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2016年6月

2016年6月24日 (金)

『Road of Resistance』考 5

Wembley

【ギターソロ2】

 シンガロングは会場によって長さが可変する。最長だったのはやはり2015年1月新春キツネ祭りだったと思う。
 ステージに出島があると、YUIMETAL+MOAMETALは再びフラッグを手にして合唱を統率する。
 シンガロングが終わると二つ目のギター・ソロなのだが、ここが振り付けでは最大の見せ場となる。
 今でも尚、この部分についてはアンビバレンツな気持ちを抱く事を告白しておこう。
 私は観客視点というよりは神バンド側に身を置いた見方をしていたらしい。
 バンドなら、ギター・ソロはギタリストにスポット・ライトが当たって欲しいと思ってしまうのだ。しかもただのギター・ソロではない。DragonForce(このパートは主にサム・トットマン)が、出来る限りに無理な量の音符を詰め込んで作り上げたソロであり、それを神バンドは平気の平左で弾き倒しているのだ。
 しかし観客は3人を凝視せざるを得ない。それだけの事を展開しているのだから。

 BABYMETALの振り付けで目立つものの一つとしてここで挙げられるのは、無目視のまま後退しながらポジションにつくというもので、それまでフリーに動いていた3人がその所作により所定位置についてからフォーメーション・シンクロを始める。
 目まぐるしく、ぐるぐると回すパートが多くトリッキーな振り付けだが、よく見ればここは歌メロならぬギター・ソロにダンスがついている事が判る。ギター・ソロのフレーズを視覚化した様なダンスなどBABYMETALとしても前代未聞だ。
 3人一斉にハイキックを喰らわせるなど、このパートでは要所がポージングで決められる。それ自体は通常のBABYMETALコレオグラフィであるが、このプログラムのポーズは「可愛い」ではなく「カッコいい」ものだ。
 それも生半可ではなく、ヒーロー・アクション映画のヒロインそのものになっている。
 防御・威嚇・牽制と次のモーメントに備えた隙の無いポーズで、格闘面での機能性までも感じさせる。
 先に挙げたYUIMETAL+MOAMETALによる、仰け反りからの立ち上がりもアクション映画の擬闘的なニュアンスであったが、このパートはSU-METALをメインに動く。
 もう間違いなく東映戦隊ヒーローがモデルだと断言出来る。
 思えば戦隊モノも、アメリカで「Power Ranger」としてリメイクされた日本の輸出文化の一つでもあった。大きく足を広げ、中腰で相手に向かっての「構え」ポーズは、アメリカの「子ども」にとっても「カッコ良い」と感じられるものだったのである。
 1拍目の裏にカウンター・モーションを入れたりと細かい振り付けも多い。
 このパートは大きな動きはどちらかと言えばSU-METALに任せて、YUIMETAL+MOAMETALは従側となる。時間差モーションの動きはSU-METAL程には大きくない。しかしこのパート後は再び、上下左右、最大限に動きまくり始める。

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【Dメロ】

命が続く限り 決して背を向けたりしない
 SU-METALが歌い出しながら、ポジションは再び後退し、両サイドがフロントとなる。
 2人とも口ずさみながら、身体を最大限に使って歌詞とメロディを視覚化する。
On The Way
 ここで転調。

【ラスト・コーラス】

 サビに戻ると同時にSU-METALと2人が前後を入れ替える。
Stand and Up and Shout!」「Shout!
 この「Shout!」は、本来の曲想ではライヴ感的に音符に填まらない域で実際に叫ぶ様なものだったと想像するのだが、SU-METALはやはり本質が音楽的なのだろう、きちんとコードとして適合する音程で叫ぶというよりは歌っている。初期はどっちつかずな感じを受けていたが、すぐに確信的な歌い方となった。
 コーラス・パートのYUIMETAL+MOAMETALの表情は常ににこやかで、曲が始まる時点の真剣なものとは全く対照的だ。既にこのレジスタンスの戦いには勝利している事を確信しているという演出だろう。
 歌詞の検討で書き漏らしていたが、この楽曲の主語は「僕ら」である。不思議と言えば不思議だが、「レジスタンス」という語を用いた戦いの歌で「私たち」ではサマにはなるまい。女性アイドル・グループの歌詞としても、そう異例という訳でも無い。
 振り付けはやはり少女らしさに最終的には帰結しているので、このプログラムのジェンダー性は曖昧なまま止揚されている。

