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2015年4月16日 (木)

『おねだり大作戦』考 2

Ay9pst2

 BLACK BABYMETALはこのプログラムを演じる時だけ、ガイコツが描かれたフーディを着る。
 SU-METALの『紅月』に於けるマント、『BABYMETAL DEATH』で登場時のフード付きタオルと、BABYMETALの衣装替えはミニマムだ。
 ただパーカーを着ているだけなのだが、YUIMETALとMOAMETALのシルエットは劇的に変わる。一層幼く見えるのだ。
 最近のパーカーにはストーンが一杯ついており、シンプルでもゴージャスである。

 このプログラムの振付けは最初はそうでもないかもしれないが、中盤後半に行くに従って激しくなる。しかも1パートが長い。
 当初はリップシンクで演じていた二人だが、それでもこのプログラムは相当に疲弊するものだった様だ。
 しかしそこで、ではもっと軽くしようという修正がされる筈もなかった。そればかりか昨季からは生歌で演じる様になる。

 音源は、ライヴで演じる事をあまり配慮されずにトラックが作られた。ヴォーカル・パートはずっとオーヴァーラップしており、当然ながらプリ・レコーディングされた部分を併用している。これが、初見にはリップ・シンクか「被せ」かと錯覚させる。
 しかしどう見てもメインのヴォーカル部は生で歌われている事が判り、動画の視聴者は驚かされる。ニコニコ動画のコメントにもそうしたリアクションが如実に記録されていた。



 ギャングスタ・ラッパーの様にフードを被って腕を組み、不敵なアティテュードでステージに現れた二人は、ギターリフが始まると持っていたタオルをぶんぶん振り回しながらステージをスキップして走り回る。
 ライヴ会場でタオルを回す風習は、日本ではレゲエのコンサートから始まった様だ。
 Jpop、アイドル・グループなどでも特定曲でそれを行われる風習がある(つまり、観客は皆それ用のタオルを持ってきている必要がある)。
 BABYMETALはステージ上だけで回されるのだが、最小限のギミックで小さな彼女達の動きが大きく見えるという、極めて有効な演出だと思う。

「作戦1(ワン)」
 ここからの二人のダンスは典型的なBガール・ヒップホップなのだが、『いいね!』の「~風」とは次元が異なる。
 実際のビート以上に裏拍(だけ)に乗って全身で踊る。しかも単純な繰り返しなど例によって無い。「パパ大好き!」と声を上げる時には満面の笑みである。

「嘘でもいい ほめまくれ」
 Bメロに入ると二人は上体をぐるぐる回しながら、互いの間隔を広げていく。

 ストリングスに乗ってウィスパー・ヴォイスのSU-METALが“悪魔の”囁きを言うパートになると、2人は2小節交互でダンス・ソロを見せる。ここは「気取った女の子」らしい振りになっている。

 そして、あの台詞だ。

 武道館のライヴCDを最初に聴いた時、思わず吹き出した。
「わたし、パパのお嫁さんになるんだ」の直後の「うぉー」という歓声に。
 さくら学院ではないが、BABYMETALのメイト達もこのプログラムの時には「父兄」になる様だ。テッド・ジェンセンがマスタリングした「赤い夜」は、歓声があまり大きくないのだが、ここばかりは目立っている。

 すぐさまバンドがヘヴィなビートを叩き出すが、この時の、特にMOAMETALが見せる凄まじくパワフルな、モーションというよりもアクションには瞠目させられる。
 同じイギリスでの公演でも、The Forumの時まではそれ程までに爆発的ではなかった。しかしO2 Academy Brixtonでの凱旋公演であると、もう凄まじいものになっている。
 彼女達が魔術の様に突如ステージ上で爆発させるエネルギーは、そこにいる観客ばかりではなく、ファンカム映像を見ている我々にまで直撃を与える。
 あまりにもそこにパワーを使ったからか、Brixtonではその後の「最強の 最高の」で声が出なくなっている程だった。

