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2015年3月19日 (木)

『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』考


Single CD 『ヘドバンギャー!!』収録

Credits: 作詞:RYU-METAL・FUJI-METAL・中田カオス 作曲:TEAM-K 編曲:ゆよゆっぺ

Ukimi



 ダブコア(ダブステップ+メタルコア)というサウンド・コンセプトと、緩いアイドル・ソングの強制的統合は、正編に当たる『ド・キ・ド・キ☆モーニング』よりも「ちゃんと整理されている」仕上がりだ。
 一定のトーンで一貫されているので、ぶつ切りエディット感が無い。その分、ある音世界で閉じているというか、小さな箱庭的世界を構築している様な感じも抱く。

 歌詞の冒頭、イカゲソが好きなおやつだという部分は、メイトには周知されているMOAMETALが好きな間食の趣味傾向で、さくら学院内で菊地最愛はこの事に限らず、ちょっと親父っぽいところがある、というキャラ認定がなされており、「コヤジ」(小さい親父)の異名も頂戴している。
 でも私が菊地最愛に感じるのは親父趣味というよりも、小学生男児っぽさなのだ。「要らん事をする」(by職員室)というのも含めて。
 2014年度は生徒会長に(職員により)選出され、メンバーの責任を持つ立場ともなり、彼女のひっかき回し役的な場面はなかなか見られなくなっていて、新規である私は少し寂しく感じる。MOAMETALという存在は、決して菊地最愛とイコールではないが、彼女自身のある側面を誇張させて現出したのだと思えるからだ。


 さて曲に戻ると、本人達に取材して作られた歌詞にしては、あまりリアリティが無い。そもそも女の子が自分達の事を「少年少女」とは言わない。これも大人の視点で書かれた歌詞だ。
 ギャル言葉が多用され、理解は求めていないにしても、あの怪曲『もってけ!セーラーふく』程まで突き抜けられてはいない。

 この曲構成は解釈によるが、イレギュラーなものだ。明快にABC部を指摘する事は困難だが、ここでは冒頭をCメロと解釈しておく。
 続くAメロと流れは似ているのだが、Cメロは1拍の食い。Aメロは半拍の食い始まりで、トリッキーなメロディが入れ替わる。リズムはノーマルなのでズレて聞える様な錯覚を引き起こす。
 手法としては Dave Lee Roth "Goin' Crazy!"(Steve Vai)など、テクニカルなバンドに於けるギター・リフのアプローチなのであって、アイドルポップスの歌メロではない。
 しかしSU-METALは難なく歌いこなしてしまうものだから、後には変拍子の曲まで歌うに至る。

 ラスト前の「眠くなってきた お腹もいっぱい」の一節は、音源ではそうでもないが、ライヴでは極端に「眠たい」感を出した、かなり可愛らしい歌い方で、最後のCメロで切り替えていた。しかし『ヘドバンギャー!!』もそうなのだが、昨年に入ってからこうした一曲内での歌表情の変化を、SU-METALはあまり強調しなくなってきている。
 SU-METALのヴォーカルについてはまた改めて考えたい。

 YUIMETAL+MOAMETALのSCREAMINGは、独立したものは「マジ!」のみ。あとは語尾に被せる程度しかなく、この点には大いに不満があった。

 中間部はBPMもがくんと遅くなり、それまでのBABYMETALにはないダンスを見せるパートとして企図されたアレンジだ。
 何らかのストーリーを表現するものではなく、純粋なダンスの為のダンスとして振り付けられており、スローモーションなども盛り込まれている。
 ライヴではこのパートになると照明が暗く落とされてしまうので、映像では全容を把握し難い。
 意欲的な試みだとは思うが、ジャズ/ヒップホップの王道的なコリオグラフィという印象を受ける。となるとBABYMETALにはやはり不利な勝負だ。
 例えば日本でも三浦大知らが見せる、Michael Jackson直系的なダンスと見比べてしまうと、BABYMETALの三人はプロポーションの違いからしても、シンクロ性に於いてそもそも分が悪い。
 BABYMETALだけにしか出来ない振り付け、ではないと個人的には思う。

 しかし、ヒップホップを主体とした様な他のアイドルグループの振り付けとは、やはり決定的に異質であり、それは主にはSU-METALの強烈な、思い切りの良すぎるモーションがリードするからだろう。
 BABYMETALライヴ演目のヴァリエーションという面では、このプログラムは充分以上に価値のあるものだと思う。
 このダブステップ部の様な振りを、彼女達が将来とてつもなく完成度を上げる事も期待出来るのだし。

 このプログラムの最大の野心はしかし、ダブステップというよりもデス声とSU-METALのウィスパー・ヴォイスの掛け合いがあるブリッジだ。
 音源を聴いただけだとあまりピンと来なかったのだが、ライヴ版を見てやっと意図が判った。
 ライヴでのデス声部は観客のパートなのだ。デス声はガイドに過ぎなかった。

 アイドルを現場でファンが熱狂的に声援を送るというのは昭和の頃から当然あった。
 しかし、アイドルの歌と歌の合間に独自なフレーズで叫ぶコールは、「MIX」と呼ばれるものなのだと調べて判った。MIXを実行する事は「MIXを打つ」と呼ばれる。まるで宗教的な儀式の様にも思えてくる。
「MIX」は1990年代に発生し、近年ではAKB系の現場にて発展していった様だ。
 MIXはしないで欲しいというステートメント出したアーティストもいて、必ずしも歌い手側が歓迎するものではないだろう。

