« 横浜アリーナ ACT-II 観戦報告 | トップページ | Jordan YUI MOA »

2015年12月23日 (水)

エクストリームな音楽の精神性

 早いもので、横浜アリーナでBABYMETALを観てから10日も経ち、2015年も終わろうとしている。
 この間にBABYMETALは、来年の北米東部を絨毯爆撃するツァー日程を発表し、2016年のメタルレジスタンス第Ⅳ章は北米が相当重視されている事が明らかとなった。

 観戦報告エントリのコメント欄では、音響についての意見が多く書かれた。私自身が一日に一回もコメントを読めず、何も出来なくて大変恐縮している。

 問題意識を持っておられる方が多いのは間違いない事で、それが互いに認識出来ただけでも意味はあったと思っている。モトバさんの書き込みは大変に参考になり、書き込みには感謝したい。

 当然ライヴ興行側とても、改善の努力はかつてもこれからもされる事には疑いがない。

 もっと酷い音で金を取る興行も多い中で、プロジェクトBABYMETALは自主興行としては最善を尽そうとしている事は確められたと思っている。

 私がブログのみならず、公的な発言を躊躇ってきたのは、先に記した通り家族の闘病に際しているからだ。これについては高齢という事もあり、元通りに回復は出来ないものだ。
 だから、YUIMETALこと水野由結が幼い頃、家族の闘病に際して『Over The Future』という楽曲と、可憐Girl'sという存在が強く支えたという状況とは異なると思う。
 ブログを沈黙している間、私はBABYMETALの楽曲も動画にも触れなかった。ネットからの情報も、まとめブログを数日に一度見る程度になっていた。
 BABYMETALの楽曲は確かに元気をくれる。
 私の様な状況で、BABYMETALが支えてくれると感じる人もいるだろう。

 しかしこういう状態にあると、私は音楽もモラトリアムな指向に陥る様だ。
 何が契機だったのかも忘れたが、11月頃はThe Billy Cobham and George Duke Bandにドハマりして、それしか聴かない時期があった(ライヴアルバムが一枚とライヴ映像があるだけなのだが)。
 コブハムは自身のリーダー作や初期のバンドDreamsなど、自分がバンドマスターになるとつまらない音楽しか作らないのだが、故ジョージ・デュークがザッパを抜けてジョイントしたこのバンドでは、泥臭いファンクとフリー・ジャズ、ザッパ譲りのカンタベリーなプログレ風味まで混在させて、70年代中盤の最先端な音を創っていた。
 二つ打ちロールを凌ぐ一つ打ちのロール、両キックによる足のパラディドゥルと、コブハムは孤高のテクニシャンだったが、全く後継的な存在は現れなかった。
 このバンドのベースはアルフォンソ・ジョンソン(Weather Reportではジャコの前任者)で、デュークと共にヴォーカルも務めている。フレットレスのランニングではジャコを凌ぐ様なフレーズも聴かれる。ギターはジョンスコことジョン・スコフィールド。後年とは全くプレイ・スタイルが異なり、ソロでも全くアウトなラインは弾いていない。

 そしてその少し前に本ブログで紹介したWeather Reportの未発表ライヴ集CDがリリースされると、こればかりを聴き込んでいた。
 2ヶ月程ベースに触ろうという気も起きなかったのだが、ジャコの最もキレキレだった極く短い期間の録音に触れると、ちょっと触りたくなり始めた。
 司令塔ジョー・ザビヌルは、“フュージョン”と自分達の音楽を呼ばれる事に違和感があったという。
「俺たちは何も融合なんかしていない。心の中から生まれた音楽をやっているだけだ」

 Weather Reportの音楽をどう表現すべきか、全く知らない人に説明するのは困難だし、一言で言えるものではないのだが、その典型の一つを挙げれば「超高速4ビートのビバップ」だと思っている。8や16の曲も多いのだが、ジャム的に20分も演り続ける楽曲の1パターンは紛れもなくこれである。
 モダンなビッグバンドくらいしか演らない(出来ない/そもそもやろうと思わない)「超高速4ビート」は、ジャコとピーター・アースキンという最強のリズム・セクションの、最もエナジーを発現した時期だからこそ成し得たサウンドであった。
 ひたすら「速い」というのは単純にスリリングさを増す。
 ロック/メタルで言えばスラッシュが同じ様な精神性で生まれた筈だ。