 一回目のギター・ソロ前同様に「僕らのレジスタンス」でYUIMETAL+MOAMETALは床に仰け反りながら拳を上げる(キツネサインではなく)。
 リタルダンドするので、仰け反りポーズは倍ほどの長さを2人は堪えねばならない。
 SU-METALが良きところで息を抜くと、やっと2人も立ち上がれる。

 昨今の概ねのライヴに於いてこのプログラムはセットリストの最後に載る。例外的に冒頭に実施される場合もあるが。
 ライヴの締めを担うプログラムであり、2014年までの『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の終わり際同様、3人はこのプログラムの終わりでは、やりきった達成感の笑顔に弾けている。
 最後の観客とのCall & Response「We Are!」「BABYMETAL!」がひとしきり続けられ――、

『いいね!』の場合はSU-METALは「ぷっちゃキツネあーっぷ!(Put Your Kitsune Up!)」と煽るのだが、2015年からは「Put Your Fox Horns Up!」というフレーズに変わって、未だに私個人は慣れない。というか、キツネに角はないよねという。キツネサインとブルホーンズが混同されている。普通に「Put Your Fox Up!」で良いと思うのだが。

 最後には、音源にもあるオクターヴ上の「Ah-Ah!」というSU-METALのシャウトで決まる。
『イジメ、ダメ、ゼッタイ』のクライマックスに引けを取らないカタルシスがある事は間違いない。
 しかし一抹の寂しさも感じる。
『イジメ』がラスト・ナンバーの場合は、バンドの伸し音を3人が「3,2、1」とカウントで止め、一斉にジャンプするという美しい様式があった。
 BABYMETALのジャンプする画像だけを集めた時があるのだが、彼女達は恐ろしく高く、しかし写真でどの瞬間を切り取られても美しいポーズで跳躍していた。
 身体的な成長に伴って、ジャンプ系の振り付けは軽減される傾向がある様だ。確かに着地時には体重の数倍のショックがあって負担が大きい。
『イジメ』がラストというライヴが今でも無くはないので、その時にこの様式を愉しませてくれればファンとしては納得出来る。
 或いは『Road of Resistance』のラストを、3人が叫ぶ様な演出のアレンジもアリだと思う。


【おわりに】

 楽曲が増え、ここらでマジなスピード・メタル曲をという意図で、それでは実際本当にそうしたシリアスかつBABYMETALらしい曲として作り上げる事がどれだけ難しいか、私には判る気がする。
 本来そうすべきとこで、軸からブレたりスカしてしまったりと、意図とは異なったものになってしまう様な例は音楽だけでなく映像表現でも極めて普遍的に起こってきた。

 非常に個人的な体験を書いてしまうが、『Road of Resistance』という曲の在り様はシリーズ物の最終話のシナリオに近いのだ。
 シリーズとしては、その途中途中のエピソードで描かれてきたモザイク総体が物語の本質であって、最終回がどうなろうと本質的な問題ではない。しかし視聴者は最終回が盛り上がらずに放り出されると、それで全てのエピソードも無価値になったとすら思ってしまうものだ。
 だから最終回を書くには、それ以前のエピソードの何倍もの体力が要るのである。決めるべきところをきっちり決めなければならない。
 そうした主題を『Road of Resistance』はスカしもズラしもせず真っ向勝負で結果を出しており、とても感銘を受けている。
 またコレオグラフィに於いても、MIKIKO-METALの表現が一段加速したという感覚を受けている。


2016年6月20日 (月)

