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2016年2月

2016年2月20日 (土)

期待高まる2枚目

 情報まとめ的な更新はしないつもりだったが、飢餓状態のファンにとってここ数日の怒濤の情報には翻弄させられた。
 先ずフランス版ダウンロード・フェスに出演が決まるが、本家イギリスでの出演は現時点で発表がない。昨年の事を踏まえれば、(アンディ・コッピングが)意地の悪い出し方を後出ししそうな気もするが。
 そしてアメリカのシカゴ・オープンエア・フェスにラインナップされ(ヴァッケンのアメリカ版だろうか)、ポスターにはロゴが大きく掲示された。こうした順列には当然反感を抱く観客もいるだろうが、主流のライヴフェス・シーンに於いて、BABYMETALが否応なく無視出来ない存在となっている事の証左でもある。
 色々と書き漏らしたので追記をしておく。オランダのフェスにも招かれ、希ガスレベルで和蘭の血を引く私としては喜ばしい。当然、Facebookでは早々に洗礼を浴びた。

 アルバムの発売週にはアメリカのTVショウに出演する事もearMusicから告知されている。去年の今頃はこれを期待していたのだったが、やっと今年遂に。

 先週には3月に放送されるらしい、NHKのスタジオ・ライヴが収録された。これも期待が高まる。

 METAL HAMMERが再びBABYMETALをカヴァーに起用し、しかも今度はホログラム3D仕様だという。ネット販売分は数時間で売り切れてしまう。
 日本国内でもミュージック・マガジンにインタヴュウを含む特集、NYLONはウェブ限定版ではあるが表1にBABYMETALを起用する事が告知された。

 そして遂に、2ndアルバム『METAL RESISTANCE』のアートワーク、トラック・リストが公開された。

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 これまで『違う』とファンに呼ばれていた楽曲は『ヤバ!』というタイトルになった様で興味深い。SU-METALの歌う歌詞には一切そうした文言は無いのだが、YUIMETAL+MOAMETALの振付けで、ブレイク時に「ヤバ!」というポーズと表情(実際そういう台詞の口)で「ヤバ!」と言っているのだ。このタイトルにはかなり捻った秀逸さを感じる。

 一方で、『KARATE』と呼ばれた曲は実際にそのままの題となっている。恐らくこの曲が2ndアルバムのリーディング・トラック扱いとなる様だ。MVも作られるだろうし、国外では単独配信もある様だ。
 誰でも一発で覚えられる曲想、空手の「型」を本格的に採り入れた振付け、久々に濃い演技性もあるプログラムである。
 横アリで初めて聴いた時から、これは若い客層を獲りに来た曲だと思った。フェスで共演する若手ラウド系バンドの曲に相当に寄せている。ヴォーカルの特にラスト・コーラスの歌い回しはまさにそうした楽曲のクリシェを踏襲している。
 しかし一方で、SU-METALが歌うメロディラインは、ヴァースのかなり低い音域とコーラス部の高域を鮮やかに歌い分けており、特に低い部分は前エントリでも述べた様に、実用域で声を出せる歌い手は他にそうはいまいと思う。
『Road of Resistance』よりも一層激しく困難を打ち破ろうという攻めの歌詞だが、極端な表現は意外に無くて普遍性(聴き手それぞれの状況で共感出来る)を持っている。
 それなのにタイトルが『KARATE』ってどうなのよとは思ったが、海外の一般者には周知された単語であり、刺さりやすいだろう。「上を向いて歩こう」が「SUKIYAKI」というタイトルで広まった例もあるのだから。

 これまでのライヴのみで披露されたままだった『No Rain, No Rainbow』は収録を喜ぶファンが多い。私個人的には、「今」のSU-METALの歌で大きく評価を変えそうだと思っている。

 締め曲が『THE ONE』(やはりこのタイトルだった)なのは納得だが、横アリ2日目のカーテンコール版は、ゴンドラ移動時間分リプライズが延々と続くアレンジであり(ライヴとしてはあれで良かった)、音源版は一層楽しみである。
 昨春幕張のラストでインスト+スキャット版が流れ、Dream Theaterというかペトルーチっぽいと私も思ったのだが、アレンジのイメージモデルはANIMALS AS LEADERS辺りなのかもしれない。

