭の中で突っ込んだ事だろうが、「かくれんぼ」が主題であるなら Hide and Seekというタイトルであるべきだ。
 しかし「鬼さんこちら 手の鳴る方へ」は「鬼ごっこ」と、双方の要素が歌詞には含まれる。

 この楽曲の録音にはエピソードが多い。
 冒頭、地下室のドアを開ける様な音が響き、靴音が近づいて来るSEが流れる。
 歌入れの時、このSEをヘッドフォンで聴いていたYUIMETALは非常に怖がって、プレイバックする時にはこのSEを流さないで欲しいとディレクターに頼んだのだという。
 え!? そういう年齢ではもうないのでは、と思ったのだが、とても感受性が強いのだろうなとも思った。ちなみにMOAMETALは全然恐くなかったけど、YUIMETALの為にSEは返さなくていいと同調したそうである。

 

 二人の特にAメロのラップ部は、フィックスとなった歌詞は無く、二人にも台詞を考えさせたという。クレジットには載っていないが、「4の歌」に先んじて既に二人は作詞をしている事になる。
 どの部分がそうなのか勿論私には判らないが、
「とっておきの場所を発見!」や
「いいよ!見つけられるもんなら/見つけてみなさいみなさいな!」
といったフレーズは、あまり作詞家が書きそうな言葉ではない気がする。
 本能的に作詞家は言葉を整えまとめようとするものだが、これらのフレーズはそういった遊びを実際にしている少女を想像した二人が、リズムと拍数のノリだけで生み出した様に私には思えている。
「まあだだよ」や「もういいよ」は、指標的な音階はあるのだろうが、極めて自然であり、YUIMETAL+MOAMETAL二人のシンクロ性を遺憾なく発揮している。
 過日ラジオに出演した二人の「以上! さくら学院でしたー」という挨拶が、完璧なユニゾンだったのも印象的だった。

 このトラックに於けるデスヴォイスの役割は明確で、「鬼」である。
 ブレイクの「見ぃつけたぁ」は実に効果的だ。(しかし秋田のなまはげを模したダイアローグは殆ど聴取れない)

 SU-METALはパートによって鬼の役に回ったり、逃げる側に回ったり、保護者の様な視点になったりと、その役回りが行き来する。「鬼さんこちら 手の鳴る方へ」というブリッジ部でようやく声を聞かせ、Cメロで全開となる。
 彼女の歌入れは珍しく、YUIMETAL+MOAMETALの後だった様だ。歌うところが少なくて驚いたかもしれない。

 印象的な歌詞「赤い靴 履いちゃダメ デンジャラスだもん」は、怪奇と幻想の側の人間としてはE.T.A.ホフマンの怪奇ロマン、それを許に作られたバレエ映画「赤い靴」を想起するのだが、野口雨情作詞の「赤い靴」のイメエジもあるのかもしれない。「異人さんにつれられて行っちゃった」という、良く考えると恐い歌詞については、これまで多くの「定説」と「異説」が発表されてきた。

 それにしても、「赤鬼さん(ヴォイ!)青鬼さん(ヴォイ!)」という合の手だが――、「ヴォイ」って何。
 Voidの事かなぁなどと考えを巡らせたが判らない。メタルの観衆がビート感のある演奏に上げる声は、そんな掛け声だった気もするが。


 ライヴでは、この曲のリフを利用した神バンドのソロ回しがイントロとして展開される。三人に束の間の休息を入れる為だろうが、ライヴ・バンドであるBABYMETALのリアルさを十二分に発揮する重要なポイントである。
 神バンドは割と基本的なパターンは踏襲したソロを披露するが、BrixtonでのLeda+大村孝佳+BOH+前田遊野はテンションが高く、火を噴く様なソロを見せてくれた。

※Brixtonの神バンドイントロはこの動画が一番良く判るが、歌本編はBABYMETALが殆ど映っていない。


 BABYMETALのステージ・パフォーマンスが、他の女性ダンス・ユニットなどと比べ、先ずその前提条件が異なっているのは、高いヒールの靴を履かない事だ。
 Perfumeは特に、ハイヒールで表現出来る事の限界を越える振り付けをこなしてきたが、やはり動きに制約がある事は否めない。
 SU-METALはややヒールのあるブーツを履くが(ステージで熱演する内にヒールがもげた事があるそうだ)、YUIMETAL+MOAMETALは完全に底が平面のドクター・マーチン(風)のブーツを履く。
 これによる自由度は極めて高いものとなった。

 このプログラムでは、SU-METALの躍動感に満ちたダンスを堪能出来る。
 サビの「その場で走っている」ダンスは、二次元的な、例えばギャグマンガの走っている絵をリアルに表現している様な感覚を覚えて、実にエキサイティングだ。
 しかしこの全身をうねらせて足を交互に高く上げ、しかも普通に走るのとは全く異なる方向に関節を動かすというのは、相当身体的にはキツそうだ。これを行いながら歌うのだから、SU-METALの底知れ無さを痛感する。