『Road of Resistance』考 4

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【テイク違い】

 さてコレオグラフィの本編に入るのだが、その前にこの楽曲のヴォーカルが『METAL RESISTANCE』の為にリテイクされた事を書き漏らしていた。
 最初に国内では配信で、『BABYMETAL』海外盤リリース時にボーナス・トラックとしてリリースされており、そのテイクに長く親しんできたのだが、2枚目アルバムのヴォーカル録りがオーストラリアのソニー・スタジオで行われ、『Road of Resistance』も再録音されたという。
 しかし私の耳で両者の違いが明確に判るのは「Stand Up and Shout! (Shout!)」の部分のみだ。ここは初出時よりも力強くなっている事は明らかだ。
 最初のテイクからして、SU-METALのヴォーカルは完成度が高かったのだと思える。

 オーストラリアでは他にも数曲が歌録りされたと知った時、何故オーストラリアでという疑問が湧いたのだが、やはりこれはアルバムに向かう姿勢の問題が大きかったのではないか。音楽産業が縮小するに伴い、都内のスタジオの多くが無くなっている。
『あわだまフィーバー』など、既に仮歌もライヴでも幾度となく歌ってきた楽曲を改めて録ろうという時、ちょっとその辺で録ろうという訳にはいくまい。

 マッスル・ショールズというアラバマ州のド田舎町にあるスタジオ、白人中心のハウス・ミュージシャン達の演奏で、60年代R&Bの代表的シンガー(ウィルソン・ピケット、アリサ・フランクリン等々)をわざわざ出向かせて録音していた、という事は余程のポップス・マニアでなければ知られていなかった。しかしミュージシャン間にはその南部のド田舎で録音すれば特別なサウンドになると事が知られており、The Rolling Stonesも1969年に「Sticky Fingers」をここで録音している。特にミックとキースにとっては思い入れのある録音となった(2014年にドキュメンタリ映画『黄金のメロディ マッスルショールズ』が製作され、初めて私は全容を知った)。

 SU-METALは誕生日を録音スタジオで迎えたらしい。日本でもかつてならそうしたアーティストの気分を変える環境として、リゾート地のスタジオで合宿録音という手段があったのが、河口湖のそれを初めとして今はもうほぼ絶滅した。
 様々な日常のしがらみからアイソレーションして、歌に集中させるというプロデュースは実のところ王道なものだった。
(尚、この録音にはBLACK BABYMETALの2人は参加しなかった模様。)

【コレオグラフィとライヴ・パフォーマンス 2】

 イントロの激しい騎乗ダンスからAメロに入る直前、ギターとドラムの三連畳み込みに合わせた動きを両腕を交互に出しながら円弧状に回す。その直後の頭拍でビシっと決まる様を演出する為である。

 AメロのSU-METALは要所を決めるのみでダンスには参加せず歌に専念する。
 YUIMETAL+MOAMETALのムーヴメントはやはり基本的には歌メロを視覚化した様な符割で、精緻に緩急がつけられている。
狼煙の光が」という部分、SU-METALは巧みに声のヴォリュームを上下させる。これまでのBABYMETAL楽曲にない、スケール感が生み出されている。この上下に2人は波動拳的なモーションで、やはりぴったり合わせてくる。多くの場合2人ともここでは一緒に歌っている。歌心を持たねば表現出来ないムーヴメントである。

 多くのパートで2人は指を立てた手を顔の側に近づけては離す。
 ポーズをつけた手を顔に近づける振付けもMIKIKO-METALの振付けでは大きな特徴となっており、Perfumueで繰り返し導入された。可愛らしく見えるという理由を何かで読んだのだが、この効果は単にそれだけではないと思える。
 ステージに立つ表現者を見る時、人はやはり顔を中心に見るものだ。視線のフォーカスは基本的に顔を中心とした画角でまず切り取られている。全身の動きが目に入ってくるのは、そのパフォーマンスを見る事がある程度慣れてからになる。
 指を顔近くに置くポージングは、そこから「ほらこっちでも面白い動きしているよ」と観客の目線を誘導する効果も生んでいる。

Now is the time! is the time!
 ここで2人が身体を傾がせつつ決めるポーズは「Time」の「T」。多くの球技で「タイムアウト」を審判に申請する時に用いられている。世界の何処であっても通じる「世界言語」である。
 しかしこのポーズは言わば「Pause」を求めるものなのであって、Just NowのTimeを表すものではない。2人は「T」ポーズのすぐ後にSU-METALの歌の裏で背中合わせに腕を組み「Just Now is the time!」と歌いながら、音程を表すかの様にポインティングをしていくので、タイム・アウトにはならない。

