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2015年9月

2015年9月27日 (日)

Summer Sonic 2015総集編雑感

 オーストラリア最大のフェス(1月下旬開催)Soundwaveのプロモーターが、BABYMETALにオファーをしているらしい。

※初稿に誤記が多くズタボロですいません……

 WOWOWで放送された、Summer Sonic 2015総集編を、飛ばし飛ばしではあるが見通した。
 BABYMETALのライヴ音声がどうしてああなるのかを考える意味もあり、BABYMETALについて言及したりズッ友写真を撮ったアーティストを中心に、雑感メモを書いた。
 BABYMETALについては後日改める。

 何故WOWOWのライヴ番組は、映画など他の番組より-25dbも下げるのか小一時間問い詰めたい。明らかに音の情報量が削がれている。

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Day1

Wolf Alice
BABYMETALを見ていたという証言があった。Mountainステージはどのバンドも共通してレンジが狭い。ドラムが小さい。
フロントのEllie Rowsellは美しいけれど日本人ぽくも感じた。

Echosmith
BABYMETALとズッ友写真を撮っている(上掲)
YUIMETAL、MOAMETALSU-METALとほぼ同学年のシドニー含む兄妹バンド。
巧いし雰囲気を持っているけれど、若いのに老成し過ぎてはいないか。
同じ年頃にサマソニに出て、セーラー服着て大暴れしていたParamoreのヘイリーが懐かしい。

盧廣仲 Crowd Lu
アコギの弾き語りだがミニマルなバンド編成。これが良かった。
中国語で歌うのだが、まるでポルトガル語風(ボッサ的)にも聞えて面白かった。

Marmozets
しばしばBABYMETAL好きを広言してきた。もうメイトにはお馴染みでファンも多い。
Becca Macintyreは、(私はフィルムで見た事しかないが)ジャニス・ジョプリンを想起させる凄みのあるヴォーカルだ。

Cody Simpson
若干18歳のブルーズ・ヴォーカル&ギター。ギターも相当に巧いが、二十歳前の若造なりのブルーズ歌唱が非常に良かった。
ベースがヤマハのSBVをいい音で鳴らしていたが、ヘッドストックにチューナーをつけていたのが許せない。

Circa Waves
大阪でBABYMETALのモッシュピットに自ら突っ込んだ猛者。
意外にも曲調やステージングはワイルドではない。しかしコーラスワーク含め実に練られたバンド・サウンド。放送の音バランスも非常に良かった。

All Time Low
BABYMETALとズッ友写真を撮ったところ、ファンの女性から非難が殺到した事が記憶に新しい。

2012年には高円寺でもライヴを打ったらしい。

Beast Coast
なぜ両日分を放送したのだろう。感想はDay2に。

The Jon Spencer Blues Explosion
ベースレス編成で知られる。ベースに近いパートは中央近くに定位させているので、あまり違和感無く聞く事が出来る。

Zapp
コテコテのベテランFunk。
アフロのヅラ着装が可笑しくてならない(その後にもっと酷いコスプレをするのだが)。粘っこい手弾きのシンセベースが強烈であった。
このシツコさがファンクである。全ての放送されたアーティストの中で最も黒さを愉しめた。

Ariana Grande
YUIMETAL、御免。私には無理です。

FACT
今年で解散する事になっている為か、ステージへの覚悟が他のバンドとは違う印象を受けた。
集まった観客は後方まで一斉にモッシュしていて、場内の盛り上がりでは随一だったと思う。
放送の音声は低域が全く無かったのが残念。

Marilyn Manson
BABYMETALを特別に楽屋に入れてくれた「善い人」イメージの流布は、営業妨害に当たる危険性もある。
大阪での野外Mountainステージでは自由過ぎるパフォーマンスがリアルタイムでツィートされて愉しませてくれた。
やはり低音が弱い音声だったが、BABYMETALよりはバランスが全然良い。理由の一つは判った。

Manic Street Preachers
のベースは実に良く聞えるミキシングだ。


Day2


BIGMAMA
エアリー。ヴォーカルの声質が良い。

MAN WITH A MISSION
ベース、ドラム聞えず。

真心ブラザーズ
若いツアーメンバーであるベースの岡部晴彦が素晴らしかった。ちょっと音的に微妙なところもあるが、押し出しとノリの出し方はこの両日に出演した日本バンド随一だと断言しよう。

The Script
Marineステージの方が全体に音が良い。ドラムの音が良かった。

Walk The Moon
ショウマン・シップが良い。観客を乗せるのがとても巧い。
ベースが飽和している。

Beast Coast
インタビュウでベビメタを見たいと言っていた。
シューゲイザーというよりもサイケデリック。

MODESTEP
ダブステップ・バンド。かなり面白い。
ギターリフに人力パワードラムンベース

スガシカオ+菅波栄純(The Back Horn
これは素晴らしかった。全セットリストを見たいと思った。
菅波栄純のロックなギターがこれほどスガの歌に合うとは思わなかったが、考えてみればSly & The Family Stoneだってかなり歪んだギターを導入してロックだったのだ。
ベースの坂本竜太も、ドラムのSATOKO(こんな紹介は今更だろうが菅沼孝三の娘であり、ドリカムのサポートもやっている、もしかしたら今日本随一のパワードラマー)も当然の様に素晴らしかった。
※コメント欄で教えて戴いたが、菅波栄純はTwitterで『Road of Resistance』にコメントしていた。

郷ひろみ
まあ立派だなぁと。最後にステージの袖から袖へダッシュするパフォーマンスは、「まだまだ俺は元気だぜ」アピールなのか、BABYMETALオマージュなのかは不明。

Imagine Dragons
開催中、ドラマーのダニー・プラッツマンが「BABYMETAL見たかった……」ツィートをした。
骨太ロックなのにダンスビート的でもある。サンプリングやループも使う。かなり気に入った。

Nathan East
まさかのツイン・ベース・バンド。ヘタウマの歌。
サポートのベーシストの5弦ジャズベの方が案の定良い音だった……。

THE King ALL STARS
加山雄三とJ Rockオールスター編成というプロジェクト、率直に言って全く関心が無かったのだが、いやちょっとこれは凄いものを見た。特にエレキインスト「ミザルー Misirlou」(誰でも聴いた事がある)は、リードを弾ききった若大将もだが、2ギター+オルガン+トランペットという編成のバックがもの凄い集中力でテンション高い演奏をしたのだ。
すみません若大将。なめてました。

