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2015年4月21日 (火)

『ギミチョコ!!』考 1


Release: 2014/02/26 1st. Album
Credits: 作詞:MK-METAL・KxBxMETAL 作曲:TAKESHI UEDA

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 おそらくはこのプログラムも曲先行で作られたと思われる。先ずは曲トラックから検討したい。

 その前に、『ギミチョコ!!』については昨年早い時期に、宇都宮泰さんという音楽家・放射線技術啓蒙家の方がTwitterで考察をされており、広く読まれた。私も暮に読んでいる。
 書かれている事に全て首肯してはいないのだが、先にそうした検討をされた事には敬意を表したいと思う。このまとめが判り易く読める。
 宇都宮氏は先ずMVから入って音源を評価し、その後にファンカムのライヴ映像を見るという経緯で書かれていたが、その後ステージでは生歌である事に率直に驚かれて「70年代のロックバンドか」と漏らされていたのが印象的だった。

 若者ではない世代がBABYMETALを好きになる契機は様々あれど、BABYMETALのやっている事に驚き、本気で好きになる理由の本質はやはり、「生でやっている」事なのだと思う。
 アイドルが生歌で歌う事自体は、今や例外的にはなってはいてもずっとないものではなかった。単に生であるという事ばかりでもない様だ。これについては試論のまとめで再度考えたい。



 シングルの為ではなく、アルバムの為に制作された楽曲だ。
『ギミチョコ!!』はある面で、デビュウ曲『ド・キ・ド・キ☆モーニング』での取り組み方に再度挑んだものだと思う。
 というよりも、「アイドルとメタルの融合」を改めて再定義し直したと考える。その理由は大きく3つ。

¶ヴォーカルは等身大のアイドル歌唱
¶手加減しないメタル・サウンド
¶脱構築的曲構成

 これらが共通項として考えられ、更に『ド・キ・ド・キ☆モーニング』ではあまり大きくフィーチュア出来なかった、Screaming=合の手を今回は最大限に導入する。
 そんなプランだったのではないか。

 何よりも曲構成はラジカルだ。
 イントロからAメロまでシンプルなリフで、完全にロック・サウンド。短いタイムで即座にリスナーを乗せる。
 しかしAメロは「あたたたたーたたーたずっきゅん!」なのである。フィーチュアどころがほぼメインヴォーカルをMOAMETAL+YUIMETALはここで担う。
 この曲の歌入れ時、SU-METALはAメロを仮の物だと思い込んでいたという。無理も無い。

 SU-METALが歌うパートは、Bメロで、ではサビはというと「Para Pappappa~」なのだ。(勿論解釈にもよるが)
 え、ここがサビ?と思う間もなくリフに戻り、その後ギターソロ(があるところが、かつてのMADの楽曲的には異質かもしれない)に行くので、紛れもなくそこはサビ(コーラス)なのだ。(勿論ブリッジだという解釈もある)

『Catch Me If You Can』も相当にラジカルな構成だったが、『ギミチョコ!!』は更に突き進んでいる。

 え? 何この変な曲――、そういった感覚を与えるもう一つの要素がコード進行だ。

 Bメロのコードは4小節の繰り返しで、一聴するとポップスでは極めて普遍的な循環コードだという印象を与えるが、最初と最後のコードは同じなのだ。

Emaj7 Caug C#m7 Emaj7 (ベースはE  E  C# E)

 全く不自然ではなないのだが、「ちょっと変」というさじ加減が利く。
 よくDJが既存のトラックを任意の範囲でループする、あの感覚に近い。

 

 ポップスはリスナーに「こういう感じ」という全体像を把握させた上で聴かせる音楽だ。
 しかしこの曲はAメロで先ず度肝を抜き、しかしBメロでは聴きやすいポップスだと油断させ、しかし来るべくサビは加工音声のスキャットという、先読みを逸らす展開をする。

 しかしギターソロの後、落ちサビ的なBメロのリフレインから次第にオケも盛り上げ、「Please!」で最高潮に達するという、構造的には美しいポップスともなっている。
 この構造が先ずリスナーの「気になる」ものにしている。



 ノイズが立ち上がり「Gimme Chocolate!」というタイトル・コールがあると、ノーカウントでイントロが始まる。
 以前にも述べた様に、この曲はBABYMETALとしては唯一、一曲を通してベースの低音が存在感を放っている。
 ドラムは割とチューニングが高く倍音の少ないタイトなサウンドなので、メタルっぽくないと思っていたのだが、THE MAD CAPSULE MARKETSのドラマーはまさにこういう音を叩いていた(この楽曲は打ち込みだと思う。トラック・メイカーがイメエジするサウンドのリソースについて述べた)。
 そこへモノフォニックなシンセのフレーズ。ポルタメント(音と音の間をうにゃっと繋げる)が掛かっているレトロな音だが、これが収まるべきところに収まらずコードを無視して下がっていくカオティックなフレーズだ。適当に弾かれたものかと思えば、これが律儀にリフレインする。
 これも一種の中毒性を誘発する因子の一つだろう。

