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2015年3月 8日 (日)

『ヘドバンギャー!!』考 1

Hedban1

 5月のワールド・ツアーが始まるまでには、プログラム批評を全曲分終えたいと思っているのだけれど、あんまり自信はない。このプログラムについては3回に分ける(続けて更新は出来ません)。
 先ずはトラック(音源)についてから。

Release: シングル「ヘドバンギャー!!」2012年7月4日 重音部RECORDS (TOY'S FACTORY)
               さくら学院 2012年度 ~My Generation~ 2013年3月13日 (ユニバーサルJ)
Credits: 作詞:EDOMETAL・NAKAMETAL、作曲:NARASAKI、編曲:NARAMETAL


 ライヴでは既に「イジメ、ダメ、ゼッタイ」を披露してはいるが、音源としては初めてのシリアスな楽曲であり、マジの入ったメタルである。
 BABYMETALのそれぞれの曲が、どの時期にどの順番で手をつけられたのか判然としないのだが、この曲が作られたのはそう遡る事は無いのではないかと思っている。その理由は後で述べる。


 日本歌謡曲の熱心なエヴァンジェリスト、マーティ・フリードマンは、日本の曲が如何に多くのコードを内包しており、それ故に欧米の曲よりも良いのだという説を述べている。
 私は若い頃、反対の考えだった。日本の歌謡曲はやたらにコード・チェンジをするからダサい。だからリフで押せる様な(洋楽的な)曲がなかなか作られないのだと。

 当然ながらこれは善し悪しではなく、傾向の違いでしかない。洋楽だって特にジャズ・スタンダードを骨格にした曲はコードを多様に内包している。
 しかしロックという事に限れば、シンプルで印象深いリフこそが正義なのだ。
 ロックというジャンル音楽の最も大きな魅力はリフであると、個人的には思っている。
 このブログで幾度も引用してきたメタル・ドキュメンタリ『メタル・エヴォリューション』でも、パンテラのヴォーカリストだったフィル・アンセルモは、「良いリフは金になる。だからそういうのを《マネー・リフ》っていうんだぜ」と露悪的な言い方で表現していた。パンテラのリフを生んだギタリストと反目しあったまま脱退し、その後ギタリストは凶弾に倒れるという後味の悪い経緯も想起せずにはおれないが、それはここでは余計な話だ。

 日本のロック(調)歌謡ポップスにて良いリフが生まれなかったのは事実であり、その意味でもこの『ヘドバンギャー!!』の存在価値は高いと思っている。
 使っている音はMetallica "Enter The Sandman" と近似しているけれど、この曲のリフは充分にユニークだ。リフ部、Aメロを一貫して貫かれ、ロック以外の何物でもない自己主張をしている。
 ローチューニングのリフと共に、チョーキングで警報音の様な無調のフレーズが入る。Slipknotなど近年のヘヴィバンドの常套でもあるが、三人の少女達がステージに立つ曲としては相当に不穏なムードを作り出している。

 Bメロ、Cメロ、各ブリッジは全てギターのフレーズで作られており、ギタリストが書いた曲以外の何者でもない。カラオケ(Air Vocal Version)だけを知らないメタルファンに聴かせれば、よもや三人のミドルティーンが歌うトラックだとは思わないだろう。辛うじて前奏部のハープシコード+ストリングスがリリカルさを醸し出してはいる。
 ドラムは打ち込みだが、生っぽくプログラムされている。
 アクティヴ回路っぽいベース(多分SpectorとかのPJタイプ)のピック弾きが一瞬聴き取れるので、これは生で演奏していると思う。しかしアナログシンセベースのシーケンスも併用されていて、懐古的なロックではないという主張もあるアレンジだ。

※カラオケ版

 さて、楽曲としてマジなメタルをやる決意を明らかにしてはいるが、その歌メロはどうか。
 率直に言ってCメロの歌い出しからして、半音階が容赦なく入れ替わるこの歌メロを正確な音程で歌うのは難しい事だと誰しも判るだろう。
『君とアニメが見たい』のヴォーカル部は明らかにAutoTune(ピッチ補正プラグイン)が使用されていたが、あの曲の場合は無機的な効果を得ようという意図があったと思う。
 この曲でも使ってはいるかもしれないが軽微な筈だ。ライヴでSU-METALがこの歌メロの音程を危うくした事は無く、それが可能なヴォーカリストだという前提で作られている。にしても意地の悪いラインだとは思う。