『あわだまフィーバー』、『Road of Resistance』が収録されるのは当然として、全くの新曲も期待に違わず揃えられている。
 中でも『META!メタ太郎』というタイトルはファンの間で電光の様に期待感が高められている。多くの予想はタイトルからしてBLACK BABYMETALの自作自演曲だろうというもので、私もそう期待している。
 メタルは「メタ+る」だったのかと目から鱗が落ちた。勿論この「メタ」は「メタフィクション」の「メタ」である。
 過去の仕事の多くで、この「メタ」を意識して導入したこの私が、全くメタルと繋げる発想が出来なかった事には非常に忸怩たる想いを抱いている。

『Amore - 蒼星 -』は、タイトルからすると『紅月』の後継的なSU-METALソロ曲だろうという人が多い。

 全く曲想が想像つかない『シンコペーション』というタイトルの曲だが、多くの日本語ロックに欠落しており、BABYMETALのこれまでの楽曲の多くに見出せるシンコペーションこそがグルーヴの要である事は、本ブログの主張の通りであり意を強くした。だがこれも実際のアレンジは「え、どこがシンコペートした?」(でも曲としては素晴らしい)的なオチまでも想像してしまう。尚、この曲の海外版では『From Dusk Till Dawn』というタイトルに変えられている。補導員に見つからないか心配だ。

『GJ!』はタイトルだけだと、まるでさくら学院の曲でも良さそうだ。
『Sis. Anger』は当然METALLICA楽曲のもじりだが、SisってのはSisterなのか。お姉ちゃんが怒ってる的な曲なのか。

『Tales of The Destinies』はDragonForce提供曲だろうという意見を見た。ああなる程、それも有り得るのか。ラス前であり、間違いなくメロスピだろう。

 ともあれ、BABYMETALが本気でアルバムを作っている事は明らかだ。
 相当にハードルは上がっているが、多くのファンの期待値を易々と上回るのだろう。歯車が噛み合ったプロジェクトとはそういうものだ。



 私的事情で仕事が遅延しており、『Road of Resistance』考の続きは暫くお待ち戴きたい。
 尚、前エントリのコメント欄で、ドラムのブラストビートについて、非常に興味深いコメントを書いて戴き感謝している。

 あと、旗パフォーマンスについてはさくら由来ではなく、こっちだと思います。

2016年2月12日 (金)

『Road of Resistance』考 2

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 私のBABYMETAL初体験はNHKの番組『BABYMETAL現象~世界が熱狂する理由~』だった。一部カットはあったが『Road of Resistance』も番組の最後に放送されている。音楽的には、正直に言って他の楽曲よりも印象的ではなかったのだが、何か異様な熱がステージからもオーディエンスからも立ち上がっているのは把握していた。
 その曲がアンコールとしてその場で初披露されたなどという事を知るのはずっと後になってからだった。

 翌年1月になってダウンロードが可能になった時が、本気でこの曲に向き合った瞬間だった。
 聴き始めて「おや?」と思った。この「おや?」については後半で触れる。

 最初に聴き通し終わった時の事ははっきり覚えている。
「これは否定出来ないわ」
 1人で部屋で聴いていたのだが、そうはっきり声に出したのだった。

 まだBABYMETALのこれまでの軌跡を探っている最中だ。アルバムの楽曲それぞれには好みのもの、そうでないものがまだあった。
 パワーメタルは基本的には好みの音楽ではない。理由は単純で、グルーヴが感じ難いサウンドだからだ。歌い上げるタイプのヴォーカリストが多いのも苦手だった。
『Road of Resistance』ははっきり、パワーメタル由来のメロスピ(メロディック・スピードメタル)のサウンドで作られていた。
 前提的な苦手意識を完膚無きまでに蹴散らかしたのが、SU-METALの最後のシャウト「AhAhh!」だった。
 5分20秒を疾風の様に駆け抜けるトラックだ。


 

 SEに続いて始まる序奏部、幾重にも重ねられたギター・オーケストレーションだ。極く薄く、男声チャントが白玉的に流されてはいるが、ほぼギター(+ベース)とドラムだけというソリッドなサウンドに本気さが伺える。
 そして序奏部が終わると法螺貝の音が響き合戦のサウンド・エフェクトが低いパーカッションの響きと等価で流される。
 Wall of Deathのイメージ・モデルはスコットランド対イングランドの戦争を描いた映画『ブレイブハート』である事は記したが、『Road of Resistance』では日本の戦国時代の合戦に置換されているのだ。正しくローカライズされていると言えよう。しかしやはりSEの音感的には、日本の合戦映画というよりもハンス・ジマー的である。