「Let's go! Let's go! おねだり作戦」
 ここで初めてフードをとり、再びタオルを振り回し身も蓋もない格好のダンスは、まるでアニメーションのキャラクターの様だ。
「最強の(オー!) 最高の(オー!)」
 ここで3連符の振りが入る(両腕をぐるぐる回す)。
 ラップ部ではないけれど、ここでラップらしい符割がモーションで入る。ぬかりなし。
 それにしても、流石にブレス位置が少なすぎるので、「天使の笑顔にだまされそうだww」「ちょーだいちょーだいおねだり作戦」など終わりのフレーズでは息が切れる寸前だ。

「お願い!! (最後の) お願い!! (いつもの)」から、バックステップで「とんとんとん」とリズムを刻み出す。バンドの演奏するトラックに、ダンスでリズムを足している効果が生まれる。
「お願い! お願い! 結婚するならやっぱり『パパ!』」
 ここからの振付けの情報量も多い。二人で手を合せたり、大きく身体を折り曲げたり、「お願い」ポーズは片足でバランスをとった小刻みなジャンプをしながらだ。
 これをニコニコしながら、歌を歌いながらやるのだから恐ろしい。

「小悪魔キメル!」
 音源の時から、彼女達は「キメ!」と言っている様に聞える。

 どよーんとした間奏部、二人はまるで仲の良い双子が喧嘩をする様な威嚇ポーズをし合う。
 その後、あの「だって女の子だもん」から始まるダイアローグ芝居となる。
 台詞自体はやはり、大人が書いた「あざとい」ものなのだが、それを最早感じさせないくらいの演技だ。
 MOAMETALの最後の台詞「おいしいもの、だーい好き」を言う前から彼女は既にフードを被る準備をしている。顔をキメるよりも、次のパートに頭からきっちり入る事を優先させているのだ。

「One for the Money, Two for the money, Three for the money, Money, Money, Money, Money」
 身体を傾がせ、手の甲側を見せながらルーズな動きをしている様でいて、8拍目の動きはキレキレだ。ところが――、

「買って! 買って! 買って! 買って!」
 それまでのアダルトなダンスから一瞬にして子ども化し、二人はタケノコ・ジャンプ。

「ちょーだい! ちょーだい! ちょーだい! ちょーだい!」
 揉み手をしながらお立ち台に立って観客に媚びる。

 これが繰り返されるのだから、まあカオスとしか言い様が無い。
 昨年の欧米の公演では、このパートになるとYUIMETALとMOAMETALの顔を印刷したフェイクの100$紙幣が観客によってばら巻かれ、混沌は一層深まった(法的に危うい行為ではあるのだが)。
「買って!買って!ちょーだい!ちょーだい!」の音源では二人一緒に叫んでいるのだが、一番最後の「ちょーだい!」を注意して聴くとヤケクソな声になっている(そういうアクセントをつけてくるのは、やはりMOAMETALだろう)。録音時、彼女達は全部これを歌ったのだ(幾つかのテイクは録られただろうが)。

 ライヴでは流石に交互で担当が振り分けられ、先にMOAMETAL、続いてYUIMETALが担っている。
 このパートの終わりで二人はお立ち台に立つ。

「Let's go! Let's go! おねだり作戦」から再びCメロが始まる。

「お願い!! (最後の) お願い!! (いつもの)」
 あの小さな台の上でバック・ステップをするのだから、いつも見ていてハラハラしてしまう。あともう数十センチでもズレたら落ちてしまうのだ。

 しかし――、『BABYMETAL DEATH』や『4の歌』の舞台を右往左往する場面でもそうである様に、彼女達のステージ空間把握能力は常人のレヴェルではなさそうである。

 凄まじいまでの運動量を要求するプログラムだが、最も戦慄すべきはコーダのパートだ。
 小悪魔をキメられると、二人はゆっくりとステージ後方に向かい歩きながらフードを被る。おもむろにターンをして、曲終わりの最後の音でタオルを首に掛け、暗転。
 二人はこの「余裕のある」演技を、全く呼吸を荒げる事無く平静にやってのけるのだ。
 プロフェッショナルだとしか言い表せない。



 