Fear, and Loathing in Las Vegas
流石にライヴ・スキルが高い。音数の多い上げ上げなのにタイト。ベースも弱いながら聞えてはいた。

Olly Murs
Mark Ronson,Bruno Marsや、今回サマソニに来たPharrell Williams、そしてこのOllyらのディスコ復古なソウルは、何れもがひと味足りない。魅力的なリフやヴァンプが無いからだ。
バンドのバランス最高。
ベーシストがジャガー・ベースを弾いている(プロが使っているのを初めて見た)

Char
私は近年のCharも好きである。カヴァー・アンソロジー・シリーズのJeff Beck Group「Situation」には燃えさせて貰った。ピアノを佐藤準(1st Albumのバンドメイト)が弾いていたのも泣けたし。
今回のライヴでの鍵盤はKyOn。
オンエアではまあ約束事である「Smoky」がまず流れて、この曲についてはもういいかなと恐らく誰もが思ってはいる気がする。
しかしその後に、実に緩くギターカッティングをして始まったのがSam & Daveの「Hold On I'm Coming」。え、ちょっと素晴らし過ぎるんですけど。
Charのソウル・ヴォーカル、衰えるどころか艶増してるんですけど。



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 告知。
 會川昇氏が10月放送開始のアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」の前日譚小説を上梓した。

超人幻想 神化三六年


2015年9月25日 (金)

安倍吉俊画集+自選画展

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 24日、WOWOWでSummer Sonic 2015 Day1の総集編が放送され、BABYMETALは『Road of Resistance』『ギミチョコ!!』の2曲が放送された。
 3人と神バンドのパフォーマンスは最高であったと思う。
 しかしまたもライヴ映像(というより照明)と音声には極めて強いフラストレーションを抱いた。
 いずれこの事は書く予定。


 今回のエントリの主題は告知。

 安倍吉俊君のデビュー20周年記念選画集「祝祭の街 明・暗・素」各冊が発売されたのだけれど、Amazonでは既に品切れになってしまっている。
 しかし10月1日頃出来で全巻に重版が掛かっているそうなので、今からでも欲しい方は少しお待ち戴きたいとの事だ。

 この出版を記念して、Pixiv Zingaro(中野ブロードウェイ2階)にて、自選画展が開催されている、既に「前編」は終わり、今は「後編」(入れ替えられている)が開催中。

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http://pixiv-zingaro.jp/exhibition/abeyoshitoshi20th

 知らせてくれた版元である星海社の方からのメールにこう書き添えてあった。

「現在展示の「後編」には、「小松ちあ紀」の展示もございますので
お時間がございましたら、ぜひお越しくださいませ。」

 やっぱりモデルにしていたんかい!
 私は承知してないぞ!

 って古い話ではある(『NieA_7』(2000)のキャラクターである。折笠富美子さんが声を演じた。当然ながらヴィジュアルや性別がモデルである訳が無い。)

 そりゃ確かにUFOは好きだし、ノートPCにステッカーは貼ってますが(今でも)。
 あ、この絵はPowerBook 2400cだな……。いいマシンであった。IBM大和研究所の設計で……。

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2015年9月24日 (木)

メディアで扱われる事の少なさについて

 BABYMETALは23日に放送された10時間番組「ミュージックステーション ウルトラ Fes」に、出演はしなかったのだが、「世界に誇るニッポンの歌100」の68位にランクインして、ロンドンの『ギミチョコ!!』を30秒ほど放送した。外国人へのインタヴュウも含めて2分も扱われたのは破格であろう。
 勿論3人は出演した方が愉しかったかもしれないが、きちんと収録されたライヴ映像(音響も)で、日本語の歌でぎっしりつめかけた外国人を熱狂させ、汗を滴らせながら歌い踊る映像には初見の人への説得力があった筈だ。

 そう言えば数ヶ月前に、この番組がそうしたアンケートをウェブ上で募っている事が某スレで報告された時、アーティストではなく楽曲を投票しなければならず、つい私は「どれを投票すればいいの」と訊ねたところ、「ギミチョコでいいんじゃね」とレスを貰って、「そうか」と素直に一票を投じた。あれは無駄ではなかったのだ。(まあ順位に正当性は感じないのだが、そもそもシングル曲ですらないので充分に勝利ではある。)



 もう日本では、BABYMETALが“ステマ”だとか大事務所の仕掛けだと思う(主張したい)人は少なくなりつつある、と見える。
 BABYMETALのアウトラインを少しでも知れば、如何にBABYMETAL、そしてさくら学院が慎ましいプロジェクトで始まったかはすぐに判る事だ。
 BABYMETALがなかなかマスコミ、ウェブ媒体が扱わない事については深読みをする方もいるが、売り出すキャンペーンに全く投資していないからだと私は思っている。
 確かに初期BABYMETALの「物語」(紙芝居 Metal Resistance第一章)では、AKBグループを仮想敵設定にしていたが、一緒に出演した番組でメンバーにキツネサインをさせた事で、一方的に勝利した事になっているのだから。

 横浜アリーナでの公演チケット代が割高であるのも、冠スポンサーがついていなからだろう。逆に言えば、その分演出には多少の期待をして良いのではないか。

 BABYMETALの活動が何のしがらみもなくフリーハンドで行えるのも、キャンペーンに投資をしていないが故だと好意的に解釈したい。投資にはリターンが必ずや求められる。絶対に成功するなど、今の時代に誰も約束は出来まい。
 そうした投資無しに世界的な存在になっていく、壮大な実験に立ち会っている感覚を持つ。

 確かに先日のラジオを聴いてしまうと、もっとこうした露出をして欲しいとは私だって思う。
 今年の始め頃は、否が応でもマスコミが取材に殺到して露出は増えるだろうとも思っていたが、今年の実績は全て海外でのもの。
 日本からマスコミを招く事は当然しないので、「ヘドバン」は身銭切って取材するしかない。
「ぴあ Music Complex」の記者がレディングには取材に行った様だが、チケットが無いので外でファンを待つしかなかった。
 それもこれも、出版業界の景気が悪いからなのだが。

 記者を派遣する原資はなくとも、放送、新聞のイギリス支局を持つところが取材をしても良さそうなものだが、そうした感度を持つジャーナリズムは不毛になっている(昨年のニューヨーク公演時には現地NHKの取材があった)。
 それを考えると、昨年のBack in U.K.ツアーによくNHKは同行してくれたと思う。この番組のお陰で私はファンになれたのだし。