 ジャコはアナログ・ディレイを使って一人多重奏ソロを披露するが、ウェイン・ショーターはまるでシーケンサーの様に同じミニマルなフレーズを、ソプラノで延々と吹く。
 機械(打ち込み)を模す演奏はジャズでも試みられてきたのだった。

 さて、全く関係の無い事ばかりを書いてきたと思われそうだが、ここまで読むと言わんとする事は感じられただろう。
 Weather Reportのジャズとしてのエクストリーム性は、BABYMETALのエクストリーム性と左程掛け離れてはいないのだ。


 私が横アリまでBABYMETALの楽曲に触れ難いと感じていたのは、聴けばやはり、それで頭に浮かんでくる事柄を書きたくなるだろうし、しかしそれを書く気分にはなれなかったからだ。

 横浜アリーナACT-IIの日、私は開場15分前くらいに現地に着いた。
 横アリの正面まで伸びる道沿いの飲食店はBABYMETAL特需を見込んで、チケット提示で10%OFFになっている。
 会場前の男子トイレに長蛇の列が並んでいるのを見て私は踵を返し、どこかで時間を潰そうとぶらつく事にしたのだが、店先で音質の悪い拡声器で流れる『4の歌』を聴いた。本当に音質が悪かったのだが、BABYMETALの楽曲はまだ私の心をワクワクさせてくれる事が確認出来た(皮肉にもライヴ自体では『4の歌』は聴けなかった)。

 もう何も無いとは思いながら物販コーナーに行く為に、アリーナ外側を一周させられる。並ぶ行列を裁くにはこれが良いのだろう。
 ブルータル・コーチジャケットのLは大きめな様で、これが買えた。Tシャツはもうないんですよね、と一番右端の販売員の女の子に訊くと「Lならあるんですけど」と返された。「XLなんですけどね」と無念そうに言うと「ですよねぇ」と言われて哀しかった(色々な意味で)

 後輩のHAGARI-METALを誘えたのでぼっち観戦にもならずだった。
 そして、ライヴが始まったらひたすら愉しんだ。
 感動のあまり泣く事もなかったが、自分の心が久しぶりに楽しく弾んでいる事を自覚出来た。

 報告で書き忘れたが、ACT-IIは厳密には「ノーMC」ではなかった。『BABYMETAL DEATH』の後、三人は「はっじまっるよ~」と声を揃えてショウの開幕を宣言したのだ。
 ライヴで見る事はもう叶わないのかもしれない『君とアニメが見たい』のほんの1フレーズではあるが、それを見て聴く事が出来た私は極めて幸運だった気がしている。

 アリーナ・シートで観られる機会が今後もあるのかと思うと気が重い。
 東京ドームは行かずばなるまいが、いつかまた抽選に受かってZepの2階から観てみたいものだ。


 本ブログは、近いうちに『Road of Resistance』の論考をアップし、予定通り一旦休眠させようと思う。
『あわだまフィーバー』についてもあれこれ書きたい事は既にあるのだが、来年4月に音源が発売されるのだから、それを待つべきだと考えた。

 長文コミュニティとして成立してしまったコメント欄は存続させたいと思っているが、管理方法なども含めてこれについては考えさせて戴きたい。

« 横浜アリーナ ACT-II 観戦報告 | トップページ | Jordan YUI MOA »

コメント

丁度1年前位ソニスの動画を見てベビメタにはまり
現在に至りますが、その際に何処かのブログでこちらを知り
それ以来こちらのブログを楽しみに見させていただきました。
もう少しで一旦お休みするという事で初めて書き込みしました。

来年4月の待望のセカンドアルバムが出た後、
また色々の話が聞ける事をのんびりお待ちしております。

ポリスのSynchronicityLIVEが今までで最高だったという話が
出た時は再結成LIVEも見に行った身としては凄く嬉しい気分になりましたw
ポリスも色々な音楽の融合をしていたので、ベビメタもそういう所に惹かれたのかも?
( MOA-Metalのギミチョコの最初のニヤリにやられたんですが・・・w)

週末に小さな頃からだいすきなSWの新作を見てきたのですが、
見終わった時に思ったのは(作品の批評でなく)
「今、SWよりベビメタの方が自分の中では上になったんだな・・・横浜の時のワクワクを
越えられないなぁ〜」でした。そんなBABYMETALって何なんだろ?