『おねだり大作戦』は、BABYMETALが到達した一つの極みである事に疑いはない。
 中学生の少女二人が演じるプログラムとして、日本に於いては過去最高のエンターテインメントになったと言えよう。
 プロデュース・チームはBABYMETALに「何」を演じさせるのかに於いて、最早何の迷いも無くなっているとも感じる。
 そして何より、才能と容姿に恵まれた少女が、とてつもなく努力とトレーニングをすると、これだけのものを見せるのだ。
 この歳になって、そういう原則的な事実を知ることが出来たと思っている。

 主題はブラックであっても、このプログラムが観客に与えるものは多幸感だ。
 ニヤニヤとした笑みをどうしたって浮かべてしまう。そんな娯楽は、少なくとも私には過去に経験がない。

 高校生となったBLACK BABYMETALの二人が、今後このプログラムを続けて演じてくれるのかは判らない。ファンとしては、演り続けて欲しいと思うばかりだが。






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コメント

曲名については三段活用かと思ってます

元ネタに疎く、はじめに教えてもらったのは
Limp Bizkit  
Take A Look Around
http://youtu.be/chpO-itWEuw

のちに曲調は My Generation のほうが近いとも教えてもらったのですが

おねだり大作戦 - Take A Look Around - MISSION:IMPOSSIBLE - スパイ大作戦
http://youtu.be/erUcduVIt2A

こう来たか!と思わず唸ってしまいました。

Legend I あたりでは最後にタオルを客に投げ込んだりしてて、なかなか扇情的だった。
今やったら怪我人が出るだろうなあ。

>>武道館のライヴCDを最初に聴いた時、思わず吹き出した。「わたし、パパのお嫁さんになるんだ」の直後の「うぉー」という歓声に。さくら学院ではないが、BABYMETALのメイト達もこのプログラムの時には「父兄」になる様だ。テッド・ジェンセンがマスタリングした「赤い夜」は、歓声があまり大きくないのだが、ここばかりは目立っている。

自分もこの部分は気になりましたが、マスタリングの際にいたずら半分で意図的に大きくしたのかなと思ってました。本当のところはどうなんでしょう。

はじめて聞いた時、「嘘でも良い 褒めまくれ!」の一節には頭を鈍器で殴られたような衝撃(笑撃?)を覚えましたw
海外のメイトが特製の紙幣をばら撒いたというエピソードは微笑ましくもあり、同時にこの歌の楽しみ方を非常に理解しているなと感じます。
テッドにもそこは十分に伝わったからこそ「殺し文句」の歓声を生かしたのでしょう。

振りも歌詞もなかなかインパクトのある楽曲で、さすがにBLACKBABYMETALならでは。
このまま海外に出して大丈夫かなとの心配は無用だったようです、ライブ全曲をさんざん
見ていた写真家のダナが一番好きな曲に挙げてたくらいですから。

この曲に関して年齢的限界がよく取りざたされますが
芸能の世界において
幼女の役は幼女と限ってるわけではないので
彼女達のパフォーマンスが向上する限りいつまでも
演じてよいものと考えています。

>この曲に関して年齢的限界がよく取りざたされますが
↑の方に同意いたします。

今回のReading&Leadsを見ていても、
彼女達3人は常識の範疇を逸脱し
新たな芸能世界を構築する存在に成りつつあると感じています。

東京ドームでまさかの「おねだり大作戦」ありましたね。
もう聞けないんだと思っていたので本当に嬉しかったですし
何より今まで見たもののどのライブの時よりも、
YUIMOAの声が可愛くそして歌もキレイだった気がします。

この東京ドームのクオリティであればライブCDを出せると思うんですが
それはさすがに期待しすぎですかねぇ。

「あたし、パパのお嫁さんになるんだ」の部分は
2013年10月8日 「BABYMETALのオールナイトニッポン」の中で
MOAが、リスナーのリクエストに応えてしゃべった台詞、
「あたし、パパのお嫁さんになるんだー」に由来しているのだと
想像しています。

LoGirlでねねどん(?)が語った「四次元五次元行ってみたい」が
どきどきモーニングに採用されたのと同じですね。

曲の歌詞にこういうストーリーを織り込んでいく手法は賢いと思います。

個人的には、SisAngerに
MOAの「寝てんじゃねぇ!豚野郎!」を入れて欲しかったものです。

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