 こうした矛盾や不条理を、MIKIKO-METALは無意識に採り入れている。意外性、非予定調和がそこには生まれ、何を表現しようとしているのだろうと観客の注意力を高めているのだ。

さあ、時は来た
 の後、YUIMETAL+MOAMETALは屈んだポーズを早めに決めると、「Go for Resistance!」に入る直前、ギター+ベース・ユニゾンのフレーズに合わせ、指で1,2,3とカウントを入れる。コーラスの盛り上がりを効果的に予告している。

 サビに入ると「WOW WOW WOW WOW」で声を広げる仕種。
心は一つ」ではやはり様式美として、3人が向かい合い一本の指を立てる。
君が信じるなら」で大きく頷き、SU-METALと入れ替わりに後ろのポジションに移る。
進め」では『イジメ、ダメ、ゼッタイ』以来、BABYMETALの振付けでは印象的な振付けである敬礼がある。
道なき道を」で手を振りながら「進む」所作を行う。

 この「道なき道を」の振付けが私個人的には最も好きな場面である。
 上半身は歌メロに追従し、付点4分のニュアンスを表現しながらゆっくりと上下しながら両腕を前後させるのだが、下半身では全く異なるリズムで身体の向きを3/4周させているのだ。
 この部分は『ド・キ・ド・キ☆モーニング』の「知らないフリはキライ キライ」のパート、オートマタを模したダンスの発展形とも見える。
『Road of Resistance』でもドラムの16分連打に、流石に正確に合わせてはいないのだが、充分にドラムの音を激烈な足踏みで表現しきっていると言えよう。
 このパートのダンスはドラマーのプレイに近いのである。

 サビ後半「心の奥に」で、2人は左右のポジションを入れ替えながら互いの手を重ね、
燃える 鋼鉄魂(ハート) それが僕らのレジスタンス
 SU-METALの「レジスタンス」と歌うのと同時に、2人は拳を突き上げながら床に仰け反っていく」
 BABYMETALのダンスは、最初期にはテレビ・フレームに収まる様な、コンパクトなイメエジで作られていたが、早々に大ステージを経験していき、少しずつ変化をしてきた。
 3人が並んだ時の姿はこれまでも様々な構図が見られたが、SU-METALが直立し、左右の2人が仰け反っていくというピラミッド形態はかつて無かったものだ。
 仰け反る、というモーションは凡そ少女アイドルのものではないが、ヒップホップならば当然にある。しかし『Road of Resistance』のそれは、ヒップホップというイメエジは全くなく、強いて言えばスポ根アニメの構図である。
 このモーションは実際に演じるにはキツいらしいのだが、SU-METALの歌声が伸びているので、やらなけらばならない、という感覚でやっているという。

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 白眉はこの後だ。
 2拍目からすぐにギター・ソロの弱起分がスタートするので、2人はすぐさまSU-METALに合流してダンスに入らねばならない。しかし仰け反った体勢から直結でダンス・フォーメーションに戻るのは物理的に不可能だ。
 そこで2人は片腕を床について体勢を横にし、円弧状に床を蹴って回転しながら立ち上がるのである。
 ヒップホップにもあるにはあるのだろうが、どう見てもこのモーションは香港アクション・コレオグラフィのそれ、敢えて言えばドニー・イェンのムーヴメントだ。
『イジメ、ダメ、ゼッタイ』に「擬闘」が盛り込まれていたのだから、全く意外性が無いとは言えないかもしれないが、それにしても観る度に瞠目させられる。これもしかし、YUIMETAL+MOAMETALという、身体能力とセンスが極めて高いパフォーマーでなければ不可能な振付けだ。

 一回目のギター・ソロは、比較的振付けの難度は下げられている。とは言えパート終わりにはイントロ同様のギャロップ・ダンスがあるのだから決して楽ではない。
 ソロ終わりはまた、3人が時間差をつけて腕を上げていき、シンガロングをさせるパートに導く。