 メインのリフ部にはいきなりYUIMETAL+MOAMETALの「ヘドバン♪ヘドバン♪バンバンババン」というカオスなコーラスが入る。振りについては後段に送るとして、音だけでもこのインパクトは強い。
「バンバンババン」のオリジンは、『グレートマジンガー』ないしは『鋼鉄ジーグ』、いずれにせよ渡辺宙明という日本が誇るアニメソング・マエストロのフレーズ引用である。
 黄金期のアニメソング作曲者で誰か一人を何が何でも選ばなければならないとしたら、“ちゅうめいさん”と特撮ファンの間では敬意を以て呼ばれる氏を選ぶ人は多いと思う。
 もうすぐ刊行される筈の特撮脚本家対談集で、私は會川昇氏(本ブログにもコメントを書いてくれた)と話したのだが、脚本の話をしていた筈が普通に宙明さんの名前も出てきたのだった。
『人造人間キカイダー』『スパイダーマン』(東映版)などで、一聴してすぐに判る宙明節は、マイナー・ペンタトニックやブルー・ノートというスケール(音階)を多用する事で確立された。でもこうした音楽の知識がない子どもであっても、「これ、同じ人が作ったんだ!」とすぐに判り、どれもが独立しているというのは、商業作家としてはこれ以上の理想は有り得ないのではないかとすら思える。
 かなり余談が膨らんでしまったが、『ヘドバンギャー!!』の歌メロも近いスケールで作られており、単に「バンバンババン」が入っているからではなく、スケール自体も私に近い世代には魅力になっているのだ。

 ところで、BABYMETAL公式プロフィールの表現、YUIMETAL+MOAMETALが SCREAMING & DANCING となっている事にはずっと違和感を拭えないでいる。既にリード・ヴォーカルをとっている楽曲があるから、ではなく、そもそも二人は殆ど叫んではいないからだ。
 SU-METALもスクリームどころかシャウトすら殆どしていない。
 唯一の例外なのが、この曲だ。
 SU-METALがタイトルコールを2回(音源では1回目は途中で消される)、二人は「頭頭頭~!」は完全に怒鳴っている(ほぼMOAMETALだが)。
 恐らく、いわゆる「合の手」をSCREAMINGと代称しているのだとは思うのだが、実態との乖離が気になってしまう。VOICEくらいにはならなかったのだろうか(※個人の意見です)。

『いいね!』もそうであったのだが、この『ヘドバンギャー!!』もAメロは1回だけであり、以降BABYMETAL楽曲の多くがそういう構成をとっている。
 想像だが、『イジメ』が6'30"というアイドル系楽曲としては異例に長い(けどロックとしては普通な)時間となり、ライヴでやってみたら特にYUIMETAL+MOAMETALの肉体的負担が大きく、なるべく4分を切る仕上がりを指向していった様な気がする。
 Aメロを1回に節約すれば、ダンス・パートのブレイク・ダウンやギターソロもフルに入れられるからだ。

 BABYMETALを知って最初に聴き始めた時、この曲は普通に良いロック・ナンバーだと思ったし、タイトルはすぐ「ヘドバン」+「バンギャ」だろうと見当もついた。

 しかし繰り返し聴いて、更に振り付けを見ていくと、何か異常さを感じ始めた。
 そもそも何故、バンギャの歌を歌う必要があるのか。
 この曲は何を表現しようとしているのか。

 トラックを聴いて、歌詞を読むだけでは判らなかったのだ。
 私が得ている現時点の結論は、振り付けパフォーマンスと込みでなければ論証出来ない。という事で、この項はつづく。


※はげましのコメントありがとうございました。
「トマト君」1万字論考はネタですw でも数分だけシ
ュラークル的に真面目に考えたのは事実ですが。スイマセン。
 それにしても今日の日中は仕事が出来ずに閉口した……。嘘ですニヤニヤしてました。

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コメント

バンバンババンは振付からドリフだと思ってましたが、どうなんでしょう?MIKIKOMETALがこじつけただけかもしれませんが。

トマトくん…
モアちゃんのほうれん草くんに
食われてた…(T ^ T)

俺もドリフだと思ってた

「合の手」に相当する英語表現が無いのなら「AINOTE」のままでどうでしょ
「KARAOKE」が世界に通用するように「AINOTE」も世界語になるかも

それから自分もドリフみたいで"アハ! 面白い"と思ってた

自分もやっぱりドリフかなー。8時だよ!のラストでいつも見ていたやつのような気がします(笑)

P.S 自分はすうちゃん不足が耐え切れず、ヤフオクでさくら学院2013年3月卒業写真集をポチってしまいました。昨日到着。すうちゃんやBABYMETALの写真満載で満足でしたが、一番印象に残ったのは、10頁程にある前年度卒業式直後に撮られたと思われる集合写真。すうちゃんはじめ、皆メイクボロボロに泣きはらしているのですが、感動が伝わってくる素敵な写真でした。小中先生もいろいろ買われているようで一安心。業界人なのに物販でちゃんと購入されるのが偉い(笑)。自分はあくまでBABYMETALの延長線上でさくら学院を捉えているので、買うとしても3人に関連したものだけにしようと思っています。自信はありませんがw まあ小中先生と一緒に日本のGDPに貢献するということで(笑)

