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2015年7月15日 (水)

『ギミチョコ!!』考 6

 YouTubeのMVがもうすぐ3000万視聴を越えるが、まだまだ勢いは衰えていない。
 再生回数というよりも、発表後1年以上経ってから更に勢いを増している状況を記述しておきたい。



 このMVは2013年12月、幕張メッセ イベントホールで開催されたLegend “1997” SU-METAL聖誕祭で収録された映像だが、照明は暗くて青く、到底アイドルのプロモーション・ビデオとしては容認出来ない質感だと言わざるを得ない。
 にも関わらずこの動画はBABYMETALの代表的な映像として受容されている。

 もしこの動画の画質が『ド・キ・ド・キ☆モーニング』の様に、照明をフルに当てたアイドルらしい映像であったらどうだっただろう。
 J-Popアイドルとギミックメタルという二極の間で、BABYMETALは絶妙なバランスをとっていた。プログラム毎にもそのバランスは変わる。
 2014年の公開時、初見の観客に対して最も塩梅の良いバランスは、『ギミチョコ!!』が提示するものだと判断されたのだろう。そして、それは完璧に機能した。

 既に生バンドでのライヴが当然だと思っているファンにとって、このMVはBABYMETALの魅力を4分で紹介するツールとしては弱いと感じてしまうだろう。
 しかし「誰が演奏しているのか」という情報を巧みにマスクし、視聴者の関心が全て三人に向くというこの映像は、「紹介」ツールとして今尚有効なのだ。

 メタルの激しさと甘いポップ・メロが交錯する楽曲を愚直に視覚化するとなれば、ドラスティックに照明の色を変えるのがルーティンなのだが、これを実際にやってしまうと、二極が何ら接点を持たないままカットバックしていくばかりの散漫なものとなる。
 MVは基本的に青く潰れており、色彩も明度も乏しい映像だけれど、トータル・パッケージとしてこの楽曲及びBABYMETALの三人をプレゼンテーションするものとして、その機能を正しく果たした。
 これらの措置が全て意図的に為されたとは思えないのだが、「これでいく」とジャッジメントし、公開したのは紛れもなくプロデューサーである。
 アンダーグラウンド性はBABYMETALと不可分な要素であり、その意思表示だとも読める。換言すれば、「消費され尽される」商品的なアイドルにはならないという宣言だ。

Gimsoni1

『あわだまフィーバー』、『違う』(仮)と『ギミチョコ!!』の系譜の新曲も発表されているが、BABYMETALの代表曲として今後も『ギミチョコ!!』の座は揺るがないだろう。

 音楽的な特徴、進化した三人のダンスと歌唱、そして自分自身のアピール力を知悉しそれを存分に発揮する演技と、このプログラムは「今」のBABYMETAL以外、誰にも表現する事は不可能なものになっている。

 このプログラムはBABYMETALにとっても、日本の商業音楽シーンに於いても極めて重要な存在となる筈だ。

 随分と長きに渡って書き継いできたが、この楽曲についての論考は取り敢えずの完結とする。

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コメント

ぜひ書籍にまとめて出版していただきたいです。
ただし、時間の経過で変遷も伴って
修正が必要な箇所も出てくるでしょうし、
またあんまり時間がかかりすぎると時節を外してしまってもなんですが。
更に、関係者の許諾が得られるかということもあります。
ご多忙の中、これだけの論評を書かれるのは大変だろうと思いますが
期待しておられる方はきっと多いと思います。ご検討いただければと。

『ギミチョコ!!』考、ありがとうございました。このブログを拝読する度にBABYMETALの新たな切り口に気付かされて、更に心躍る想いとなります。今後も期待しております。ゆるりとご更新下さい。

先日、小神様がネット配信でギミチョコのソロパートを弾いてくれていましたが恐ろしく難しそうでした。
3人の客煽りと重なるのであまりスポットは当たりませんが、やはりこの楽曲も卓越した技術にささえられているのだなぁ。と感心しまた。
もちろん、高度なレベルで歌い、踊りこなす3人もスゴイのですが。
それに気づく事なくそっ閉じを繰り返した当時の自分を殴ってやりたいw