 来年のウェンブリー・アリーナ公演には志あるメディアが取材に赴く事に、僅かにだけ期待しておく。



 コメント欄で面白いブログ記事を発掘された方がいた(ありがとうございます)。

『ヘドバンギャー!!』MVで扇風機ヘドバンを披露した人について、撮影現場を仕切る会社の人と思われる方が書いている。

BABYMETAL - ヘドバンギャー!!MV

2015年9月23日 (水)

「記念日ノート」マボロシ☆ラ部

 遅まきながら過日やっと、さくら学院関連の現在入手可能な音源全てを手に入れて聴き通した。
 殆どが新品で入手可能であるが、イベントだけで売られたものや限定版の幾つかは未入手。ただ楽曲はコンプリート出来たと思う。

 私が漠然とさくら学院の楽曲に抱いていた印象は、やはり「夢に向かって」というキック・スターター曲に代表される、エヴァーグリーンでミドル・ティーンに相応しいポップスというものだった。
「夢に向かって」については別に述べたい事があるのでここでは置く。

 バトン部Twinklestarsの楽曲はシングルで売られた事もあり、力が入った楽曲製作が行われたと思う。
 楽曲を手掛けた沖井礼二はポスト渋谷系Cymbals出身。こうしたコードワークに凝ったポップスに私は偏愛を抱く。
 メジャー7thや代理コード、分数コードといった響きが80年代後半に「軟弱」だとやたらと敵視され、シンプルな3コードの曲の方が強いんだよという空気感が強まった。なので、当時の「バンド・ブーム」を私は蛇蝎の如く嫌った。
 渋谷系はそうした中で、ジャズ的なコードをポップスに用いる事の命脈を保っていた血脈だったと思う。
 あくまでも私の個人的実感での話なので、正確なヒストリーではない。

 私個人にとって俗に渋谷系と呼ばれるアーティストの楽曲は、グル的な存在であるピチカートVは意識せずとも耳に入ってきたが、全般には邦楽だという理由から縁遠かったのだけれど、オリジナル・ラヴ(現・ORIGINAL LOVE)だけは何故か何枚か買っていた。サウンドばかりではなくヴォーカルが本当にソウルっぽかったからだと思う(渋谷系ではないが後のスガシカオにも似た感覚を抱いて好んだ)。
 渋谷系を熱中して聞く事は無かったが、勝手にシンパシィをずっと感じてきた。


 大幅に話が逸れたが、アイドルが歌う曲であっても、楽曲的に多層的な愉しみがあった方が良い、という私の様なリスナーはバトン部Twinklestarsの「Dear Mr. Socrates」「プリーズ!プリーズ!プリーズ!」や「天使と悪魔」にはひれ伏すしかない。
 リッチなコード、リッチなサウンドに、沖井本人がピックで弾くリッケンバッカー・ベースのドライヴ感は音楽的愉悦を横溢させている。
 これに乗るさくら学院の歌声は、そもそもオーディションで選抜されただけあって、一人ひとりの声質には大枠での統一感がありながら、ユニゾンになった時に美しい響きになる。
 CD6枚組の「IDOL FILE 2」(南波一海が今年編んだローカル・アイドル・コンピレーション)も随分時間を掛けてしまったが全て聴き通したし、近年あまりアイドル楽曲を聴いてこなかったので、現在進行形のアイドル楽曲はそれなりに広く聞いたつもりでいるが(「夢見るアドレセンス」の楽曲の一部は良いと思ったら、これも元Cymbals矢口博康の作だった)、概ねどのアイドル・グループもユニゾン、ソロ部の割り振りというフォーマットはどこもそうであり、その中でもさくら学院のユニゾンの響きはちょっと別格であるとは言えると思っている。

 凝ったコードワークは時に屈折したメロにもなる局面をもたらすが、さくら学院は何の屈託もなく普通に歌ってしまう。

 もしリアルタイムにTwinklestarsの曲を知っていたら、間違いなく私は誰が歌っていようが構わずCDを購入していたに違いない。
 しかし当時この曲を全く無関係な私が聴く機会は無かった。

 比較的最近リリースされた「放課後アンソロジー from さくら学院」には「天使と悪魔」のオリジナル版は収録されず、2014年度のアルバム「君に届け」に全く同一のオケで、2014年度の菊地最愛や水野由結らによる新録音版が収録された。当然ながらオケは全く古びておらず、新たに自信に溢れた彼女達の歌をリリースしたプロデュースのセンスには惜しみなく拍手したい。(が、今後のさくら学院のリリースはどうなるのか甚だ不安である。)

 さくら学院は年に数枚のシングルと、卒業期にアルバムを出すのが近年のサイクルとなっている。さくら学院誕生以前から存在しているミニパティを含む、学内ユニットも幾つかありそれぞれにシングルを出したりもしている。
 楽曲制作陣はあまり統一感がなく若手も意欲的に起用しているし、ケツメイシやthe brilliant greenといったスター・アーティストも楽曲提供をしており、贅沢な環境だとは言えよう。

 通して聴いてみて尚、重音部はさておくとしても私が一番好みであったのはやはり沖井礼二が手掛けたTwinklestarsなのだな、と思った。

 ところが、オマケの様に買ったつもりの「マボロシ☆ラ部」のEP(2014年11月発売)には参ってしまった。

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 NHKのアニメ「くつだる。」に声優として出演していた、さくら学院卒業生である堀内まり菜と佐藤日向、元可憐Girl'sの島ゆいか、そして金井美樹という4人はアミューズ所属の女性タレントであり、「マボロシ☆ラ部」は便宜上のユニット名で、「さくら学院」とは関連事項に過ぎない。

 アニメの事は一切知らないのだが、後期テーマ曲を含む3曲「Merry Go World」「マボロシ☆ラ部」「記念日ノート」は、一聴しただけではなかなか全容が把握出来ない。しかしあまりにも気になる作りになっていて、何度も聴き返してしまう。

 楽曲を手掛けたのはha-jという名義のトラックメイカーで、近年ジャニーズを主に手掛ける人の様だ。
 トラック1曲目の後期オープニング「Merry Go World」は、「ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐるる」というキャッチーな歌い出しが癖になるが、基本的には80年代アイドル歌謡曲の復興という、今のアイドル楽曲としては普遍的なアプローチだ。オール・デジタルシンセの打ち込みで作られている。

