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2015年6月19日 (金)

『ギミチョコ!!』考 4

 楽曲についての論考からすっかりと間が空いてしまって、なんとも情けない事になってしまった。
『ギミチョコ!!』について、あとは振付けとライヴでのパフォーマンスに触れたら完結出来るのだが、取り敢えずは冒頭部から。


 BABYMETALのプログラムは、大きな変更が途中で加えられる事はあまり無いが、ディテイルや表現では少しずつ変化があり、それらは概ねが進化したものだ。
 2012年までの子どもの体格だったYUIMETAL+MOAMETALには、MIKIKO-METALによって「子どもの体重だから可能な」身の軽さ、俊敏さを前提にした振付けがなされていた。
 以前書いた様に年齢相応に成長した彼女達が、当初と同じ振付けをこなすのは想像以上に困難がある筈である。
 成長をするにつれ、振付けが無難になっていく事も必然なのだが、実際に成長によって変えられたのは、『ヘドバンギャー!!』での2回目のSU-METALのシャウトで後方に吹っ飛ぶアクションが、ツツツと後退する様になった事くらしか見当たらない。
『メギツネ』など、体躯の小さな頃に振付けされた同じパフォーマンスを、現在の体格差の少ない三人が演じると、もう見栄えも迫力も圧倒的に異なるものになっている。
 そもそもしかし、小さな時に出来ていた事自体にも改めて感嘆するのだが。

 ユニット発足時から三人の体格差は近くなっている。
 振付けもそれを踏まえて、かつて無い様なモーションも導入された。
『ギミチョコ!!』は2013年中盤以降に作られたプログラムである。

 このプログラムの始まりは、三人が斜め前方を向いて直立するポジションとなる。
 Aラインの衣装と、背筋を伸ばした三人の姿勢を美しく見せる。

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 シンセのSEが立ち上がると、三人は右掌を耳に当てよく聞こう(=観客によく聞いて欲しい)というポーズをとる(この時、MOAMETALは一人だけニヤリと笑う)が――、『Give Me Chocolate』というタイトルコールと共にそのまま身体を前方に倒していく。

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 Michael Jacksonの「Smooth Criminal」に於けるパフォーマンス「Zero Gravity」の引用だが、マイケル(とダンサー)の場合は靴の踵にフックの仕掛けがあり、かつMVではワイヤーも併用していたのだ。
 三人は何のギミックもなく倒れかかろうとするので、冒頭からドキっとさせられる。
 しかしギターのリフが鳴る曲頭になるや、片足をがっしりと踏みだし、全力で片腕を振り回し始める。THE WHOのピート・タウンゼンドのギター・プレイを想起させるが、4拍目から一度反動させてから左右にグラインドしつつ正面に向くや一斉に跳躍する。
 ノーカウントで始まるこのプログラムを、最も驚きを以て見せる導入シークェンスである。

 BABYMETALの振付けには多くの「跳躍」が盛り込まれている。
 この事のみに於いても、BABYMETALのパフォーマンスはアイドルでもポップでもなく、当然ながらメタルでもないオリジナルな表現だ。これについてはまた稿を改める。

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 ここまでだけで、実にドラマティックであり、一瞬にしてロックの激しさに畳み込む視覚的な構成が見事である。

 ギターリフのビートの中で、三人はグラインドしながら上手側からタムタム・ロール(8分刻み)の様に叩き回して、ドアを激しくバンバンと叩く。
 音源にもライヴ演奏にも無い、振付けだけで表現されているパーカッション的なフィルインであるが、「ドアを叩く」という振りは「心の中の何かを主張したい」という情動が込められている。

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 シンセのヴァンプが始まると、腕を伸ばしながら仰け反る動作となる。
 前方に向き直った三人は、指をぐるぐると回しながら上体を回す。
 混乱している様を表わしているが、基本的に無表情(MOAMETALだけはニヤリと笑っている)。自分自身が混乱している様を客観視しているかの様な表現だと思う。
 この楽曲のBPM220で踊る事は普通に考えても難しい、というよりも、そんなテンポの曲でダンスを踊る事自体が常識外だ。
 MIKIKO-METALは一拍毎2ストロークで正確にリズムを体現させている。
 両足を開いて前傾態勢の三人が、激しくも正確に身体でビートを刻んでいく様は、「ただごとではない何かが始まっている」のだと認知される。

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 次第に開いていた両脚が閉じられていき、モーションが上半身から頭部の上下シェイクに変移していく。SU-METALのポニーテール、YUIMETAL+MOAMETALのツイン・テールが計算された様に美しく跳ねる。