はじめまして。
自分もドリフに一票です。
以前、気になって調べてみたのですが、「バンバンババン」の振付に似ているのは「8時だよ!全員集合」のオープニングでの「エンヤーコラヤ ドッコイジャンジャン コーラヤ」の部分です。(振付師は藤村俊二だそうですw)
MIKIKO氏は世代ではないので、KOBAあたりがエンディングの「ババンバ バンバンバン」から連想して、両者をミックス(あるいは勘違いして)アイディアを出したのかなぁ、と個人的には思っています。

ヘドバンのバンバンババン部分の振り付けは、ドリフだと「エンヤーコーラヤ」なんだよね。ドリフのババンババンバンバンは違う振り。
まあ、自分も最初にひらめいたのはドリフですが、よく考えたら違うじゃん!ってなりました。

最後の部分はニコ生での公開授業のことなんだろうなあと
一人ニヤニヤしてました。
毎回更新を楽しみにしております。ご自分のペースで無理なさらぬよう。

自分も初めて「ヘドバンギャー!!」を聞いた瞬間、「グレートマジンガー」だと思いました。小学生時代、ドリフもマジンガーもリアルタイムで毎週欠かさず見続け血肉と化していた自分には、ババンババンバンバン、とバンバンババンの違いは明らかです。

その理由はマジンガーの「バンバンババン」の前から始まっている、「ダーッシュ!ダーッシュ!」からの流れにあります。実はこれがヘドバンの「バンバンババン」の前の「ヘドバン!ヘドバン!」と同じ音程、リズムで次の「バンバンババン」に続き、そこで止まります。

一方、ドリフは「ババンババンバンバン」の後に「ア~ビバノンノン」が続く流れで、バンバンバンの言葉が似ているに過ぎず、音程も異なります。振り付けは確かに違いますが、なんとなく雰囲気には近いものを感じます。

でも、グレートマジンガーとドリフはどちらも自分にはある意味根源的なもので、さらに人造人間キカイダーも自分の原体験です。アニメタルではないですが、確かにその辺にBabymetalに惹きつけられる一因があるような気はしています。

 私は励ましのコメントは書きませんでしたが、断言する筆致はステキだと思うし尊敬しているし、応援しています。
 仮に私がそれを”おもしろがる”とすれば、何でも突拍子もなく力強く断言する、かつての筒井康隆の愉快なエッセイ群のせいです(笑)

 それはともかく、楽曲そのもの(歌を除いて)を評価したり楽しんだりするのに「カラオケ版」を聴く、というのは私も思っていたところのものです。
 そのことに気付いたので、アルバムを買った後でシングルを買いました。

 みなさん! シングルCD「も」買いましょう!
 カラオケ版を聴きましょう!
 きっと、新たな発見、新たな感激がありますよ!(^^


バンバン ババン>
 盛り上がってますね(笑)
 私は最初、歌(歌詞)はアニソン、フリはドリフ?と感じました。
 今やもう、そんなことはもはやどうでもよろしい(笑)

 「バンギャ」についての考察、連想せぬでもありませんでしたが、関連性について何の考えも浮かばず自分としては却下した状態ですので、今後の論説が楽しみです(^^

 今日訪れた京都・出町柳あたりの鴨川は、春の日差しに冬の風でした。
 ご自愛のうえ、ご活躍を。
 

ちあきちゃんの可愛い写真もっと見たいなあーーーーー

こんにちは、いつも考察を読んではなるほどと楽しませていただいております
スクリームですが、BABYMETALにはメタルのベビメタバージョンが幾つかあります(ご存じとは思いますが)
ヘドバンは横に メロイックサインはキツネサイン WODはかけっこ モッシュッシュはやんわりおしくらまんじゅう、など
スクリームは合いの手って言うのもその一環ですからBABYMETAL的には正解です
確か最愛がそれを説明している動画が合ったと思いますが… すみません、定かではありません(^^;)
続きも楽しみにしています!

論考、興味深く読ませてもらってます。
私はこの曲の日本的メロディーが好きですね。

♪15の夜を 忘れはしない

のところは

♪めかくし鬼さん 手のなる方へ

の「小さい秋みつけた」を連想させて、童謡メタルの趣がたまらないです。

「バンバン」という歌詞はドリフかゴレンジャーか鋼鉄ジーグか…割と普遍的に使われていると思います。
メロディーはモロに「おれはグレートマジンガー」でしょう。但しマジンガーの場合は「バンバンババン」ではなくて「ダンダンダダン」なので、聴いたことがあるようなないような不思議な感覚になりますね。
私はアラフィフで上記アニメ直撃世代ですが、そろそろTHE ONETシャツ購入を我慢出来なくなってきました…

「バンバンババン」はスパイダースでしょ

皆、知らない世代なのかな?

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