 2曲目の「マボロシ☆ラ部」から「ん?」と聴く注意力が高まっていく。
 アップテンポ・マイナーのサビ頭から入る作りは、アニソンらしさを狙ったのではないかと思えるアレンジだ。この曲のオケはかなり自己主張をする(音数の多い)生のベースラインが疾走感を生み出している。生楽器は恐らくこれだけである。
 ha-jという人は「吟遊詩人」というバンドでベーシストでもあった様だ。
 この辺り、沖井礼二と共通する出自でもあり、ベーシストが構築する有機的なリズムが支えるアレンジという面では共通性を指摘しても差し支えなさそうだ。
 間奏部のダブ・パートには、「あれ?」とか「いえー」といった恐らく録音時のオフ・ヴォイスがサンプリングされていて楽しい。


 問題はエンディング・テーマ(と言っても極めて限定的な部分しか放送では用いられていなかった様だ)「記念日ノート」である。
 曲自体はフォーキーなフル生バンド+生ストリングスというオケで、曲調自体は私が本来はあまり好まない(基本的には退屈に感じる)タイプのものである。
 同じメロディラインの様にパートが進んで行くが、それを載せるコードがシフトしていく。あっさりしたアレンジなのに、徐々にオケは盛り上げていく。
 お、大丈夫なのか?「特別な事はなにも起きない記念日」の歌なのにそんなに盛り上げて、と思っていると、Dメロに入って俄然サウンド・アレンジが視界を広げる。そういう印象だ。ここで燃えない筈がない。

 そしてそれに続く落ちサビは、4人自身の声によるアカペラ・コーラスなのだ。
 1パートずつ録音し、コンプ/リミッターとEQが強めに掛けられ、まるで初音ミクの様なサウンドになってはいるが、ヴォイス・サンプリングでの再構築ではなく、あくまで(1パートずつ)個別に録音されている。
 アクチュアルなヴォイスを用いたサンプリン音源のシークェンスの様に聞えながら(やはりここでは堀内まり菜の特徴的なヴォイスが支配的である)、紛れもなくこれはアカペラ・コーラスなのだ。
 CDに収録されているカラオケにこのパートは収められておらず、この部分はヴォーカルなのだとアレンジャーは主張している。

 もう終わるかとフェイントをかけ、更にアレンジは盛り上がっていく。ドラムもロックしていて大暴れである(音量レヴェルは低く抑えられているが)
 最後には後期ビートルズ、というかジョージ・マーティンそのものとしか聞えない美しくもポップスとして黄金の形で締めくくられてしまう。(という事はこのベース・ラインは、やはりポール由来なのか……)。

 ベーシックな曲調はJpopの定型の一つだし、弦のオブリガート・アレンジとサビのコード進行は「風が吹いている」(いきものがかり。NHKロンドン五輪テーマだったので嫌という程聴いた)にも似ている。
 でも、AメロBメロで似た様な旋律が、コードの違いを繊細に受けて変化していく流れは実に美しい。
 ハーモニーがごく控えめについているところもあるが、輪唱の様なヴォーカル・アレンジはまさに女子高生の歌なのだと味わえるもので、繰り返し聴いた後になる程、心を揺さぶられている。
 冒頭、高校の教室の様なSEがあり、実感のある等身大の歌詞(作詞:藤林聖子)を率直に反映した楽曲は見事という他は無い。
 もう今の私にはファンタジーの世界の様に遠いものになってしまったが、青春時代には大きな事件など無くたって、強く記憶に残る事柄や言葉、風景というものがあった。
 それを歌っている「記念日ノート」は、今の私にはあまりに眩しい。

 さくら学院出身の2人含め、どちらかと言えば演技の方に力を入れていこうとしている4人の、今この時にしか歌えない歌である。

 いや、今からでも遅くはない。このやる気の全く無いジャケットを変えて再発すべきだ。
 MIKIKOに振付けて貰い、期間限定でも活動すべきだ。※3曲とも振付けはあるのだそうだ。
 何十万枚も売れなくてもいい。今、日本のポップスにこれだけの宝がある事を少しでも多くの人々の記憶に残して欲しいと切に願う。

2015年9月22日 (火)

ラジオ出演

 BABYMETALのZepp Tourは札幌が無事に終わり、次の福岡までは暫しの日にちが置かれる。
 当然ながら国内ツアーでファンカムが撮られる筈も無く、静かなものである。

 21日夜に、大阪FM802の番組「REDNIQS」にBABYMETALが録音で出演した。
 まとめブログ系では既に概ねまとめられている。

 3年近く前に一度BABYMETALはこの番組に出演しており、DJがBABYMETALの事を熟知している事もあって、定型的なインタヴュウではなくファンなら聞いてみたいといった質問をぶつけて話を聞き出してくれた。MOAMETALもYUIMETALも積極的に喋っていて、素に近い3人に久しぶりに接した気がした。






 過日のUltra Japanに於けるSkrillexのステージへのサプライズ出演は、EDM界では大きなトピックとして多く報じられている。
 今のメインストリームも、予想外で面白いハプニングは歓迎されるのも自然なのだろう。BABYMETALは音楽産業界に於けるトリックスターとしての認知を広げつつある。

FUSE: Watch Babymetal Join Skrillex Onstage for Insane Live Collaboration

BLABBERMOUSTH.NET: BABYMETAL Performs With SKRILLEX At ULTRA JAPAN Electronic Music Festival

EDM.com: Skrillex Brings Out Metal J-Pop Band During Ultra Japan Set

YOUREDM.com: Skrillex Brings Out Unexpected Special Guest For UMF Japan Performance

20150923 Update:

Billboard: Watch Skrillex Perform 'Gimme Chocolate!!' with J-Pop Trio Babymetal at Ultra Japan

GIGWISE: Babymetal join Skrillex on-stage in Japan to perform 'Gimme Chocolate!!'



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 発売された「キネマ旬報」10月上旬号に、黒沢清監督作品「岸辺の旅」についての批評文「黒沢清の『異人』表現」を執筆している。
 この雑誌にも昔から、執筆者の近況を数十文字で書く欄があるのだが、当然ながら私はBABYMETALについてだけを書いた。小さな事からこつこつと、Metal Resistance。

2015年9月21日 (月)

怒濤だった日

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 9月20日(日)は色々怒濤だった。

 イングランドで開催中のラグビーワールドカップで、日本が南アフリカに土壇場で逆転勝利した。運などではなく、正面きっての勝利だった。
 ラグビーには不案内な私でも、昼にBSであった再放送はフルに見てしまった。