 次第にSU-METALは動きを緩め、三人のシンクロが、SU-METALとYUIMETAL+MOAMETALという対の関係にシフトする。
 SU-METALは無表情に腕を振り、それに追随する様にYUIMETAL+MOAMETALが大きくグラインドする。
 まるで猛獣使いが二頭を意のままに操っている様なアクションだ。
 YUIMETALとMOAMETALは何かを覗いているかの様なポーズなのだが、SU-METALの腕は二人を引っかき回すかの様に大きな動きだ。しかも二人のモーションは漫然としたリピートではなく、ギターのシンコペーションにきっちり合せているのだ。

「ベースマガジン」2015年5月号に掲載された私へのインタヴュウ記事で、私は本ブログを立ち上げた理由を幾つか述べている。その内にの一つが、
「ゆいもあのダンスは、ギターの高速リフに匹敵する事をやっているのではないか。勿論ダンスは音にはなっていないのだけれど」という認識だった。

 この考えは今も尚変わらない。
 BABYMETALにとっては音源だけでなく、ダンスという視覚要素がプログラムを構成していて不可分だ。
 ここまでの相乗効果を生み出した音楽アーティストを、私は他に想起する事が出来ない。

 無論、60年代からGenesisやPink Floydなど、シアトリカルな舞台を導入するアーティストはいたし、ヴィジュアル・イメエジを押し出すのは現代では必須の手法だ。
 しかしBABYMETALのプログラムはそれらから完全に独立している。

 これは以前にも指摘したが、単に音楽に合わせて身体を動かしているのではないのだ。音を聴いて反応するのではなく、モーションと拍の関係は基本的に前ノリなので、音楽を牽引しているかの様に見える。
 更に一つのプログラム中には、最も印象的になキー・モーションが幾つも盛り込まれており、一回見ただけで把握は困難である。

 そして、BABYMETALが何より凄いのは、この振付けなのに生で歌っているところに他ならないのだが、本稿の主題はあくまでダンス・ルーティン。
 特に『ギミチョコ!!』イントロ部の振付けを、私は「リフ」なのだと見ている。
 左右のギターが異なるビートで刻むシンプルな「音のリフ」に、更に三人のダンスがリフで拮抗させている。


 と、イントロだけでこれだけ書いてしまった。
 この項まだ続く……。


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コメント

おー!再開に間に合った。
読まされます。ありがとうございます。

端麗なる庖丁さばきには何時もながら目の覚める思いをするばかり

肇にコトバあり
コトバは神と共にあり
コトバは神なりき(ヨハネ伝)

作品は曲も演奏も詩も声も振付けも顔の表情もひとつひとつが隠された意味を持っており
それぞれが制作者のコトバ(ロゴス)全体を構成する表象として使われているのではないかと考えてはいましたが
作品をひとつの文書のように解読する知的探究は大変魅力的で目が離せないものです

BABYMETAL Twitterのフォーロアー なんであんな少ないのかね?

再開を心待ちにしておりました。

>>「「音のリフ」に、更に三人のダンスがリフで拮抗」

まさに文字通り、眼から鱗。ゆいもあのあのダンスは、いったい、言葉でどう表現すべきなのか?といつも想っておりましたが、まさに、これですね。とてもスッキリしました。

自分はメタルを始めとしてロックが好きなのはもとより音楽全般に興味があり、オペラやミュージカルも愛好しています。

オペラやミュージカルは音楽を聴くこと以上にダンスや演技、衣装などを目で見て楽しむ要素が大きいのですが、よく考えてみると自分が Babymetal を楽しめる要素の一つとして、目で見るということが極めて重要だったと気付きました。

自分の好きなメタル、オペラ、ミュージカルの最先端の融合が表現されていることが、自分が Babymetal にのめり込む大きな要因だったと、また小中さんの文章を読んで気付かされました。

この歳になってこれ程、真剣に引き込まれる様に他人の文章に喰らいつく自分は何を求めていた。何を求めている。BMの緻密で革命的な成り立ちを感じ取る事は出来てもそれを分析する(考える)力は私には無い。貴方はその力を持つ。羨望を禁じ得ない。そうなのだ、これ程、緻密で革命的だから世界が食らいついているのだ。正に目から鱗だ。その真価を認知させ悟らせる為には言葉による分析、評価は不可欠なのだ。分かり切っていた筈なのに、その事を忘れて久しかった。これも目から鱗だ。これでまだイントロに触れただけとは。BMは何れ程、奥が深いのか。鬱積していたフラストレーションが氷解する思いです。論考の続きを御待ちしております。