【シンガロング】

『Road of Resistance』のシンガロングさせるメロディは、男声にはキツい音域だ。
 本ブログでは以前、下ハーモニーを歌うのはどうかなどと無責任な事を書いた。
 これはBABYMETAL側も配慮したらしく、次に日本国内で歌わせるプログラムとして『あわだまフィーバー』の「Ah-Yeah!」のパートが設定された。昨年のSummer Sonicが初出だったと思う。いきなりSU-METALが「歌って~」と言い出したので驚かされた。
 しかしこの「Ah-Yeah!」はSU-METALのかなり上の音域で歌われているので、男声でも歌い易い。

『Road of Resistance』は、女性客の割合が大きくなれば、もっと良くなるのだろうと思っていた。
 しかし、ウェンブリーのライブビューイングでは全く異なるものが聞こえたのだ。
 テレビ等で当該部はチラっとだけ放送されているが、その音声はやはり整理された音だった。
 ライブビューイングのPAで聞こえたのは、最早音程など全く関係無いという、分厚い声のシンガロングだった。プレミアリーグなどフットボール・スタジアムで聞かれるチャントと全く同質だったのだ。
 ウェンブリーのライブビューイング体験の中で印象的な瞬間は幾つかあった。
『META!メタ太郎』(をそもそもやると予想などもしていなかった)で、応援団になりきっているYUIMETAL+MOAMETALの前で、SU-METALが中途半端なバッティング・ポーズを決めた時には思わず「くっ! くだらない!www」と実際に吹き出して感涙した(周囲の観客はあまり反応してなかったのが不思議だ)。これを見られただけで、辛いライブビューイングに来た甲斐はあったなと思っていたのだが、『Road of Resistance』のシンガロングというよりチャントでは鳥肌を立させられたのだった。

 この項続く





2016年6月 7日 (火)

『Road of Resistance』考 3

『Road of Resistance』考 1

『Road of Resistance』考 2


 このプログラムの論考に取りかかったのは2月であり、続きをここまで遅らせてしまった事については自分でも呆れ果てるばかりで、ひたすら恐縮している。
 日本に於いて、また海外に於いてもだが、BABYMETALを取り巻く状況は2月と6月となった現在とでは大きく変化している。しかしそうした変化にも関わらず、BABYMETALはずっと変わらない情熱でタスクを達成し続けている。



【紙芝居】

 前述の通り、このプログラムはライヴの終幕に披露される事が多い。イントロにはWall of Deathをやれという趣旨の紙芝居『戦国Wall of Death』が流れるのだが、初披露時の02 Brixton Academyではこの時だけ流された映像があった。
 例によってキツネ神がどうのという威圧的な論調なのだが、無個性な群衆が一様にスマートフォンを掲げる図を見せ、そうして撮られた映像を見ても真実には届かないという様な、要は「ファンカムをアップロードすんじゃないぞお前ら」という身も蓋も無い警告でしかない。
 ファンカムが無ければ、BABYMETALが海外にいずれは進出したにせよ、3年は遅れていただろう事は断言してよい。ファンカムこそが、BABYMETALがライヴではリアルなパフォーマンスを行うエネルギッシュなアーティストだと認知させたのだから。
 ただ、CDやDVDなどがRAL, earMusicというシンジケーションからリリースされ、海外でのエージェント契約も結んだ現在となれば、ファンカムは徐々に容認されなくなっていく事も仕方ないのかもしれない。
 しかし、コスト・投資が限りなくゼロに近いプロモーションにも関わらず、巨大なファンベースを築くツールの役割を果たしてきたファンカム群に、BABYMETAL側も感謝をすべきだと私は考えている。
 それにしてもこの時の紙芝居は無駄に長く、よくBrixtonの2000人は我慢をしたものだ。

