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2015年4月 5日 (日)

『メギツネ』考 2

Megitsune

 本稿執筆現在、東京は桜が散っている。
 今回はCD音源のサウンドと歌唱について。

「さくらさくら」を引用したダブステップ・パートが『メギツネ』アレンジの眼目であるが、冒頭にもその一部が流れる。
 日本人ながら、この「さくらさくら」のメロディにはエキゾティシズムを感じる。江戸時代の箏の練習曲だったそうだが、イントロではサンプリング音源により箏の音も聴かれる。

 BABYMETAL楽曲としては珍しく16ビートなのだが、勿論フロアで踊れる様なダンス・ビートではない。
 リフがギターではなくシンセ・ブラスというところが、元々この曲のデモではがEDM系の作りになっていた片鱗だろうか。
 Aメロ、SU-METALのヴォーカルは極めて無機的な歌い方をしており、ヴォコーダーとのユニゾンが無機性を更に演出している。
 YUIMETAL+MOAMETALの「わっしょい」が躍動感と生命感に溢れているのと好対照だ。
 このAメロは一度だけで繰り返さない。

 SU-METALのヴォーカルはBメロから本腰が入る。
 音源のヴォーカルは、他の楽曲と異なる処理がされている。かなり強烈なコンプレッサーが掛かっているのだ。
「リミッターが掛からない」のが中元すず香の歌であるのだが、それを徹底的に潰す(一定音量に揃える)とこういうローファイ(ハイファイの逆)・トラックになる。暑苦しさとか迫力を出す場合に使われる手法なのだが、率直に言ってBABYMETALのトラックには不要な処理だった。

 この楽曲の歌メロも、なかなかに難度の高い(音符に♭とかナチュラルとかが一杯ついてそうな)メロディだ。しかし単に奇をてらうものではなく抒情的で綺麗な流れではある。

 私はSU-METALヴォーカルの魅力の一つにレガートの巧さにもあると思っていた。
 それは『ド・キ・ド・キ☆モーニング』から顕在している。3回目の「ちょ待ってぇ」の「てぇ」といったところだ。彼女はいつもこういうところは正確だし、スラーで繋げられた音符の動きを一層魅力的に聴かせる。
 Bメロ歌い出し「いにしーえーの-」、SU-METALのレガートの魅力に、先ず惹かれずにはおれない。

『メギツネ』には演歌的な「しゃくり」が最初から歌メロに組み込まれていた。「ああ~」という箇所だ。
 SU-METALは「はじめてこの曲の録音で歌唱指導をされた」という様な事を言っていたが、恐らくそれは「津軽海峡冬景色」の参考音源を聴いた程度ではないかと思う。

 この歌入れはさくら学院2012年度卒業式(2013年3月末)の翌々日に行われた様だ。

 素直な歌い方で人の心を動かしてきた中元すず香に、演歌調メロディを歌わせるというのは、相当に勇気が要る事だった気もする。
 当然ながらSU-METALは、過大な情感を盛り込まずストレートに歌いこなした。

 私が少し気になっているのは、「幾千の」の「ん~」が「ぅ~」と歌われるところなのだが、味と言えば味である。

 この曲(音源)を聴き返すと、いつも私はメイン・ヴォーカルよりも、その旋律の上下をトリッキーに行き来するハーモニー・ヴォーカルの方に聴き入ってしまう癖がついた。
 これまでの楽曲でも、単純な3度のハーモニーはSU-METALがつけていたと思うが、『メギツネ』のハモりには魂が籠もっている。
 ライヴでもこのハモりは流されるのだが、SU-METALの生のヴォーカルとはやはり質感が違い過ぎている為に味付け程度に留まる。
 CD音源ならではの愉しみだ。

 曲全体が未だ半分も行かない内に「さくらダブステップ」に突入する。
「さくらさくら」のメロディで「キツネ キツネ ワタシハメギツネ オンナハジョユウヨ」と歌われる。

 中間部はYUIMETAL+MOAMETALが引っ張る。
 祭りの囃子が「せいや」ではなく「そいや」なのは、やはり一世風靡セピアの楽曲からインスパイアされたのだろうか。