いつもすばらしい記事ありがとうございます。
日本時間ではもうYUIMETAL生誕イブですね。
「ゆいちゃん誕生日おめでとう!」
とフラゲしておきます。

おお、プログラム論考が再開しましたね。
御自身でおっしゃってた様に、ツアー中はまとめ化して見えましたから、なんか以前のこの感じが懐かしい。
もう一度最初からプログラム論考を読み直して、今度の幕張は見る部分を大事にして行ってこようかと思います。あまり地蔵にならない様に注意しながらも、3人のパフォーマンスをしっかりと見ていくと、また新たな発見があるかも知れません。
でも、落としの菊地プロと眼が合ったように感じたら、それどころではないかも。

「ゆいもあのダンスもリフ」名言再びですね
確かにその通りだと思います
普段自分はすぅのボーカルと神バンドの演奏という贅沢過ぎるBGMでゆいもあのダンスを楽しんでます
将来的には蛯名健一さんのような自分の身体を自在に操るダンスも交えてほしいと思っています
その素養はゆいもあには十分すぎるほどあると思います

このジャンプの写真凄いですね
まるで静止しているかのようにきれいすぎる空中姿勢のゆいちゃん
限界に挑戦してるのがはっきりと伝わってくるもあ
ボーカルでありながら多少体勢を崩しつつも二人に負けないダイナミックなジャンプをするすぅ
素晴らしいです

Perfumeもそうですが、MIKIKO氏の振付は「音と歌詞」を見せることに非常に長けていると、この論考からつくづく再認識させられました。同時にそれを演じきるフロント3人の凄さ!感動しました。
いつも更新を心待ちにしています。
ありがとうございます。

SUのYUIMOA使いのところは、
個人的に「デンプシーロール」と称していますがww

繰り返してゆくにつれ、
シンコペのリズムを喰っている処が、
ぐいんぐいんスウィングしていくのがたまらんです。

とにかくYUIMETALお誕生日おめでとう!!!

小中様の考察は本当に読み応えがあります。
自分の場合は「凄いなぁ」 「格好良いなぁ」辺りで思考停止してしまいますから、深く考えるには至りません。
このブログは誠に有り難い存在です。

本論からズレてしまいますがギミチョコを精査戴いたのを見ても感じるのはダンスを支える尋常ならざるエモーションです

ダンスの天才Suを中心に繰り広げられる三人のシンクロ度もさることながら
ここでYuiはどの瞬間を切り取っても絵になる動きをしておりMoaまでも激しく牽引していることがわかります
それがこの曲に独特の鮮烈な緊張感を与えていると思えるのです

日本語を何も理解できない海外のYoutuber達の心を強く揺さぶったのは寸分の隙もないこの激しい情動表現です


その凄まじいまでの集中力に初めはただ驚くだけでしたが、なにゆえYuiがここまでダンスの鬼と化したのかが謎でした
全ては幼少のYui自身を襲った試練にあったことを本稿「OverTheFuture」で初めて知るに及び、ああそうだったのか。と一人茫然となりました


体力の限界を超え跳躍するYui渾身の全身全霊のダンスが見る者の心を捕らえて離さないのは当然でしょう

それがダンス師匠MIKIKOの目に止まり小林氏の構想を生み出し不世出の奇蹟のBABYMETALを誕生させたのだと考えると
込み上げてくるものを抑えるのが難しくなります

ダウンロードFESのギミチョコは、
BABYMETALのプログラムの特殊性についての、
興味深い実験、或いは証左ともいえるものでした。

以前からコール&レスポンス時のイヤモニ着脱や、
RORの入り方など、同期を複雑に駆使した構成に、
3姫以上に神バンド&マニピュレーターの職人技を感じています。

今後是非ともブログ主のご意見を拝聴したいものですが、
なればこそ、DRAGONFORCEの面々には、
よくぞ難儀なご協力戴けたと感謝するばかり。

・・・まぁ意外と気軽にノリでやってくれた気もしなくはないんですがwww

幕張メッセライブ大盛況だったようで何よりです。
2万5千人オールスタンディングはすごいね、まるで野外フェス。

ところで秋からの国内公演のシケジュールが追加発表されましたね。
愛知、神奈川と、ゆいもあ2姫の故郷凱旋の心憎さよ、と思いきや、広島がない・・・。

それにしても9月〜10月の流れが過密です。
あの激しいステージを思うと、3姫が倒れてしまわないか心配になります。

2015年9月16日(水)大阪府 Zepp Namba
2015年9月17日(木)大阪府 Zepp Namba
2015年9月21日(月・祝)北海道 Zepp Sapporo
2015年10月2日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
2015年10月7日(水)愛知県 Zepp Nagoya
2015年10月8日(木)愛知県 Zepp Nagoya
2015年10月15日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
2015年10月16日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
2015年12月12日(土)神奈川県 横浜アリーナ
2015年12月13日(日)神奈川県 横浜アリーナ