 ちょっと前後するが、夜半にテレビ東京で放送されたネオスポが浅田真央復帰特集をやっていたのだが、最近の練習シーンの場面で、あまりにも軽やかにトリプル・アクセルを幾度も跳んでいたのを見てしまった。
 昨シーズンの世界女王、ロシアのトゥクタミシェワは3アクセルを幾度も成功させているし、今シーズンからは他の選手も投入してくるのかもしれない。
 浅田真央に期待されているのは大人の滑りであって、高難度ジャンプ構成ではない、と思うファンが多い筈だ。
 しかし――、久しぶりに見た浅田真央の3アクセルには本当に脳天に衝撃を受けた気分であった。


 夜の9時過ぎ頃、ネットが騒がしくなった。
 BABYMETALの公式ツィートが、意味不明な予告をする。
 やがてそれは、Ultra Japanという現在台場で開催されている巨大EDMフェスの、SkrillexのステージにBABYMETALがサプライズ出演し、『ギミチョコ!!』を1コーラス歌ったらしい事が判り、そこで私は西新宿のカフェで書いていた仕事が続けられなくなってしまった。

 21日には北海道でライヴを行うのに、前日の東京でサプライズ出演するなど誰も予想していなかった。
 アミューズ公式ですら「まじか!」と呟く。
 3人も、衣装は2014年仕様であった。今期用の衣装は既に北海道に機材と共に送られているのだろう。
 つまり本当に唐突に決まったのは間違いない。

 しかしSkrillexはBABYMETALを登場させる前、「お前らのキツネを見せてくれ!」と観客を煽り、1コーラスはほぼ原トラックのまま、3人が歌い易い様にしていたが、後半からはこれでもかとエディットしたものをプレイした。
 終わりにはSU-METALが「まぜてくれてありがとう。また一緒にやろうね」と言う台詞があり、Skrillexも「勿論!」と応え、観客を背景に四人で自撮りをした。

 音に関してはここが最も長いが、画面は天地逆だし全く見えない。

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 このところBABYMETALに関してはあまり驚く事が少なくなっていたのが寂しかったが、いやいやいや、面白がらせてくれる。
 公式ツィッターは「ボーダーレス」という言葉を多用していたのが印象的だった。
 メタルがホームであっても、BABYMETALのサウンドには最初からEDMの要素が不可分に採り入れられているのだから、こうしたEDMフェスに出演するのだってアリに違いない。

 文句を言うツィートが早々に出回ったが、ネットではそういうリアクションが久々なのもあって更に昂奮度が増した。

 愉しかったが、久々に一言。

「仕事にならないんだけど!」

2015年9月20日 (日)

今後の予定など

 前エントリのコメント欄では、現場でのヴォーカルの聞え具合についての意見交換が行われている。
 こればかりは私は何も言えない。

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 ここ一月程、『Live in London』のCDを集中的に聞いていた。
 The ForumとO2 Brixton Academyは映像でもそうである様に、音像もかなり異なる。これまた聴く度に新たな発見があったりして、実に味わい深い。
 これについての文章は『LEGEND 2015 新春キツネ祭り』CDのリリース前に、近々まとめたいと思う。

 プログラム論考は次に『4の歌』を書くのだけれど、この曲が比較的新しい楽曲である事もあって、解釈などの言は既に尽されている感覚があり、私独自な視点をなかなか見出し難い事もあってなかなかの難物だという事を思い知っている。
 勿論、大好きな楽曲であるには違いなく、これも近々書こうとは思っている。


 全く関係無い話になるが、女性メタルバンドAldiousに今年加入したドラマーのセットがトリプル・バスドラムという変態なセットだと知り、調べてみたらテリー・ボジオ(川崎在住)の御息女である事が判り、納得してしまった。
 Dream Theaterに加入したマイク・マンジーニはバスドラムを四つ並べている(基本的にはマスタースレーブ・ペダルで叩いている様だ)が、3つというのは一体どういう趣旨なのだろうか。

 

2015年9月18日 (金)

初の国内ツアー

 非常に空しい事を書く気分だが、BABYMETALは16日より大阪2日間を皮切りに、結成以来初の国内3箇所以上を巡るツアーを開始した。
 キャパ千数百という国内各地のZeppは、小箱というにはやや大きい。しかし今のBABYMETALを間近で見られる絶好の契機でもあり、私も観戦したかったが抽選に漏れた。

 このところ映画美学校の指導が期末で大変だった事などもあり、あまり情報を得られていないのだが、大阪二日間は若干のセットリスト変更があった様だ。
 これは小さな驚きでもあった。
 ワールド・ツアー3節以降のBABYMETALは、セットリストの曲間がかなり詰められている様に感じている。
 この調整はマニュピレータに宇佐美秀文が復帰して以降の傾向ではないかと思う。
 それまでのBABYMETALのステージは、一曲が終わると暗転した間合いの時間があった。

 今は曲が終わり、オーディエンスの歓声のピークを越えたところですかさず次に移っている場面が多い印象だ。
 3人は息を整える間もなく次のプログラムのスタンバイに入っている。これが可能になったのも、3人の進化の一つに違いない。
 このステージングはプロフェッショナルなショウとしては最高だが、日替わりで曲を入れ替える事には負担が生じる筈だ。しかし大阪連日では変えてきたのだった。どんなセットリストでも今のBABYMETALはこなしそうだ。




 このファンカバーは興味深く見た。
 投稿者は一日で振付けを覚え勢いで撮った様だ。そうまでしたかったのだという衝動が突き上げたのだろう。
 それにしても、この一曲を終えただけで相当体力を失っている様に見える。
 というか、それが普通な筈なのだ。
 3人が表情を作りながら、何の負荷もないかの様に涼しげにパフォーマンスしている事の異常さを改めて思う。




「serial experiments lain」の廉価版Blu-ray発売に併せ、長らく品切れになっていた「シナリオエクスペリメンツ・レイン」【復刊ドットコム新装版】が7刷りとなった。




 キーボードが逝ったThinkPad X201s、新しいキーボード・ユニットを入手して交換したが(コメント欄でお教え戴きありがとうございました)、ネジ4本で簡単に交換出来るモジュールとなっていて喫驚した。3月以来延々とコケ続けているWindows Updeateも、問題の更新を無視する措置をしたので、問題無く使える様に戻った。しかし今となっては画面が狭い。そもそも液晶の品質は良くなかった。
 もの書きでも縦書き入力をしたいという私は、使うアプリケーションはテキスト・エディタとWORDくらいなのだけれど、特に縦の解像度は問題だった。特に16:9といったワイドアスペクトがデフォルトになったこの十数年のノートPCは望まない進化をしていた。
 今度入手したX1 CarbonはWQHD(縦1440)。老眼には辛いかもしれない……。




2015年9月 7日 (月)