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【コレオグラフィとライヴ・パフォーマンス 1】

 本プログラムの振付けにはあまりにも情報量が多く、語る事が多い。まずはイントロ部までを記す。

 遠鳴りの合戦SEが流れると、3人は大きなBABYMETALのフラッグを手にしてステージに進む。2014年の最初のワールド・ツアーから、フィナーレでは3人が開催国の国旗色に染めたBABYMETALフラッグを振る慣例があったが、『Road of Resistance』のフラッグはそうして両手で広げられるサイズよりもずっと大きく、身長よりも高い旗棒につけられている。
 定位置横一列に並んだ3人は、極めて厳しい表情で観客と向かい合う。戦(いくさ)に臨むのだから当然である。
 リヴァースSEが流れるや、バンドが前奏部を鳴らし始める。

 音源と神バンドのライヴ演奏が極端に異なるのは、唯一この曲のイントロであろう。基本的には音源を再現しているのだが、音源では低弦のパワーコードの方が大きいバランスであるのに対し、ライヴではコードをバックトラックに任せ、2人のギタリストはメロディのハーモニーを弾く。当然ながら高域のフレーズが際立つ事になり、音源とは印象が異なるのだが、当然どちらが良い悪いという問題ではない。

 3人はフレーズに合わせ大きく旗を振る。
 さくら学院でも「WONDERFUL JOURNEY」などで小旗を振るナンバーがあるのだが、『Road of Resistance』パフォーマンスのモデルはIRON MAIDEN代表曲の一つ、「The Trooper」をプレイする時にブルース・ディッキンソンが走りながら振るユニオン・ジャックの演出だろう。この曲はクリミア戦争に於けるバラクラヴァの戦いを詠んだアルフレッド・テニスン卿の詩を元に、スティーヴ・ハリスが書いたものだ。シングルのジャケットにてエディ(同バンドのマスコット・キャラ)がユニオン・ジャックを持っている絵が描かれている。

 旗は日常のスポーツ応援などでも見られるものではあるが、パフォーマンスのモデルの事もあり、最初の頃は硫黄島の星条旗やベルリン陥落時に於けるライヒシュタークの赤旗といった図をどうしても脳裏に過ぎらせてしまった。特に後者は、「レジスタンス」という語で先ずは誰もが脳裏に去来させるだろう、ヴィシー政権下のフランスや諸国の反ナチ抵抗活動(ナチは彼らをテロリストと呼んだ)があるのだから、連想は強まっていた。ただそれも、初披露から時間が経つとそうした事への連想は私の中でも薄れていった。

 前奏部の終わりに、3人は旗を斜に張って顔から片目だけを出す。
 これはデビュウ曲『ド・キ・ド・キ☆モーニング』の冒頭、顔の前でキツネサインの腕をクロスさせ、片目だけを見せていた演出を彷彿させる。
 思えばあのプログラムは腰が砕ける様な頭のバックトラックの間、更にバンドがイントロを鳴らし初めても4小節間そのポーズでじっと客席を睨み続けるという、アイドルのパフォーマンスとしてはあまりに異様なものであった。
 あの時はネタ性が主題だったが、この『Road of Resistance』という、BABYMETALがメタルとしてのアイデンティティを何のてらいもなくストレートかつ最大限にパフォーマンスするプログラムなのだから、この冒頭の彼女達の表情はたんに取り繕ったものでは決してなく、それぞれのアティテュードを見せるものとなっている訳で、まるで意味合いは異なっているのだ。

 スローな前奏部が終わろうとすると、SU-METALを残し、YUIMETALとMOAMETALは旗をドラムセットの辺りに置かれた旗立台に収めるのだが(SU-METALの旗はMOAMETALが受け取る)。SU-METALは観客達を睥睨し、左右に割れろと腕で示す。よく見てみるとこの時、SU-METALは観衆を直視せず、やや視線は上にある。観客の顔を実際見てしまうと、暴君の様な振舞はし難いのかもしれない。
 旗立台近くにハンドマイクが置かれているのをYUIMETALがピックアップ、SU-METALがダンスのポジションに後退する時にYUIMETALがすれ違い様に渡す。ただ一回の例(2015 Count Down Japan)を除き、これらのやりとりはアイコンタクト無しに完璧に履行された。