 歌頭に向かって舌を高速で鳴らすヴォイスも聞え、デスまではいかない男性ヴォイスが「Give Me Give Me」盛り上げ、さあ歌が始まるぞというリフで期待値を上げる。
 左右のギターは異なるリフを弾いている。右はひたすら刻みで、左チャンネルではシンコペーションしている。個人的には好きなアレンジだ。
 しかしそこで出てくるのが――、

「あたたたたた ずっきゅん! わたたたたた どっきゅん!」

 歌詞にはこう記載されているのだが、実際に歌われているのは

「あたたたたーたたーたたた ずっきゅん! 
 わたたたたーたたーたたた どっきゅん!」

 である。いやだから何という訳では無いのだが。

 MOAMETAL+YUIMETAL(普段私はBABYMETALではY+M、それ以外では最愛+由結という順で書いているが、ここでは歌う順で書いている)のパートは、『イジメ、ダメ、ゼッタイ』などの様なオプショナルな扱い(ステレオ左右に振り切る)ではなく、センター近くに定位している。
 確かにリヴァーブは掛けられていないが、ダイアローグ扱いではなくヴォーカルとしてのEQに整えられている。
 言いたいのは、本当にただの「飛び道具」にするのであったらこういう音質にはなっていないという事だ。

 SU-METALが歌い出すBメロ(あくまで本稿での区分)になると、ギターはぐっと下げられる。
 SU-METALの声は透明感を活かしたEQで、涼やかで力の抜けた甘い歌声になっている。ギターがフルレンジで目一杯になっていたらこうは聞えず、メリハリの効いたアレンジだ。
 BABYMETAL楽曲では珍しく、ヴォーカルがダブル(以上)重ねられている。ポップスでは常套な耳馴染みのサウンドとなっている。
 この歌声には当然AutoTune感はゼロである。

 しかし本稿で言うところのCメロの前半は、AutoTuneによる無機化というよりも、YUIMETALかMOAMETALの声を一音毎にサンプリングして、それをメロトロン的に再生したかの様なサウンドだ。
「Too Too Late」からはSU-METALらしく聞える(勿論あくまでそう聞えるだけで、全部SU-METALなのだろうが)。

 リフに戻った後にギターソロとなる。
 このギターソロは個人的にはBABYMETAL楽曲中、一番好きかもしれない。
 超高速だがスウィープなどを使わずフルピッキング。単に速さだけを誇示するものではなく、ブラックモア的なペンタトニック風味も味わえ、ツイン同士がハモってからオクターヴで駆け上がるという様式美。更にそこからはDigiTech Whammyという飛び道具で悲鳴の様に叫ぶという構成が見事だ。
 Whammyはシーソーペダルでオクターヴや音階を上下させるエフェクター。昨年私はライヴでSteely Dan "Kid Charlgagne"のラリー・カールトンのギターソロをベースで弾いたのだが、どうしても楽器の音域的にオクターヴを行ったり来たりせざるを得ず(多弦のフレットレスは私には指の長さ的に弾けない)、Bass Whammyを買おうか一時真剣に検討した。しかしこの曲だけの為にドデカい筺をボードには入れられず断念したのだった。


 曲の構造として意表を突きながらも、ポップミュージックとしては実に練られたものだと思う。
 しかしこの曲の最大の特徴には未だ触れていない。
 それはBPM=220(概ね)というテンポである。


 つづく



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コメント

毎エントリーのことですが、今回も濃密なテキストを堪能致しました。エンターテイメント全般への深い造詣、感じ入ります。これだけ豊富な切り口を提供してくれる企画というのもそうそうないと、テキストを読みつついつも嬉しい気持ちになっています。ここでの一連の論考が、今後、新書や新刊本等の形で世にでることがあれば、必ずや購入・拡散させて頂きます。

次回も期待しております。

>BPM=220(概ね)というテンポである。
おーいよいよ来ましたね。Steely DanもCarltonも,どーでもいーです。これですよ。これをどのように料理したのか,超楽しみです。

元MADの上田氏がベーシストなせいか、ギミチョコと泡はベースがいい感じですよね。

ギミチョコ!を聴いて真っ先に浮かんだのがMetallicaのFight Fire With Fireでした。
頭打ちのスネアが攻撃的なリズムを生み出し、あたたたた〜たでヤラレました(笑)

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