浅田真央 in Action

 前回のエントリの末尾に載せたThe Guardianの記事は訂正後のも古いものだった。恥ずかしいながらそのままにしておくが、お詫びして訂正します。

 今回のエントリはほぼBABYMETALとは無関係。

 藤岡幹大がこんなツィートを。



「Some Skunk Funk」というBrecker Brothersの曲は、Chaseの「Get It On」と並んで管楽器を擁するバンド、殊にハイノート・ヒッター(極端に高い音を出したがるラッパ吹き)がいるなら、まず例外無く挑戦する難曲。
 私も20年前に原宿クロコダイルで演った。

 兄ランディ(Tp)は健在だが、弟マイケル(TS)はもう亡くなって久しい。

 下に見える譜面「Actual Proof」はHerbie Hancockのやはり'70年代の曲。電気ジャズ系のジャムでは定番な難曲。




 MIKIKO-METALの特(撮)ヲタ性については、誰かが何処かで言及するかと思っているのだが、あまりそういう言説を見ない。
 私はちょっと近い職種にいたもので、私から言及するのは躊躇っているのだけれど、『Road of Resistance』の振付けを論考する際には触れざるを得まい。

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 この画像は暫く前にツィッターで出回ったものだが、フィリピンのガチなマニアでコスプレイヤーの女の子だそうだ。初めて見た時には流石にしびれた。




 もう一つの休眠中のブログ「浅田真央試論」を再開するかは自分でもまだ判らないのだが、既にフィギュア競技の2015-16シーズンは始まっており、浅田真央も来月から試合に出場する。

 ところでこんなCMが出来ていたとは知らなかった。


 浅田真央にアクションさせたら、面白いだろうなぁとは私も夢想した事があった。
 このアクションには見覚えがある。『RoR』にも近い振付けがあるが、このアイコニックな「振付け」をさせるアクション監督は間違いなく谷垣健治氏だろうと思ったら、やはりそうだった
 もっとこんなアクションを観てみたいところだが、浅田真央にそんな暇は当分無い。

 外に持ち出し仕事に使ってきたThinkPad X201s、幾つかのキーが突然効かなくなってしまった。ドライバを入れ替えても何しても治らず、物理的に逝った模様。
 うーん参った。
 このところのPC事情は全く疎く、代替を探ってみたのだが、モバイル用途でキーボードがしっかりしているのは、何かと不評もあるがLenovoしか無さそうだ。
 ThinkPad X1 Carbonのキー配列がコンヴェンショナルなものに戻っていて助かった。

2015年9月 6日 (日)

修行ツアー2015 プレイバック

Babymetal15_api

 まず来年4月のSSE Wembley公演のチケットは、先行販売分がショートしているだけで完売したという訳では無さそうだ。

 本ブログでは書きそびれていた、Leedsに於けるBABYMETALとMetallicaとのコラボの噂は噂のままだった。BABYMETALと神バンドは、ステージ・サイドの桟敷席かぶりつきで、Metallicaのライヴを堪能した。

 Reading+LeedsのMetallicaは、昨年のSonisphereとほぼ同じ演出だった。最後の"Enter The Sandman"でステージ上方から巨大な黒い風船ボールの群れが観衆に向けて落とされる。
 フェスのヘッドライナーはそうそう演出を変えないものなのだろう。KISSだって30年同じ演出を続けているのだ。



 BABYMETALのワールド・ツアー2015、海外遠征第3節が終わった。
 今回のReading+Leedsは明らかにBABYMETALのステージを一つ以上は上げる挑戦だった筈だが、気負いや過度な緊張もせずにBABYMETALはライヴを楽しんだ様に見える。
 仮に観客の目の触れないところでは何かがあったのだとしても。

 公表されているスケジュールでは、もう年内に海外でライヴを行わない事になっている。
 KOBA-METALはこのツアー前、「厳しい経験もするかもしれない」といった内容のコメントをしていた事を思い出す。

 本ブログでは、プロデューサーであるKOBA-METALがどう考えた、どう計画したといった忖度は極力しない方針で書いてきているが、ここばかりは考えてしまう。

 今年のワールド・ツアーをメキシコでスタートさせた意味は何か。
 勿論、中北米のサーキットなのだから、行くのだとすれば最初に行くのは自然なのだが、それにしてもメキシコ・シティという高地なのだ。
 帰国後暫くして、神バンドのBOHや藤岡幹大自身がメキシコでのステージの過酷さを述懐している。

 今、スペインで自転車ロード三大レース掉尾のブエルタ・ア・エスパーニャが行われている。放送するJsportsの実況は情報量が豊富で愉しい。
(実況ナビゲーターのメインを務めるサッシャは“指山”と実況民に呼ばれる。元々はパンクバンドをやっていたらしいが現在の主業はラジオDJ。Loud ParkなどのMCでメタルファンにも馴染がある筈。最近はFMでBABYMETALをよく流しているらしい)

 ティンコフ・サクソ・チーム(本拠はロシア)の日本人マッサー(選手のケア全般を担当する)である中野喜文氏が数日前に解説で、アスリートの高地トレーニングの最新トレンドを語っていた。
 高地でトレーニングをすれば平地での運動能力が上がるというのは、マラソンでも知られているが、自転車ロードも山岳ステージが多い三大レースがある訳で、古くから着目されていた。昨今南米コロンビア出身の選手が多く活躍しており、高地民族のDNAにはミトコンドリアが通常よりも多く含まれているとも言う。
 しかし、では高地でトレーニングをしてすぐにレースに出たら活躍出来るのかと言えば、実はそうではないという。寧ろ普段よりも調子を落とす選手が普通らしい。
 ところが、レースは3週も続く長丁場。選手によって異なる様だが、6日程度後になってくると俄然、調子が上がるのだ。

 今の自転車界では高地トレーニングについて二通りの考え方があるらしい。一つは実際高地でトレーニングをする旧来の方法。
 そうではなく、トレーニング自体は平地で行い、その疲労した身体の回復期に高地に行き、時間を掛けて回復させた方が効率が良いという。
 基本的には低酸素状態になる事だ。こうなるとフィジカルでノンドラッグのドーピングの一種と見えなくもない。イタリアでは低酸素タンクの使用はオリンピック委員会によって禁じられている。

 つまり、高地に行けば後が楽、という単純なものではなく、選手の体質など条件が複雑に絡むのだ。競技選手には「ピーキング」という命題がつきまとう。
 1シーズン常に最高の状態を維持する事は人間には不可能であり、「ここぞ」というところで最高のコンディションをもっていく管理が必要なのだ。

