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2015年4月27日 (月)

『ギミチョコ!!』考 2

Jump_gimmie3




 昨今のアイドル楽曲のBPM動向に疎かったのでちょっと調べてみようとしたら、ちゃんと専門の人が書いていた。

2010年代のJ-POPのテンポが「高速化」してるという話

 やはり打ち込み系であるとBPMは「より速く」という傾向はある様だ。

 一般的なダンス・ミュージックのテンポはBPM(Beats Per Minute/1分中の拍数)115から130。人が歩くテンポが心地よく踊れるテンポとされる。
 Perfumeを手掛ける中田ヤスタカはBPM 128に設定する事が多く、しかしその数値自体にはロジカルな根拠は無いと述べている。(128というコンピュータ系では親和性のある数値に意味を見出している)

 BABYMETAL楽曲(『No Rain, No Rainbow』は除く)のBPMでは『おねだり大作戦』が最も遅く、概ねBPM 120。ダンス・ビートが骨格なので当然そうなる。
 それ以外は基本的に速めなのだが、ブレイク・ダウンするアレンジがあったり、『BABYMETAL DEATH』の様にドラスティックにテンポ・チェンジを繰り返す曲もあれば、『ヘドバンギャー!!』の様にパート毎2~3程度BPMを変えているものもあって多彩だ。BABYMETALの楽曲集を飽きずに長く聴く事が出来る理由の一つでもあろう。

『イジメ、ダメ、ゼッタイ』はスピード・メタルなので相当に速いかと言うと、大体BPM 160。まあキックがブラストビートになるところは、ドラムだけBPM 320となっていると思えなくもないのだが。

『ギミチョコ!!』のBPMは220。120から比べるとべらぼうに速い事になるのだが、実感としてそんなにせわしない印象は無い。
 しかしライヴをやる度に「あれ? テンポ上げた?」と錯覚する人もいる。
 音源のミックスは、あまりハイハットを立てず、1拍毎にタンタンと乾いたスネアを立てていて、ギターもシンコペーションを交えてグルーヴを出しているので、直線的な速さを感じさせずにリスナーをノリに引き込む。
 当然このノリを推進しているのは、エッジを丸めた太いベースのラインである。

 BABYMETALがライヴで披露しながら、未だ音源が発表されていない曲は数曲あるのだが、過日の黒ミサでも披露された楽曲(『Bubble Dreamer』とも『あわあわフィーバー』とも言われる)は、TAKESHI UEDAによる2曲目のBABYMETAL曲だと目されている。
 あまり大きな声では言えない事だがブート音源を聴く限り、確かにTHE MAD CAPSULE MARKETSゆずりのインダストリアル的ギターリフ・パートと、フレンチ・ポップスの様なコーラス部が交錯する作風が『ギミチョコ!!』と通底する。

 Brutalなメタル部と、Kawaiiなポップの共存させる方程式は、現時点ではTAKESHI UEDAのアプローチが最も判り易い表現として掴んでいるのではないかと思う。

 
 
 

 さて、歌詞と歌唱についてなのだが、言うまでも無くこの楽曲の歌詞に深読みは不可能である。ストレートに受け取るしかない。
 チョコレートが、麻薬の隠語の一つにある事から、欧米では際どい歌詞なのかと邪推する向きもあったが、隠語など何でも有り得るものなのだ。

 しかし、チョコレート自体には確かに習慣性、中毒性が皆無ではない。
 かく言う私自身は酒は飲まず、取り立てて甘い物好きではないのだけれど、チョコレートはほぼ毎日口にする。
「脳が糖分を欲している」という理解をしていて(脳の栄養源は糖質)、しかしその欲求に抑制なく食べ過ぎてしまえば、当然無様な事になってしまう。
 ティーンの女の子だけの悩みではない。

 
 

 私はこれまで『おねだり大作戦』を例外として、BABYMETAL楽曲の歌詞の多くに「当事者感を損なう大人の視点」の問題を指摘してきた。
 しかしアルバム楽曲以降にはそうした不満が無い。
『ギミチョコ!!』の歌詞には様々な工夫があって、引いた視点は無くリアルだ。
 女の子の日常の中では、それほど重要ではないテーマではあり、しかしそれが切迫する瞬間というのも間違いなくあって、そこを巧く切り出した歌詞になっていると思う。
 とは言え、それはBメロの部分のみに限るのだが。