話は逸れましたがw
色々と大変な事とは思いますが、ご自身のお身体の方もお大事になさってください。
今までありがとうございました! See You〜


横アリは落選祭りで行けず残念無念だったのですが、小中先生が初参戦されたので、参戦記で楽しませていただきました。
ベビメタの語る楽しみを、先生のブログで味わっていたので休眠は寂しい限りですが、まずはRoR考をお待ちしております。
あ、でも16年春からは新譜、ウェンブリー、米東部ツアーと激動ですので、お休み期間も短そうですね!?

とはいえご家族の事もあるので、看護する側がまいらないように、どうかご自愛ください。

自分が病気療養中にたまたまであったのがBABYMETALでした。
本当に元気がもらえていると思います。
昔からのメイトでは無いですが、思いに優劣があるものでもないと思います。
自分が年齢を重ねるのと同様に、彼女らも成長します。
いれば自分の娘のような彼女らを見守り,楽しませてもらえる事に
感謝しつつ,また誇りに思う気持ちは皆同じだと。
それはいままでも、またこれからも。

 RORの論考で一旦休眠されるとのことですが、2ndアルバムが出れば、また新曲の論考を復活していただけるものと思いますので、のんびり楽しみにお待ちしたいと思います。
 自分はRORの良さが最初の頃全然わからず、ベビメタは方向性を間違っているのではないかとの思いから、前にここでも悪口めいた書き込みをしてしまい、大変反省しています。RORへの認識が変わったのは幕張でのライブ。RORで乗っている自分に気づき、びっくり。今回の横アリでは最も楽しかった曲のひとつでした。
 自分が最初RORに対してネガティブだったのはなぜなのか、そしてその後好きになったのはなぜなのか。自分は元々メタラーではなく、ベビメタを聞き出してメタルにも触手を伸ばしてみたものの、今に至るまでメタルの良さがよくわからないのが原因なのか。(EDMやその影響のあるコーンとかのほうがまだ心地よい)。
小中先生のRORの論考で少しでもその原因が分かればと期待しています。

「君とアニメがみたい」の代わりが、今回の「空手(仮)」なのだろうと邪推します。そう考えるとますます「君とアニメ――」は……。
「Catch me if you can」もそうですが、曲全体が寸劇のような構成になっているのがベビメタの特徴でもあり、面白さでもあるので、こういう楽曲というか演目も続けていってほしいです。
「空手」はいいのですけど、なんというかマジメすぎます(苦笑)。
ふざけているのだけどおもしろカッコいい――そんなベビメタもたくさん“みたい”です。


精神性ですか。心臓に斬り込んで来ましたね。
メタルと言いつつ既存のメタルでない何かを常に提示してファンの期待を裏切り続けるバンドはあまり例がないと思います。
世の中を完全に塗り変えると言うのは、それまで常識であった概念を新しいものに入れ替えて、対立していた敵を丸ごと味方にしてしまう時にのみ起こり得るわけで、
オセロゲームのように敵が味方に一気に変貌する状況を次々に目の当たりに見せられてしまうと、これは一種の無血革命なんではないか?とまで思ってしまいます。こんな摩訶不思議なアーティストが日本から出現したことは過去ないと思います。
昔のアニメみたいな「我らはひとつ」と言う古典的ユートピアを示すテーマにしてもライヴ参加者が同時にその世界観を実感してしまえばそれはもう単なる絵空事の作り話ではなく本物の神話伝説となるわけで、ある段階を超えると人種や国境を超越した世界を本当に実現させてしまうかも知れないと夢想してしまうわけです。

Mステ スーパーライブでのベビメタ披露曲は- ギミチョコ!!- に決まったようですね。
YOUTUBE公式の今現在の視聴数は38,247,417ですが、年内4000万視聴は達成可能かも。

今夜はTwitter監視しましょうかね。
ただのミーハー?