 ドラムのフィルでYUIMETAL+MOAMETALの「One, Two, Three, Four!」のカウントが叫ばれ、怒濤のビートが繰り出される。
 私が「おや?」と思ったのは、ここでのドラムとギターの刻みがジャストにシンクロしていないところであった。
 5小節目辺りからはシンクロするのだが、インテンポに入り始めは些かバラついている。

 BABYMETALのCD音源トラックは、概ね打ち込みで作られている事は最初に聴いた時から判っていた。
 シングル・リリースされた楽曲はそうでなくては作れない音になっていたし、それをライヴで無理矢理生バンドで演奏する事が私の様なリスナーには痛快さとして感じられていた。
 アルバムに入っている曲で後半に収録されたものは、既にBABYMETALのライヴは、骨バンド「ベイビーボーン」のアテ振りではなく、「(メタルの)神バンド」が演奏する方向性に定まっていただろう。つまり、生で演奏する事が意識されつつはあった筈だ。
 しかしそこで作られていた曲は例えば『4の歌』であったり『悪夢の輪舞曲』という、打ち込みに特化したサウンドの楽曲だった。

『Road of Resistance』は、ライヴ演目が何よりも主として作られた筈だ。
 シングルとしてリリースされる事は無く、国内ではダウンロード、海外ではボーナス・トラックという、音源販売は二の次という扱いである。
 だからとて、音源としては相当に力(と予算)が注がれ生み出されている。

 CDの売り上げよりもライヴやフェスの収益の方が大きくなっている現代の商業音楽に於いて、こうしたアプローチはBABYMETALに限らず増えていくのかもしれない。

『Road of Resistance』音源のサウンドには異様にライヴ感が横溢している。
 勿論シークェンス・トラックがまずあって、幾多のトラック、数多くのパンチインが重ねられているだろう。だとしても――、

 以前本ブログで軽く述べた事があるが、私はこの音源のドラムは生で演奏されたものだと思っている。
 冒頭インテンポに入って早々の僅かなリズムのバラツキは、もし打ち込みならば補正が出来た筈だ。しかしそのままの勢いで全曲疾走しきっている。エンディング直後のオマケのスネアには「やってやったぜ」感があまりにリアルに感じられるのだ。
 あくまで想像であり、外している可能性は大いに自覚しているが、個人的な見解として述べておく。


 メタル楽曲としてのアレンジは、様々なエッセンスを巧みに消化して生成されている。これについては発表間もない時期、BABYMETAL言説ブログの先達であるこのエントリで解析されていた。

 この楽曲の歌メロは、SU-METALにとって高すぎず低すぎず、最も楽に声を伸ばせる音域だ。
狼煙の光が
 での声の広げ絞りなど、自らの喉を自在にコントロール出来ている。
 SU-METALの限界が無い様な高域にはいつも感動させられるが、アクターズ・スクール広島時代に中元すず香が好んで歌っていたのは低いアルト域のバラードだ。
 そもそも低い音域で安定して声を出すのは高域が伸びるのと同様に難しく、これも天分の要素だ。
 カレン・カーペンターの歌をカレンの音程で、他の歌手の殆どが歌えない。中元すず香はカレンほどスウィート・スポットが低い訳では無いが、ソロシンガーになったら果てしなく可能性は広がっている。

 YUIMETALとMOAMETALはこの楽曲では合の手というより、まさにコーラスだ。
 冒頭のカウントや、SU-METALのヴォーカルを追う「Resistance♪」、間隙を縫う「Just Now Is The Time」などで、BLACK BABYMETALらしい声が聴かれる。
 ただ、音源を聴いている段階ではYUIMETAL+MOAMETALのパートがあまりに少ないという不満を抱いた。
 ポジション的には『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の後継的な重要曲であるのに、『イジメ』での2人の存在感に満たないのは事実だ。

 しかし、後にこのプログラムのファンカムを多く見る事で全く考えが変わった。
 このプログラムの振付に於ける運動量はBABYMETALとしても最大値に近い。
 メロを歌う時はSU-METALはあまり動かないで済んでいるが、YUIMETAL+MOAMETALは曲を通じて動いているのは当然にしても、過去には無い様なムーヴメントが多いのだ。これまでとは異なる体幹の用い方が強いられるだろう。
 恐らくライヴでは、2人のパートはバックトラックが用いられているが、それも当然だろうと思う。
 振付けについてはまた稿を改める。


 音源に於ける最大の特色に、ギターソロでDragonForceの2人のギタリストがフィーチュアされている点がある。ただこれも、公式クレジットは無く、メディアでの談話で明らかとされているだけだ。