 先ずは「あたたたたー」である。
 一体仮歌にはどういうものが入っていたのか知りたいものだ。
 このパートの役割は振付けと不可分なので後に送るが、音源のYUIMETALとMOAMETALの発声が何度聴き返しても飽きずに楽しめるのは不思議だ。

 二人はこのパートを、相当に楽しみながら録音したのだろう。
 特に1回目のテンションは高く、「やだやだやだ」からはほぼ笑い声になっている。
 しかし「Never」の伸ばしでは「h」音を無意識に出して(二人とも)音楽的だ。
 かつての「電波ソング」は聴き手を苛立たせる様な歌が多いという印象があったが、YUIMETAL+MOAMETALは決してそんな発声はしない。

 こういう「本当に楽しんでいる」感じの録音は、何回もテイクを重ねてしまうと新鮮さが失われて技巧的なものになってしまう。
 恐らくこの録音も僅かなテストで録音されたものだと思う。

 2回目になると1回目より少しテンションは落ちるが、今度は後発のYUIMETALが相当突っ込み気味、というより完全に突っ込んでいる。
 ダンスではあれほどジャストなタイム感を見せるYUIMETALなのに。
 これを補正する事も不可能ではなかったと思うが(二人同じマイクだったら無理)、そのまま収録されている。
 ディレクターが「ゆいちゃんまじゆ・・・」と思ったのかは判らない。

 MOAMETALは毎回微妙に音の高低や調子を変えており、これもライヴ感、リアル感を生んでいる。ソロになるとMOAMETALは途端に自由になる。『おねだり大作戦』の「おいしいもの」と「だーい好き」の間には絶妙なタメを作る。

 しばしばBABYMETALはまだよく知らない層には「作られた」「やらされている」感というものが見えない壁となってきた。
 私自身、昨年の12月まではそういう感覚を抱いていたのだ。
 しかし、そうした「予断」を払い軍門に降ってみると、BABYMETALの本質は、三人のポテンシャルありきのプロジェクトであって、勿論そこにはプレゼンテーションという大人の演出はあっても、パフォーマンス自体は全く「やらされている」ものではなく、彼女達自身が引き寄せているものだという事が判るのだ。

『ギミチョコ!!』トラックでの歌唱パフォーマンスは、こうした事実を端的にリスナーに伝えるものになっていると思う。

 確かに、「あたたたたー」といきなり来られたら、「そっ閉じ」する人も多い。
 しかし、他の動画を一通り見てから再度『ギミチョコ!!』に触れると、BABYMETALという存在の持つユニークなエンタテインメント性が見事に結晶化したプログラムだと認識する。このプログラムの意味合いはそういうものだったと思っている。


 Bメロの歌であるが、猫の目の様に態度が変わり、「いいよね?」「なんです」「よこせ」と一貫しておらず、そこがリアルだ。
 チョコレートに限るものではなく、女の子の「その時に思っている心象」は気まぐれに変わる。しかし根底にあるのは「チョコレート大好き、食べたい」なので何ら矛盾は無い。
 自分がそれを食べる事の正当性をあれこれと検討しているだけなのだ。

 珍しくこの歌詞は、音韻重視の言葉選択が行われている。
「チョコレート」の「ちょ」が「ちょっと」(『ド・キ・ド・キ☆モーニング』との相関も感じさせる)。「Weight」と「Wait」、「だけど」「でもね」「だから」で前段をチャラにしていく話法など。

 その中でも問題なのは冒頭「C!I!O!」である。
 実際に歌っているのは「チェケラ」(=Check it out.)で、二昔前のギャル語(日本語では)。
 本来の意味であるなら、センテンスの最後につけるべき「チェックしてみてね!」なので、これが頭に来る事自体が異常だ。

 昨年のワールドツアーではこのプログラムでCall & Responseが設定された。ギターソロの後、SU-METALは観客に歌わせる。
 ロンドンのワンマンではちゃんと歌う人もいた様だが、Sonisphereといった、BABYMETALをよく知らない観客が多い会場では、冒頭の「チェケラ」がよく判らず、全部「チョチョチョチョコレート」と歌っていた。
 SU-METALの発音が決して悪い訳ではない(そもそも英語として歌っていない)が、冒頭につく言葉として有り得ないので、観客は戸惑ったのだと思う。