>nori

いいかげん全く主題にも触れず、自分勝手な話題を唐突にぶっこむのやめろよ
自由掲示板じゃねぇんだぞ
自己中か


無名さんスミマセンね。こちらに書き慣れてしまったので。
私も今朝知ったので、今夜の事なので速報性も大事かなと。

明日でした。失礼。

>無名 you are 自己中 ! www

23日の夜、近所仲間の早めのクリスマスパーティー兼忘年会が終わったあと
一人で十何回目かのNHKの「BABYMETAL現象」を見ました。
あれからちょうど1年。
以前は「いつ解散するのか」という不安がつきまとっていたけど、今ではそれは
あまり気にならなくなりました。しばらく続けるだろうという楽観もあるが、単に彼女達を
「見続けるしかない」と思えてきたのだ。
「BABYMETAL現象」でMOAMETALが言っていた「毎回、限界を超えていく」という
まさにエクストリーム性。武道館からソニスを経て、ワールドツアー、授賞、レディング
そしてウェンブリー、ドーム発表という「漫画みたい」な展開を見続けたこの2年。
オズフェスのような「ちょっとした」イベントでは余裕が感じられるほどになり、見る方は
もっとはらはらしたいと思ってしまう。
小中さんとコメント欄諸氏と一緒に見ることが出来た今年のエクストリーム感の余韻を
味わいつつ、来年も見続ける覚悟を固める師走でした。

>東京ドームは行かずばなるまいが、いつかまた抽選に受かってZepの2階から観てみたいものだ。

まったくもって同意ですが、はたしてZeppクラスで今後もやってくれるのかどうか・・・

>しかしこういう状態にあると、私は音楽もモラトリアムな指向に陥る様だ。

わかります。私も違う事情ではありますが、レディング&リーズ以降、BABYMETALモラトリアムとも言える状態にあります。ZeppもOzFestも横アリも、素晴らしいパフォーマンスだっただろうとは思うのですが、以前ほど映像を漁ったり、情報を追っかけたり、ベビメタ現象について考察したりすることが少なくなってしまいました。

最近はちょっとでもライブ活動が少なくなったり、曲のリリース期間が空いたりすると、すぐに「◯◯ロス」だとか言う言葉を目にしますが、こういうモラトリアムがあるからこそ、アーティストにとってもファンにとっても、次なる活動への原動力も湧いてくるのだと思います。

小中さん、大変な状況だとお察ししますが、モラトリアムの経験を通して、ますます興味深い論考をしていただけるものと期待しております。

>Mステスーパーライブ
牽制球が効き過ぎて、誰も走塁出来ないみたいですねw

はっきり言ってカメラワーク悪いし、音も良くない。
アラが目立ったけど、背景動画は結構凝ってて良かった。
炎も上がってるし、神バンドもちゃんとフィーチャーされてた。
物足りない所もあったが、得るものもあった。

エクストリームだったかどうかは分からないけれど、
多くの人にはStrangerでは有ったのかもしれません。

エクストリームとはラテン語の「最も外側の」という意味から来ている。
メタル業界にとってもアイドルファンにとっても「あり得ない方角から天下って来たアーティスト」と言う意味で、エクストリームという表現は良くベミメタの特性を表しているのかも知れない。
それに精神性が付くと言うことはベミメタ自身が「異端であること」を自認していると言う意味と理解できる。
異端児とされることは時に大変な危険を伴うのであるから普通の人間であればそれを避けて行こうとする訳で、それを敢えて突き進むには相当の覚悟がなければ耐えられないだろうと思う。

最初の北米のメタルフェスティバルに参加する前のアウェイ感は凄まじい重圧になっていたが、幼い少女達は難なくこれを撃ち破り完全に征服してしまう。

この奇跡の万能感が私達の中の眠りこけていた闘争心に火を付け激しく鼓舞する理由なんだろうと思う。

アテ振りでも、毎回一生懸命盛り上げようと顔笑る神バンドに感服しました。
エクストリームな矢が、少しでも多くのMステ視聴者の心に刺さればと思います。

MステでBABYMETALを初めて見たという人が、「イチゴ大福を初めて食べた時の
衝撃に似ている」とツイートしていて、持論が確認できたのが収穫。
あ、以前そういうコメントをここでしたことがあるのです。
Bohさん頭振りまくりで笑った。ステージから火噴いてるし。

Mステで初見客は相当の衝撃を受けた様子。
彼らにこのブログも早晩見つかるだろうから初々しい反応が来年は期待出来そうです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: エクストリームな音楽の精神性:

« 横浜アリーナ ACT-II 観戦報告 | トップページ | Jordan YUI MOA »