 ハーマン・リは談話で2013年頃にYouTube動画でBABYMETALを知ったという事を述べていた。早い段階でBABYMETAL側とは接触があったのではないかと思う。
 ハーマン・リは、音、そしてライヴでのプレイスタイルに極めて濃い独自性を持つミュージシャンで、『Road of Resistance』の2箇所にあるギターソロのそこかしこに、濃い刻印が施されている。
 しかしBABYMETALのトラックメイカー達は、実際のハーマンやサムを招く以前から、DragonForceのサウンドは強く意識していた筈だ。
『いいね!』の最後のコーラス直前のブレイクに弾かれるファミコンのビットチューン的なギターの高域フレーズは、ハーマンのプレイスタイルに極めて近しい。

『Road of Resistance』では、先ず1コーラス目の後に短いソロ・パートがある。ちょっとウェスタンを想起させるフレーズはDragonForceの初期アルバムで、幾つか近いものがあったが手癖に近いフレーズだと思う。
 そしてDメロ前にはこれぞ本気で演ったとしか思えない、ひたすらエクストリームにスピードとメカニカルな音階のデュオプレイが聴かれる。
 2人は出来ているオケに被せるだけでなく、ソロパートのコードも主導したのではないかと思う。

 2人のギタリストの参加は、驚くべきサプライズというよりも、そうなって然るべき運命があったかの様なコラボレーションだった。


 つづく

2016年2月10日 (水)

『Road of Resistance』考 1

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Credits:
作詞:KITSUNE of METAL GOD・MK-METAL・KxBxMETAL
作曲:Mish-Mosh・NORiMETAL・KYT-METAL
Featuring Guitars:Sam Tottman, Herman Li

 2014年11月8日、イギリス・ロンドンO2 Academy Brixton公演で初披露。
 2015年1月7日に発売されたCD『LIVE AT BUDOKAN ~Red Night~』(2014年3月の武道館公演初日を収録)の初回特典として、スタジオ録音版がダウンロードのみで配布された。
 ファースト・アルバムがearMusicから世界発売となった際にはボーナス・トラックで『ギミチョコ!!』ライヴ版と共に追加されている。

 2013年には着手されていたという。
 クレジットが不明だったが、『イジメ、ダメ、ゼッタイ』等のトラックを手掛けたチームの共同制作の様だ。

 BABYMETALの楽曲には、程度の差はあれどの曲にもネタ性が盛り込まれている。 メタルの模範的な楽曲への目配せであったり、冗談を骨子にしていたり、その表現は様々だ。

 この『Road of Resistance』は実にストレートなメロディック・スピード・メタルである為、ユーモアが足らないと感じる人がいる。
 確かに歌詞も深読みの余地はあまりない。

 しかしネタ性はあまりに大きな要素として前提的に横たわっている。
 BPM205というテンポがそれである。これはあまりにも無茶なネタだと言えよう。

 だが、SU-METALが歌うメロディラインはそんなに急いだものではない。
 つまり歌メロ本体は半分のBPM100程度のミドルテンポであり、伴奏だけが倍速になっているのだ。
 16分音符の刻みもツーバスのドラムも、笑うしかないまでに異常なテンポで演奏しなければならない。

 アレンジ、演奏については後に触れるとして、まずはタイトルと歌詞から見ていこう。
 歌詞もクレジットも、ダウンロード販売だったので不明だったのだが、歌詞についてはCSスペースシャワーTVで放送された歌詞入り版ミュージック・ビデオで詳らかにされた。
 クレジットはネットでJASRACに登録されたデータが発掘され、それで明らかになったのだが、作詞の筆頭者「KITSUNE of METAL GOD」のクレジットがやはり異様だ。こういう楽曲を作ろうという時に、何か啓示的な出来事があったのかもしれないと想像するばかりだ。

『Road of ~』というタイトルはやはり、さくら学院由来ではないかと思う。
 さくら学院で毎年巡ってくる卒業公演が『The Road To Graduation』だからだ。
 3人にとって特にこのタイトルは思い入れがし易かった筈だ。

「アツいハート」が、文字面では「鋼鉄魂」という漢字が宛てられている以外は実に汎用性の高い、自分達自身を鼓舞し得る歌である。
 一つ難癖をつけるなら、Resistanceであるのに「Forever」と歌うのは如何なものかとは思う。抵抗運動の対象が何かはさておくも、抵抗が永遠に叶わないものであるかの様にも聞えるからだ。
 いやまあ、それも含めてのネタ性なのだろうが。