 途中SU-METALが鬼役となり、YUIMETAL+MOAMETALが逃げるというスラップスティックの演技があるのだが、決まった拍数の中でこなす三人はいつも完璧だ。YUIMETAL+MOAMETALがSU-METALの視界から逃れる動線は有機的で何度観ても飽きさせず、SU-METALのとぼけた演技も見逃せない。
 MOAMETALはSU-METALの股の下を潜り抜けたり、「走り」のモーションを静止させたり、「赤鬼さん」で百面相を見せたりと八面六臂の活躍をする。

 間奏部はバンドの16分音符のヴァンプを忠実に身体表現し、『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』の延長的なダンス・パートになるが、こちらには攻撃的なビートがあるのでBABYMETALらしさを横溢させたダイナミックなものになっている。このモーションは『ギミチョコ!!』で更に発展していく事になる。
 間奏終盤部は三人がゾンビ化する。
 ダンス・パートを逐一物語として読み取る事には何の意味も無いのだが、「鬼」に捕まりかけた女の子達がゾンビになった振りをして、鬼の目を眩ませ逃走に成功した、と読み取ると愉しい。(このパターンの展開はゾンビ物がオリジンではなく、ラヴクラフトの『インスマスを覆う影』だと思う)

『ヘドバンギャー!!』と同じく、この曲も実にシャープなエンディングがつく。
 腕を左右に広げる仕種はビートとシンクロして、カッコ良さを演出するが、どうもこの終盤の振りは「あっ、見つかった!」的な慌てであるのかもしれない。
 最後にはがっくりと三人は床に崩れていってしまう。
 つまりこのゲームは「負け」たのだった。
 しかしどのステージに於いても、次のプログラムでBABYMETALは復活する。




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コメント

この曲はライブでは鉄板の代表曲であると思います。デモテープを一度MP3に変換し、わざと音を劣化させてから重ねるといった重く潰れたサウンドに、YUIMOAの高い声を載せる…狂ってますねw
三人が多重に交差しながら走り回るというラストの振りも素晴らしい。Perfumeとも共通するダンスの立体構造。ただ横に並べて踊るだけじゃないぞという。MIKIKOMETALの振りは、舞台上を平面的ではなく、立体的にとらえていることがよくわかります。

私の嫁もBABYMETALのファンなのですが、ファン化のきっかけはこの曲でした。「なんじゃこりゃー!とビックリした。こんな曲初めて聞いた。こんなことやっていいんだね」とのことで。

この曲の「考」を待ちに待っておりました。曲を聴いている時と同様の高揚感を味わわせて頂きました。この曲での3人の「演技」と「表情」、最高ですね。そして、SU-METALさんのサビの部分の伸びやかな歌声、映像や音源を何度聴いても、聴くたびに気分が上がります。ライブ時の神バンドの神演奏から3人が掛け声で入ってくるところなどもう至福過ぎて…。

今回も素晴らしい「考」、ありがとうございました。

この曲はMIKIKO-METAL振付の創造性が遺憾なく発揮された曲だと思う。特にさくら学院の振付では顕著であるが、楽曲の持つ魅力をMIKIKOなりに解釈して起承転結を持った一つの物語のような振付を考え出している。歌詞の少ない状態でおおまかなKOBAによる指示だけで、ここまでダンスで物語性を持たせ、YUIMOAによるラップ部の引き出しを助けるセンスは正に天才的だと思う。
またこの曲は神バンドの超絶テクニックを魅せられる、フェスや海外向けで欠かせない曲となっている。BABYMETALはメタルダンスユニットでありダンスは欠かせない要素だが、激しいメタルの曲に合わせたダンスはやる方も大変だが、演奏する方はもっと難しい。これがレベルの高いフォロワーを生み出せない最大の要因と思われるが、ダンスをカウントで覚えるため演奏者はクリック音に合わせざるをえず、ギターソロであろうと忠実な演奏が必須。しかしこの曲のイントロは神バンドだけのためインプロビゼーションに富んだ演奏が可能となりそのテクニックを存分に発揮できる。
更にSUの喉への負担をかけずに高レベルな3人のダンスを見せられることで、ショーの中盤の重要なつなぎでありライブで絶対に欠かせない曲となっていると思う。

この曲は歴史に残る傑作だと思う...
少ない音で最大の効果を得るソングライティング
( 鉄板のマイナーセブンス + 近親アニメ転調〜笑 )
、加えて心揺さぶるミキコ氏の振り付けがさらにこの曲を傑作たらしめていると思う。
しかしこの曲の1stアルバム収録テイクのプロデュースには問題があり、製作側の意図としては「 ローファイハードコア 」的なモノを狙ったのかもしれないが、
見事に失敗しており、歌もリフも曖昧で貧弱なプロデュースだ。同じ意図でも例えば洋楽のHelmetなどは凄くカッコイイ...ドラムもリフもカオスだけどしっかりそれぞれが聞こえるし、ボーカルも音量は大きくないのに はっきりと聞こえる。どうしてこのようにしなかったのか?本当にもったいない!
ぜひリミックスを希望します!
なんなら、Living Color みたいな 分かりやすく それぞれの音がクッキリしているMIXにしても良いのでは?
そうすれば、ラジオから流れてきても曲の良さがすぐ分かる。そうすればビルボードTOP10も夢ではない。

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm21665644
slipknot✖️BABYMETAL
凄く良いマッシュアップです

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