普通のアーティストの場合CD音源とlive音源は違って当たり前。更にMVになれば普通はliveで再現されないのが当たり前だと思います。

live風に撮ってたとしても、カット毎に別撮りしてるんでしょ?なんて先入観で見ちゃう事もあるかと思います。

しかし、ベビメタは違う。
ギミチョコのMV見て、なんじゃコリャになって、毎日何回も視聴しまくって、liveまで見に行っちゃった人はかなり衝撃でしょうね。

目の前で、まさにMVが再現される。
どころか全てがそれ以上に。

同じ空間にいるってだけで感動的で凄いのに、
今まで視覚聴覚だけだったのに、主役と観客が一体となったlive空間で、五感フルに刺激されて、アホみたいに何回も見たMVが再現される。

もう最高の体験だと思います。
私はそうでした(笑)

ギミチョコMVはホント凄いと思います。

まずは何より、大作「ギミチョコ考」完結ありがとうございます。
これほど深く広い一曲への考察は見たことが無いですね。素晴しいの一語です。
(…余談ですが変換候補に「15です」って出すなとw)
ダンスの意味的解釈はとても心に焼き付きました。また、文章化されると
後々の記憶に残りやすいんですよね。何しろスピーディーな上に変化が激しく、
自分含め大半は「良かった、見てた、でも覚えてない」って感想になりがち。
ロジカルな言葉で意味付けをされることで、より記憶に残りやすくなると思います。

実際、自分は小中氏の分析を読んだあとMVなどを見たら、驚くほど自分が多数の
ポイントを見逃していたのに気付き愕然としたりしますw

これからも鋭い切り口で是非。

自分はZEPP難波アウトw さぁ次はどこだ。ローチケかぴあ先行かイープラスか…
戦いは始まりましたw

ギミチョコ!!の歌詞に意味は何もないとコバは語るが、50代以上にはチョコレートと聞けばハーシー、ギミチョコと聞けば焼け野原に立つ進駐軍兵士に群がる戦災孤児以外のイメージはない。

日本の戦後が完全に終焉したことを示すこの記念碑的な楽曲には何故か両腕をがっしりクロスするいつもの三人のポーズがない。
それはなぜなのか?

謎は尽き果てぬまま論考は次なる謎解きへと進む。
だがしかし、それでいいのだ。

照明の点、映像の見せ方だけの話なんですけど1:36サビ入り
点滅から逆光青への切り替え
この辺に爽快感を感じますから個人的には効果アリアリなんじゃないかなと思います。

壮大な考察 ありがとうございました。
素人の私には思いもよらない視点が大変楽しかったです。

>>YUIMETALとMOAMETALはダンスで歌っているのである。
これはmikikoMETALに対する最大の賛辞でしょう。
Perfumeしかり歌詞の視覚化はmikiko先生の面目躍如たる所以です。


時に、こちらの考察を拝見していると、さくら学院とのつながりにも言及されるシーンをいくつか拝見します。
その視点で最近発売になった昨年度の卒業式のDVD(YUI/MOAの卒業式)の内にバトン部の映像を見ていると・・・にわかな私が知る限り「天使と悪魔」が映像化されたのは初めての事で古参な方々の間でもちょっとしたニュースになって居たと聞き及びます。
さて、この「天使と悪魔」
自分の心の葛藤を歌ったものですが、ギミチョコの世界観と共通するモノを感じざるを得ませんでした。
net上で確認できた音源はこれだけです。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm18442278

歌詞とギミチョコの振り付け世界観に共通性したものが感じられませんでしょうか。
自分も含めBABYMETALファンがさくら学院に感化されてゆく大きな原因の一つはこの辺りにもあると実感してしまった次第です。


なんとdairymotineに現物がありました。
恐るべしdairymotine


Twinklestersは23:12~
http://dai.ly/x2xsv3z

読みごたえのある興味深い評論ですね
知識欲が満たされる暇つぶしに最適な文章に心ぴょんぴょんしました
私は最近、2chでギミチョコ3000万回再生のニュースを見ました

「なんか新しい感じの組み合わせだな」といった感想を持ちました

ベイビーメタルの知名度はこれからもっと上がって行くことになると思いますが
これからも密度のある評論を期待しております

なんか今までに無いタイプのカバーでてきました。
https://www.youtube.com/watch?v=efc17j5wqtw&feature=youtu.be

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