 Jポップでは常道ながら、BABYMETAL楽曲としては異例な英語歌詞と日本語歌詞の交錯が見られる。ずっと後に作られる『THE ONE』(仮称)でもこの手法は継続されていく。
 せっかく日本語で押し切ってきたのに、と残念な気分を持たない訳では無い。しかしこれも楽曲の企画趣旨を推し量ると納得出来る。

『Road of Resistance』は、単なるレパートリーの追加ではなく、極めて重要な意味合いを持たせられていた。

『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』で、曲自体に観客がMIXを打つ(と想定された)パートが設けられていた。『ヘドバンギャー!!』や『いいね!』など、観客総員での激しいヘドバンを強いるプログラムもある。
『Road of Resistance』には、大きく二つの要素が設けられている。
 一つはWall of Deathを明確に強制的に起こす事であり、もう一つは観客が総員で合唱するシンガロングである。

 Wall of Deathというラウド系ライヴの観客行動の起源は、さほど遡らない。
 メル・ギブソンが自ら監督して主演した映画『ブレイブハート』(1995)の合戦描写がモデルなのだ。
 BABYMETALのライヴでは、『イジメ、ダメ、ゼッタイ』のイントロでインテンポになる瞬間にダッシュするYUIMETAL+MOAMETALに合わせ、観客がWall of Deathを行うのが慣例となってきていたが、『Road of Resistance』ではSU-METALが腕ではっきりと空間を空ける事を観客に指示する。
 曲冒頭の構成もアレンジも、Wall of Deathを如何に気分良く盛り上がれるかを至上命題として作られている。

 ライヴでこのプログラムが披露される直前には、ほぼ必ず紙芝居のイントロがつき、念入りに企画趣旨を観客に周知させている。

 BABYMETALのモッシュは、激しく身体をぶつけあうのではなく、「楽しく押しくらまんじゅう」という“モッシュッシュ・ピット”と規程されてはいるのだが、国内のライヴハウスでもモッシュ行為は禁止となっているところが少なくない。
 それは海外でも同様であり、2015ワールドツアーでも会場によっては「Wall of Death」が「Into The Pit」というフレーズに差替えられていた。

 シンガロングについては細かい説明は不要だろう。
 ライヴやフェスで、人気アーティストが如何に観客と共同で感動的な体験を共有するのか、十二分に知り尽くした上で練られた企画性こそが『Road of Resistance』の趣旨であった。
 それがあまりに明確である為に、リスナーはこの曲に初めて触れた時にある種の気恥ずかしさを生成するかもしれない。
 いや、そもそも「僕らのレジスタンス」という歌詞自体が相当なものだ。

 本ブログで『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の歌詞について、狙い所は判るけれども、部分的には度を越した韜晦をしていると述べた。
『Road of Resistance』はベクトルは違うが、やはり「気持ちは判るけど」という感情を抱く点では近しいかもしれない。

 ただ、どちらの曲であっても、BABYMETALが堂々とライヴでこのプログラムをやりきってしまうと、少しの気恥ずかしさなど霧消してしまう。その事が自覚出来るだけ、『Road of Resistance』は私にはとっつき易かった。

 

 Wall of Deathにせよシンガロングにせよ、日本国内の観客だけではなく、海外の、特にフェスの観衆を意識したものだ。くどくど説明せず、フェス文化のキーワードと、SU-METALの端的な「Sing!」という指令が現象を引き起こすのだ。
 英語歌詞の導入は、海外、欧米圏の観客に「より伝えたい」という気分の現れだと思うが、これはジレンマだ。BABYMETALは、日本語歌詞のままでポピュラリティーを得つつあるという極めて特異な成り立ちをしている。「BABYMETALの日本語問題」の解釈はさておくにしても、急に英語で歌いだしたBABYMETALが肯定されるのかは未知数だった。

 果たして、2014年11月、ロンドンでこのプログラムは初披露された。
 この2年程、メディアへの談話をあまりしなくなっているKOBA-METALは、O2 Academy Brixtonで『Road of Resistance』を初披露した理由について、「YUIMETALがそう希望した」からだと述べている(『ヘドバン』誌)。
 恐らくは振付けを完全にマスターし、神バンドもリハは既に重ねていた時期ではあろうけれど、やりたいと希望するYUIMETALもYUIMETALだが、承諾してやらせてしまうプロデューサーもプロデューサーだ。
 シンガロングは最初こそ戸惑いで静かに始まったが、すぐに大合唱となった。

 

 次回からやっとオケの検討に入る。
 つづく


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