 MIXを調べていて驚いたのは、これが最初に誕生したのがアイドルの現場ではなく、インヴェイ・マルムスティーンなどHR/HM系のライヴ現場だったという事だ。
 その面で言えば、BABYMETALがMIXを誘う楽曲を作るという事も、筋が通ってもいなくもないのかもしれない。

 しかし、ZEPP TOKYOや赤坂BLITZの様な会場なら計算通り、観客のパートとSU-METALの掛け合いは成立するが、武道館クラスのハコになると、観客が一糸乱れず歌詞を揃える事は無理だと感じた。「キンキラリーン」だけしか聞えない。
 また、切り返すSU-METALのヴォーカルはウィスパーなので、これは流石にプリ・レコーディングを使わざるを得ず、ライヴ・アレンジをした方が良かったのではないかと思う。つまり、生声で歌うといった様な。


 MOAMETALが、SU-METAL、YUIMETALと三人揃える振りがなかなか出来なかった、というコメントをしたのがこの曲なのだが、三人揃える場面はこのプログラムにはあまり無い。やはりあれは、「いいね!」の事だったのではないかとも思ってしまう。
 しかし、やはりこの曲であるのなら、それは恐らくダブステップのところなのだろう。
 本プログラムで三人が揃うのは、盛り上げる趣旨のシャドウ・ボクシングの様な、全身に力を込めた振りのパートだ。
 こういう振りを粗暴さも無く見せられるBABYMETALは、やはりオンリーワンである。

 冒頭近く、MOAMETALとYUIMETALが腕を伸ばしてSU-METALを囲む。これは後に出てくる「私ん家」の「ち」で再び同じポーズとなり意味が明かされる。まさに家を形作っていて、SU-METALがその中にいる事を極めてストレートに表わしているのだが、あまりに律儀過ぎて最早ギャグである。

 KOBA-METALがBABYMETALを構想した初期のイメエジ、「SU-METALの周りを天使が舞ってる様な」を最も実感出来るのはこのプログラムだ。『君とアニメが見たい』ではSU-METALを苛んでいた二人だが、このプログラムではSU-METALの周りを楽しげに舞い踊っている。

 正編『ドキモニ』とは実のところ、あまり関係が無い展開、歌唱をしてプログラムは終わろうとするのだが、YUIMETAL+MOAMETALは「さあもう寝ましょう」と言わんばかりにSU-METALの両手を持って前方(ベッド)に進み始め、『ドキモニ』と同じく「敬礼」のポーズで締めるのか――、と思わせるフェイントを噛まして、最後の音で後ろに向いてのフィニッシュとなる。

 自己パロディをする時期としては早すぎると思わないではないのだが、しかし観客に背を向けて終わるアイドルの曲という意味では野心的だ。







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コメント

Babymetalのライブに行く前に、今度もあれで絶叫したいと思いワクワクする演目がいくつかあります。IDZの「ダメ!」、4の歌やおねだり大作戦の合いの手もそうですが、特にこのウ・キ・ウ・キ★ミッドナイトは出色です。ウキウキミッドナイト!からキンキラリーン!にかけてのスピーディーな流れの中での掛け合いは、ある種の勝負です。あっ、次なんだっけと一瞬でも迷うとクロジンターイム!とやられてしまい、悔しい思いをするのです。早く、次もやりたいDeath!

ダブステップ部の細かい足の運びとかは、ダンスの基礎がなかったら難しい振りなのではないでしょうか。
あと「三人が揃う振り」と「三人が同じ振りで揃う」はまた別な気もします。

自分もこの曲の"キンキラキーン"が,大好きです。作者に完全にはめられているとはわかっていてもノッてしまいます。
なお、自分は"キンキラキーン"ではなく、"チンチロリーン"と思い込んでいて、SSAでも思いっきり"チンチロリーン"と叫びました(笑)。
今聞いてもやっぱり"チンチロリーン"に聞こえるだけどな・・。

海外のライブ映像を見てて一番好きなのがこのウキウキミッドナイト。日本のライブ映像か?と思うくらい完璧なタイミングの一糸乱れぬ合いの手で、しかし、巻き舌気味のキンキルィラルィーン!を聞いたときに海外らしさを感じる、この瞬間が最高に楽しい。

ウキミのフィニッシュの部分が最高に格好良い。
初めて観た時はシビレた(笑)

よくBABYMETALのライブに初参戦する方が覚えておかないと恥かくことは?という問いに対して、基本周りや3人をしっかり見ていれば問題ない、ただ一つ、ウキウキ★ミッドナイトだけは完全に覚えていかないと絶対に後悔すると言っておく

この曲を見るたび、“真夏の夜の夢”だなあと思います。
この曲でのゆいもあは、天使というよりまさに妖精。
タブステップパートは異世界へ入り込んだ気分になる。
3人に誘われる幻想的な曲。
大好きな1曲DEATH!

SSAでの、すう様のSAY!、あんたらの 今何時〜❓には感動シマシタ^_^

今更、とは思いつつ。
あの、「あたしん家」の、三角形。
サザエさんの、エンディングテーマにて
最後のところ、一家が駆け込む
三角屋根の家に思えてしまいます。

唐突で申し訳ありません。mixの定義は私には良く分かりませんが、『合いの手』なら、80年代からヒカシュー、あぶらだこが演ってます。日本古来あるものと思います。ヒカシューの『20世紀の終わりに』を聞くとそれが実感できると思います。

あけましておめでとうございました。小中です。

>へろさん
「アイドル+MIX」で検索して戴ければ、特異なファン表現形態の概要がお判りになると思います。

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