いつも興味深く拝読しております。
きのうの幕張の新曲、現地で聞きました。そのとき、ダンスは良いものの、メロディーは良くないように感じましたが、歌詞を起こしてみました。すでに起こした方がおられ、ご存知ででしょうが、ご参考までに。よく聞こえないので、「違う」かもしれません。
ネット(すでに削除)で何度も聞いているうちに、良いものに思えてきました。RORのときと同じ現象です。


〈 〉は合いの手らしき部分

つまらない? こと?
どれでも 同じ
でも みんな そう 言うけれど
なんか ちょっと 違う
うん? やっぱ ちょっと 違う かも

違い なんて ないよ
〈○○〉 って言われても
なんか ちょっと 違う
てか? ちょっと(?) 違う

気に なっちゃって どうしよう
気に なっちゃって どうしよう
あれどっち これどっち
パーリラ パーリラ プー?

気に なっちゃって どうしよう
気に なっちゃって どうしよう
あれどっち これどっち
パーリラ パーリラ パーリラリラー

ピップパップ ピップパップ ピー
ピップパップ ピップパップ ピー
ピップパップ ピップパップ ピー
ピップパップ ピップパップ ピー

どれでも 同じ
でも みんな そう 言うけれど
なんか ちょっと 違う
ほら? やっぱ ちょっと 違うでしょ

違い なんて ないよ
〈どっち だ〉って 言われても
〈なんか やっぱ〉違う
〈なんか やっぱ〉違う のだ

なんか ちょっと
なんか ちょっと
違うー

気に なっちゃった どうしよう
気に なっちゃった どうしよう
あれどっち これどっち
パーリラ パーリラ パーリラ プー?

気に なっちゃった どうしよう
気に なっちゃった どうしよう
あれどっち これどっち
パーリラ パーリラ パーリラリラー

違うわー


あれ?も 違う これ?も 違う
これも 違う これも 違う
あれも 違う これも 違う

かなり 違う かなり 違う
なにが? 違う なにが? 違う
どれが 違う これが 違う
あれも 違う これも 違う

あー
ぜんぶ ぜんぶ 違う

気に なっちゃった どうしよう
気に なっちゃった どうしよう
あれだっけ これだっけ
パーリラ パーリラ ピー?

〈○○〉
気に すんなって いいでしょ
気に すんなって いいでしょ


あれどっち これどっち
パーリラ パーリラ パーリラ プー?


〈でもね〉
違ーう
違ーう

〈でもね〉
違ーう
違ーう

〈でもね〉
違ーう
違ーい すぎて 困る


パーリラ パーリラ パーリラリラー

ピップパップ ピップパップ ピー
ピップパップ ピップパップ ピー
ピップパップ ピップパップ ピー
ピップパップ ピップパップ ピー

新曲はSUの年頃相応にキュートな「困っちゃう」SONG♪な仕上がりですが、
サウンドや振り付けは相変わらずのゴリゴリHARD路線ですから、
古参のメイトにも振り幅圏内ではないでしょうか。

Perfumeの方ではフォルムやバランスの美を追求しているMIKIKO先生が、
BABYMETALでは制御されたスピード&パッションを狙っているようで、
勢いだけに頼った素人のよさこい踊りがどうも苦手な私には大好物です。

「GSっぽい」という形容をした方があった様に、
ゴーゴーやモンキーダンスの出て来そうな曲調なのに、
YUIMOAの振りは超クイックな逆モーションや、
ジャンプの反動を一瞬で静止させるポージングなどなど。

3姫の首や関節のケアを本気で心配しつつも、
「あっち」と「こっち」の戸惑いを180度逆方向への振りで、
パントマイム的な精度まで求めてみせるガチな振り付けが、
あきれるほどサディスティックなMIKIKO節でした。

 忙しくなっても汗だくで会場に集ってくれる学友たちの姿が、
何より心和みますよねぇ。
 それよりどなたかCD大賞のLIVEってどうなったか、ご存じ?

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