 当然ながらこの言葉も「ちょ」発音の変化形として選ばれた言葉であり、意味など持たないのだという事も、今の海外のファンには周知されてきていると思う。

 過日の女性限定「赤ミサ」で、この曲のCall & Responseはとても綺麗な響きだっただろう。SU-METALの音域を男性が歌うのは難しいのだが、女性ならば無理なく聲を揃えられる。映像は無理でも、是非CD(公式ブートレグ的に)を発売して欲しいと心から願う。


 本稿で言うところのCメロは、恐らく仮歌に入っていたハナモゲラなフレーズが、もうこのままでいいと録音されたのだと想像している。

「Too too late! Too too late!
 Too too P!P!P! (Please! Please! Please!) Come on!」

 Pleaseではなく完全に「P」と発音しており、「Come on」は「来いや」というのとは逆に、唇もトーンも絞って、「コモン」に近い。これが実に味わい深い。



 

 ところで、私は2013年までのステージで展開された「紙芝居」のストーリー設定(Metal Resistance第1章など)について、あくまでその夜のショウとしての筋立てだと捉えており、あまり重視しないで論考しているのだが、過日の「黒ミサ」の演出の中で、ぬるい白塗りをした観客(Tシャツも規程のものではなくA-KIBAという紙芝居内に於ける“悪の組織”名)が舞台に上げられ、BOHに「イジメ、ダメ」と顔に大書されるという一幕があったという。ファンクラブ限定イベントだからかもしれないが、案外と紙芝居設定は未だ連続性を維持しているのかもしれない。

 紙芝居でシアトリカルに見せていた時代と武道館以降との差異については、この考察が興味深かった。


 紙芝居では「チェケラッチョコ」というアイテムが登場する。A-KIBAによって洗脳されたYUIMETALとMOAMETALが、SU-METALを誘惑する為に食べさせたという禁断の甘味だ。
『ギミチョコ!!』が初披露されたのは2013年12月のLEGEND "1997" Su-METAL聖誕祭だったが、それ以前のステージでも「チェケラッチョコ」という存在は紙芝居に登場していたのだろうか。


 つづく







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コメント

奇跡的に「黒ミサ」には参加出来ましたが、よもや「紙芝居」が"リアルな芝居"になるとは思いも寄りませんでした。キツネ様が召喚されて、観客をイジったり掛け合いをしたりと、こういう寸劇のような演出は今ままではなかったのではないでしょうか(限定イベントではあったのかもしれませんが、ネットでもそういう話を見たことがないので)。当日は、会場のスタッフさんも、コープスペイントやミサの衣装的な軽いコスプレで、人の誘導や会場整理などをやっておりました。あんな小さなハコでBABYMETALを体感出来たことはもちろんですが、この企画自体とても楽しめるものでした。「赤ミサ」での寸劇がどんなものだったのかが気になりますが、それは映像化されるまでのお楽しみデスね。

自分がベビメタちゃんを知るきっかけがギミチョコ
でした。
しかし、当然の如く「あたたたたーた」で視聴中止。
こんなの無理!って思ってました。

しばらくしてから、IDZとヘドバンを視聴する機会があり、気に入ってしまい、改めてギミチョコに挑戦。
最後まで聴けばどーと言う事は無い(シャアかよ)
今では、あたた わたた あってこそのギミチョコだと
確信しております。

私もギミチョコのアタタタタドキュンズキュンのいろんな解釈を見ましたが
アッと思わず膝を叩いたのはあれは虫歯菌の攻撃なのだと言う解釈です。
ユイモアがまとわりつくようにチョッカイをかけてる間、
すぅさんがザケンナとばかりに不快な顔をしてるのも腑に落ちる。

このギミチョコや君とアニメが見たいあたりが最もユイモアちゃんの合いの手の破壊力を堪能できるのではないでしょうか。自分には説明する術がありませんが、ユイモアちゃんのイノセントな声がなぜヘビーなサウンドとこんなにマッチするのか、本当に不思議です。