 東京の祭りでは古来「わっしょい わっしょい」だったのが、暫く前から地方の影響で「せいや せいや」が優勢になりかかった。しかし伝統を守ろうと近年は戻されているところが多い。
 一世風靡セピア『前略、道の上より』の歌詞を見ると
「素意や 素意や~」と漢字が宛てられていた。阿波踊り的な振りが一世風靡セピアとBABYMETALでは共有される。


「ソレソレソレソレ」と盛り上げるYUIMETAL+MOAMETAL。
 そして再びBメロから歌が再開するが、落ちサビ的になった後にブレイクがあって、

「なめたらいかんぜよ」

 という台詞となる。

 高い音域でずっと歌っていたのに、ここでは可能な限り低く声を出そうとしており、しかし紛れもなく少女の声なので「どきり」とさせられる。

『鬼龍院花子の生涯』(1982)という映画が公開される時、夏目雅子のこの台詞を言う場面は盛んにテレビスポットで流された。
 勿論SU-METALはそんなものは見ていまい。
 この台詞は土佐弁であるが、宮尾登美子の原作小説にはなく脚本家の高田宏治が書いたものだった。

 そこからはCメロの繰り返しとなるが、音量バランスはもう、メイン・ヴォーカル(+ハモり)とドラムだけというくらいに極端なミックスだ。
 この為のヴォーカルにコンプ・リミッターを掛けていたのかとも思える。

 それにしても何と圧倒的な説得力を持つ歌声だ。
 これについてだけは私の言葉では表わし難い。
 どんなエフェクトも無効化してしまう様な存在感である。
 歌詞だけを見ると疑問を抱くところも、この歌唱によって完璧に納得させられてしまうのだ。
「乙女」の歌ではあるが、少女というよりも「女」に近いこの歌を、この時点でSU-METALは歌いこなしていたのだ。



 

 SU-METALも、YUIMETALとMOAMETALの祭り囃子も「愉しくて仕方が無い」様な表現では全く無い。ある種の決意があり、切迫感を以てそれにひたすら邁進している表現にしか聞えない。
 このトラックを許に、MIKIKO-METALは更なる高い表現へ向かう。



 つづく









 誕生日コメントを多く書いて戴き、大変ありがとうございました。
 こんなに多くの人に祝いを述べて貰ったのは初めてかもしれない。
 昨日は映画美学校の生徒達が人の誕生日にかこつけて花見を開催してくれた。

 私が赴くと、生徒らが自作の面を被って迎えられ、いきなりゲンナリ。

20150404_162225

 ケーキがまた羞恥プレイなアレで、これは流石に公開出来ない。まあ感謝はしている。

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コメント

女ギツネというと、実写版「ゲゲゲの鬼太郎」で小雪さんが演じた「天弧」を思い出します。なかなか妖艶で雰囲気が出てると感じましたね。
子供向けだと割り切って見れば、悪くない映画だと思います。
しかしエンディングだけは妖怪達のダンスパーティという趣で、苦し紛れに取って付けたようなウヤムヤ感を覚えたものです。
しかして、このダンスの振り付けがメギツネに通じる物が有るように思います。BGMも和ロックテイストですしね。あるいは元ネタの1つになっているのかも知れません。
もっとも、更に遡れば、M.Jのスリラーにたどり着くのかと思いますが。

冒頭にキャプチャされてる画像、3人が”入っている”瞬間が捉えられていてとても良いです。構図も決まってますね。

楽曲やステージパフォーマンスについて語っている内はまだ良い。
ルックスについて語り出すとかなりマズい(笑)

すごく納得しながら読ませてもらいました。
カラオケで歌う人はこの記事読んでから
歌うとうまく歌えるような気がします。

はじめまして、1月から読ませて頂いてます。wowowのきつね祭りを何度か見ていて
ミドルパートの 「きつね〜きつね〜」 の所でyuimetalが歌って居るのに気付きビックリ‼︎。
しかも「わたしは〜」の所でmoamemtalがハモっている!短期間で進化し過ぎでは…。
しかし冷静になって考えたらyuiとmoaの声の定位置の違いで口パクと気付きました。
(録音パートはセンター、ゆいもあの声はLRに振る。yuiが珍しくR側でしたね。)
「4の歌」のライヴでの歌唱力もかなり安定してきてる様なので、そのうち本当にプレレコーディングパートをyuimoaがライヴで歌いハモる日が来る気がします。

小中先生をもってしても、言葉では表現しきれないSU-METALの歌声・・・。
凄いですね。

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