 BABYMETALはどの様な場所であっても、どれだけのキャパシティ会場であっても、全力を尽してライヴを行う。
 だが、それぞれ個々のライヴ、フェスの持つ意味合いもそれぞれだ。

 もしかしたら、年内電撃的に海外でライヴを行う可能性もまだ残されてはいるが、予定されたスケジュールを全うした事を踏まえて、今年度の海外ツアーを振り返ってみたい。




¶メキシコ~トロント~シカゴ~Rock On The Rage(オハイオ)

 私はどうしてもBABYMETALをアスリートとしての観点でも見てしまう。
 今年のBABYMETALにとってのピーキングが、Reading+Leedsにあった事は疑う余地が無い。
 ワールド・ツアー第1節の中北米ツアーは、メキシコで始まり、アメリカのシリアスなロック・フェスであるRock On The Rangeで終えた。
 このROTRも過酷なステージであった筈だ。
 アメリカの都市部では既にワンマン・ライヴを行っていたが、地方のロックフェスでBABYMETALを知る観客は圧倒的に少ない。
 いつもの事ながら、BABYMETALの出演を報せる公式Facebookには激しい反発が書き込まれていた。セカンド・ステージの早めの出番。天気も悪かった。

 それでも――、

 メキシコでは素晴らしいファンが多く集まった。SU-METALは流石に万全の歌ではなかったが、最後まで力一杯演じきると、普段には見せない笑顔を満面に浮かべ、いつも以上にテンションの高い「See You!」を叫んだ。
 ROTRでは、メイン・ステージ前を空にして、観衆が押し寄せた。メタル・フェスに近い強面の観衆が本気で盛り上がり、無数のサーファーを泳がせ、気迫のWall of Deathを発生させた。

「困難」をわざわざ求めたのが、中北米ツアーであったのではないかと、私は思っている。
 その経験無くしては、Reading+Leedsを迎えられない。そういう事だったのではないか。



¶ROCKAVARIA~Rock Im Revier~フランス~スイス~イタリア~Rock In Vienna

 第2節ではドイツのフェスに二連続で出演。平日をヨーロッパの小さな箱を回っていき、オーストリアのフェスに出演した。
 ドイツのフェスはまだ肌寒い時期であり、フェス自体の集客も芳しく無さそうであり、またBABYMETALの認知度は、昨年ケルンでライヴをやってはいてもそう高まってはいない様だった(ドイツの著作権機構が、YouTubeに於けるBABYMETALの動画をあまり認可していないという事情もある様だ)。
 ドイツのフェス、ROCKAVARIA(屋内)とRock Im Revier(野外)での持ち時間は45分程度と、BABYMETALとしては長い枠が与えられ、『悪夢の輪舞曲』『おねだり大作戦』という硬軟両極のプログラム(それに加えて『ヘドバンギャー!!』も)が海外のフェスとしては初めて披露された。
 アメリカのROTRの観客とは全く反応が異なり、いわゆる「地蔵」(棒立ちで見ている観客)が多勢であった。Limp Bizkitがヘッドライナーを務めるフェスであり、『おねだり』は受けるだろうと思ったが、あまり反応は無かった様だった。
 しかし勿論BABYMETALのステージに熱狂する観客も少数ではあるが目立ってはいたし、後に再訪した時にはコアなファンが多く集めた。
 こういうファンがいたというリポートもある(ドイツ語)

 フランス、スイス、イタリアと1000人規模の会場でのライヴは、満員にするまでには至らなかったが、空調もあまり効かない高温度の過酷な条件であっても、BABYMETALは連夜で「ライヴという闘争」に打ち勝ち、集まった観客を熱狂の渦に巻き込んだ。

 ウィーンで開催されたフェスは、まさにReading+Leedsと近い感覚のライヴだった。
 昼間早い時間での出番に、当初はあまり観衆がステージ前にいなかったのが、演奏が始まるとどっと観衆が押し寄せた。
 キツネサインを掲げる人は中後方にはあまりいないが、セットリストが進む内に歓声と拍手が増えた。
 見た事もない巨大な高細度のスクリーンがなかなか優秀なキャメラワークで、3人や神バンドのクローズアップも見せたのも良かった。
 BABYMETALのステージに集まった観客の満足度は明らかに高かった。



¶フランクフルト~ベルリン

 日本でライヴ勘を失わない様に、ファンクラブ限定のライヴも間を置かずに行い、今年最大の山であるReading+Leedsへ向けて、着実にピークを上げていく。
 当初の発表にはなかった、ドイツでのワンマン・ライヴがReading直前に設定され、3人と神バンド、ライヴ・サポート・クルーはこれ以上は無いまでに調整が出来ていたのだった。

 

 Reading+LeedsでのBABYMETALの出番がメイン・ステージ1番手だと発表された時、私を含めたファンの一部はSonisphereの時の様に、開催までにはもっと良い時間帯へ変更される事を期待した。
 しかしその措置は無く、オープニング・アクトを務める事になる。



¶Reading+Leeds Festival 2015

 Reading+LeedsはSonisphereと同じ様な巨大野外フェスだが、全く様相が異なる。
 メイン・ストリームのバンドを聴きに来た若い観客が主体だ。
 そして、言わばアクシデンタルにメイン・ステージに立った昨年とはBABYMETALも、BABYMETALを取り巻く状況も異なっていた。
 既にCDを世界発売しており、市場的にもBABYMETALは最早他のミュージシャンと同等な立場となっているのだ。
 しかしBABYMETALのプロモーションは5年前とあまり変わっていない。頼みはYouTube動画であり、ヴァイラルな認知の拡大を期待するというもの。
 今年BABYMETALは、Kerrang!とMetal Hammerから賞を受賞した。イギリスに於いては明らかにBABYMETALの存在感は高まっていた。

 Reading+Leedsのステージは、とてつもないハードルが上がっていたのだ。
 私はこのフェスでどういう結果を残すのか、極めて楽しみである反面で、勝手に心配をもしていたのだった。
 上記の様にこのフェスは「失敗が許されない」ステージだったのだから。

 そしてBABYMETALはやってのけた。
「いつもの様に」、しかし、「最強で最高」のパフォーマンスで。

 

 過日公開された、Sonisphereに於ける『イジメ、ダメ、ゼッタイ』は、BABYMETAL史上でも間違いなく最高ランクに入るテイクだ。
 SU-METALの歌声と表情は何度見ても心が揺さぶられる。しかし、SU-METALのベストな歌という訳ではなかった。様々な想いが去来しつつのクライマックスなのだ。