チェケラッチョコがいつから出てきたか。覚えてないですねー。
運営も、紙芝居は意味深な事をその場その場で並べてるだけで、繋がってるように見えて実は全然繋がってないとか、結構適当なんですよね。エヴァっぽい単語を出せば盛り上がるかな、エヴァよく知らないけど、とか。ぼんやりとしたイメージを伝えれば、後は見た側が勝手に深読みして補完してくれる、とかどっかで見たような。恐らく、今現在も深く考えて作ってるもんじゃないと思いますw
紙芝居は、曲数が少なくMCもないため、ライブ中の間が持たないから繋ぎとして生まれたもの。現在は曲数も増えパフォーマンスも安定してきましたし、その役目を終えつつあるのではないでしょうか。運営も考えるのちょっと面倒くさくなってきてるんじゃないですかねw ライブの最初と最後に煽りでちょっと流すだけでもいいかな、と。

> ※1
横から失礼。武道館以降のライブはFC含めすべて参戦しています。武道館前はわかりませんが、少なくとも武道館以降は、あのような客いじり→寸劇の流れはありません。KOBAMETALとファンが、音声だけとはいえ生で直接やり取りしたのは初と思われます。姿は見せないものの、いきなりダイレクトに話はじめたので正直驚きました。
ちなみに赤ミサにはツレが参加したのですが、「今日この場でFC入りを決めた猛者がいる」→右横の舞台上にファン召喚→大村登場→コルセットとかを直接プレゼント、という流れだったそうです。黒ミサはぶっちゃけ運営の仕込みw だったと思うんですが、赤ミサのヤオ/ガチは不明です。

ゆいちゃんの合いの手についての内部情報?

https://mobile.twitter.com/kirasova/status/430547106911113216

チェケラッチョコはLegendI、D、Zのどこか(Iかな?)で出てきたような。。パーティーではしゃいだYUIMETALとMOAMETALが食べて、メタルじゃなくね?→BLACK BABYMETALへ変身という流れがあったような気がします。

およそ1年前。

ギブミーチョコレートね…
お、揃ってるじゃん
オイ!ニヤリとしたぞ!ブラック ペコちゃん!?
あたたたーって、フレンチカンカンで、ズキュ~ンて、オイ!!
て、もう一発!?
森高?美形じゃん!
(中略)
ぱらっぱっぱっぱ、てハメルンの笛吹かい!?
・・・
完璧!完璧なパフォーマンス。だ…

カチ←リプレイする音

以上、中毒患者が生まれる瞬間でした。
翌日、その娘は舞踏病患者になりましたとさ。
妻「チョコレート、チョコレートって、もう☆△□」

さくら学院のPumpkin Paradeという曲の歌詞では、サビの頭が
 CHECK IT OUT! CHOCOLATE!
 GIVE ME A CANDY!
です。
ハロウィンをテーマにしていて、要はお菓子よこせ!です。
ほぼギミチョコと同じですね。

英語はてんでダメなので、詳しく突っ込むつもりはありませんが、意外と普通に使われる用法なのでしょうか?
普通の用法でないとしたら、多少なりともこれらの歌は片方がもう片方に影響を与えたかもしれません。発表時期も非常に近いですし。
(Pumpkin Paradeは2013/10発売のCDに入っている)

いつもながら興味深く読ませていただきました。特にBPMのことについてはとても参考になりました。

ところで Check it out! という言葉ですが、「おい、聞いてくれ!」とか「これマジやばいぜ!」のような意味で文頭に使われることもよくあるので、用法として特に異常ではないと思われます。

英語として自然に使われている表現だからこそ、外国でも違和感なく受け入れられているのだと思います。

「チェケラ」って、普通にラップなんかでは、冒頭に持って来るんじゃないですかね?
うちでも一つ作りました。

チェケラッ チェケラー
プッププ プッププ
プロオナラー

いつも強気な嫁が放庇が止まらない時があり、娘と二人で作ってゲタゲタ笑いながら唄う唄であります。
嫁はバツの悪い顔をしております。

YUIMETALの「わたたたた〜」が突っ込んで聞こえる(3回目も)のはリズム感というよ
り滑舌の問題かと思います。歌詞は「わたた〜」なのに「わだだ〜」に聞こえるし(そ
こが良いのですが)。それよりMOAMETALの滑舌の良さが際立っていると思います。
2回目と3回目では「あたたたたたたたー」と「た」を7回続けて歌っていますが、
このテンポに合わせて歌うのは難しいと思います。自分がやると噛んでしまいます(笑)。

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