 Reading+LeedsのSU-METALは、現時点のSU-METALの最高な歌声を聞かせてくれたと思う。
 Leedsではかつてないアドリブを入れるまでの余裕があった。

 Sonisphereがアクシデンタルな奇跡のステージだったのではなく、実力があり、そして
今のBABYMETALは数段上にステージが上がっている事を、9万人(公称)を前に証明してみせたのだ。



 時折BABYMETALの躍進について、これがマンガや小説だったらこんなに巧くいく物語など有り得ないという発言をネットで見る。
 物語作家である私から見ても、そう感じる時があった。

 私がBABYMETALが好きになってから僅かに8,9ヶ月。
 その間のBABYMETALに、何ら挫折や障害らしきものは無かった。
 このままReading+Leedsまで易々と成功させてしまうのか、という無根拠な畏れを抱いていた事を思い出す。

 しかし――、BABYMETALの5年以上にも及ぶ歴史を振り返れば、彼女達がまだ幼いと言える時期から、比喩で無く無茶なライヴ、無茶な歌、無茶な振付け(彼女達本来の年齢体力からすれば)をひたすらこなしてきたのだ。
 私はその時期の事を断片でしか知る事は出来ないけれど、彼女達が最初から思い通りにライヴが出来ていた訳では無い事は判る。

 つまり、ドラマ「BABYMETAL」は既に試練を乗り越えてしまっていた。

 かつてはライヴ最中の記憶が飛ぶ程にコンセントレーションを高める必要があったステージだが、今のBABYMETALは一切の隙も見せず、自分達自身をも楽しむものになっている。

「レディング」と言えば、30年前にBOW WOWがペットボトルの洗礼を受けながらも見事に最後まで演奏を貫徹し、喝采も得たという伝説は有名だ(勿論、当時リアルタイムで知る事は無かった)。
 オジーの娘であれ、観客は気に入らなければ容赦しない。

 Sonisphereがうまくいったのだから、今度だって大丈夫だと私は思っていた。いや、そう思いたかった。現実的には、昼12時の開場直後という時間に、ゼロから観客をぎっしりと集める事など、どう考えても厳しい。
 だからReadingの時は、開演間際になってもSonisphereの時程に集まらなくても、「仕方ない」と無理矢理思おうとしていた気がする。
 BABYMETALがステージを終えた直後から流れたツィート群は、BABYMETALが「そもそも無理」な事を本当にやってのけた事を証言するものだった。

 私はすっかり安堵して、翌日のLeedsも同じ事が起こると思い込んだ。
 ところが、Leedsの開始直前は更に悲観的になる。
 それでも「いつもの様に」BABYMETALはライヴを始める。
 3人がどう思っていたのかは今のところ判らない。私がどう受け取ったかは、Leedsのログに記した。

 神バンドのメンバーの方が、余程Reading+Leedsのメイン・ステージに立つ事の昂揚と抑圧を感じていたのではないか。
 しかし3人だとて、どれだけ巨大な(質量の意味で無く)ステージに出ようとしているのかは読んだだろう。

 昨年Sonisphereのステージ・サイドで、強ばった表情で出番を待っていた彼女達の写真が忘れられない。だがもう、そんな3人はいない。
 それが、今年のReading+Leedsでの何よりも大きな成果だったと、私は思う。

 それを可能にしたのは、穿った見方だとは自分でも思うが、メキシコでのフィジカルとして挑戦的なライヴからスタートさせ、イギリス程認知が広まっていないアメリカのロック・フェスへの出演であり、ヨーロッパの小さな箱をウィークデイに回るという泥臭くも、確実に経験値が上がるライヴを積み上げたからだ。
 安寧なサクセス・ストーリーを演出してキャパシティを拡大していく方法も採れた筈だが、自ら望んでより困難で、しかも必ずや成功させる保証は無いイヴェントを設定していった。一度くらいはトラブルが表出する事だって覚悟したと思う。しかし演者とサポート・クルーは全て乗り越えてしまった。

 Wembleyは確かに大きなイヴェントになる。
 しかし、2015の海外ツアーはそれよりも大きな価値と意味を持っているかもしれない。




 

 イギリスの最大タブロイド紙The Guardianの電子版が、昨年のNew York公演以来にBABYMETALの記事を上げた。
 部分的に事実誤認はあるが、『おねだり大作戦』の歌詞などにも言及しており相当に理解を深めている。
 いろいろと間違っていました。お詫びして訂正します。


2015年9月 2日 (水)

Reading Fes The Best FanCam Ever

 何故にタイトルまでreddit風。
 コメント欄でもお教え戴いたが、サウンド・チェックから収録された極めて臨場感のあるファンカム。


2015/08/29/READING BABYMETAL LIVE(その1)

2015/08/29/READING BABYMETAL LIVE(その2)

Reading+Leeds国内報道とSSE Wembley チケット発売

 記録記述更新。

 2日午後、日本のネット・メディアで一斉にBABYMETALのレディング+リーズ出演に関する報道があった。
 アミューズが発したプレス・リリースがソースなので、どの媒体もほぼ表現も使用写真も同一。
 記事によるとレディング+リーズでのべ9万人を前にBABYMETALが演じた、と読めるのだが、この数字が3日2会場の総入場者なのか、BABYMETALが出演した2日間の総入場者であるのかは判らない。オープニング・アクト時間の入場者数としてはちょっと受け取れないのだが。

 そして早くも来年4月にウェンブリー・アリーナで開催するライヴのチケットが発売開始となり、既に先発販売の立席は売り切れた模様。
 私も行けるなら行ってみたいとは思うが、そんな先の時期に日本を空けられるとも思えず。もしあるならライヴ・ヴューイングでも見てみたいとは思う。




 既に発売となっているが、河出書房新社から故・金子國義画伯を偲んだ本が出版されている。
 津原泰水さんが責任編集を務めている。
 この様な本に場違いも甚だしいが、画伯が最後にカヴァーを装丁された本の著者として、一文を寄せさせて戴いた。

KAWADE夢ムック 文藝別冊 金子國義

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 関係無い事ついでに。
 キネマ旬報に原稿を書く為に、10月1日から公開となる黒沢清監督作品「岸辺の旅」の試写を観た。

 映画そのものについては原稿に書くが、主演の深津絵里さんの演技は正直打ちのめされる程のインパクトがあった。こんな凄い女優になっていたのかと。

 この映画はヒットするに違いないし、するべき映画と思う。よろしければ是非。

 

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