 そしていよいよインテンポになろうかという直前、3人は片足を大きく上げながら、馬に跨がるモーション。

「1!2!3!4!」

 YUIMETALとMOAMETALがそう叫ぶのに合わせ、SU-METAL「1」YUIMETAL「2」MOAMETAL「3」の時間差で疾走の前傾態勢に入り、すぐさまドラムのブラストビートに合わせて馬を襲歩させ始める。
 片手で手綱を持ち、片手で鞭(Thrush)を入れるという迫真性で、見えない馬をそこに現出させる。

 BPM205という激烈なテンポのサウンドを如何に視覚化、肉体表現するかでMIKIKO-METALが直感したのは馬に乗って奔る姿だった。
 速いテンポでのアクションを維持しながら、3人はぐっ、と向きを左に右に変える。空撮の望遠レンズで彼女達の馬の走りを見ている様な感覚を抱かせる。

 普通に腕を広げたり足を上げるといった通常のダンスがここに合わないのは、当然ながらカウントが速いからだ。腕や足のストロークを短くせねば遅れてしまう。かと言って小さい動きではダイナミックな曲調を表現出来ない。
 小刻に前後のジャンプを連続させるが、それにより全身が躍動しており、観客も演者も興奮状態となる。
 ドラムの奏法にグラッドストーンというものがある。ブラストビートを叩く上では必須な技術なのだが、『Road of Resistance』イントロの騎乗ダンスはその視覚化だと言えよう。その意味で、この襲歩(ギャロップ)がダンスのコレオグラフィとして取り込まれたのは自然な事だったかもしれない。ただし、それを実際に表現出来るパフォーマーが彼女達以外にいるだろうか。

 リアルの馬の走りを想起すると、単純な16ビートのストロークではない。蹄が地を蹴るタイミングは三連だ。3人の動きは意識してはいないだろうが、小さなジャンプを連続で行う故に、ステージを蹴るタイミングには付点がついたニュアンスを感じさせる。
 バンドの激烈な16ビートに三連のリズムを乗せたポリリズムとなっていると言える。

 この激烈な振付けの間にも、MOAMETALは細かいリズムで顔の表情を見せている事には改めて驚く。
 SU-METALはこの後にすぐ歌い出すのに、YUIMETAL+MOAMETALと全くシンクロしている。ここだけで相当な運動量であるにも関わらず。

 

 この項つづく





―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 本当はこの記念写真だけでエントリを上げようとも思ったが、幾ら何でもと思い、プログラム批評の続きを書いた。

Abbath

 昨日このズッ友写真が流れてきた時、本当に爆笑してしまった。
 ライヴでもインタヴュウでも、「素」を徹底して見せない演出をしているBABYMETALだが、こうして時折垣間見える「素」があるからこそ――、いや、「素」がそもそも何より魅力的なのだ。

 にしても彼らのこのインタヴュウは秀逸だった。


 

2016年6月 5日 (日)

VOGUEがBABYMETALに言及

Babymetal

 BABYMETALはワールド・ツアー第2節欧州ラウンドを開始しており、スイスで昨年の倍以上の観客を集めた翌日には、昨年にも出演したRock In Viennaで50分のステージをこなした。
『メギツネ』『Catch Me If You Can』などにも観客を参加させるイヴェントを設けたばかりか、なんとスイスでは『Sis. Anger』を初披露している。

 さて、その間に日本にいるファンは大いに悩ましい事態にもなった。
 ファンクラブ限定で横浜アリーナのBlu-rayが発売となるのだが、これが新春キツネ祭り、幕張天下一メタル大武闘会とのセットで税込み27,000円也。幾らなんでも非道いとは言っておく。

 また横浜アリーナ東京ドームは、翌日火曜という平日に追加公演が設定されて2DAYSとなった。これについては私もそうだろうとは思っていたが、予想していた人は多いだろう。申し込みはしたのだが、当たるとは思い難い。

 何故かあまりまとめブログでは採り上げられていないが、本国VOGUE誌のウェブ版で、BABYMETALのコスチュームが採り上げられた。


Babymetal Might Be Japan’s Most Wonderfully Weird Fashion Export

 今年度の衣装について、まあ私は全く評価出来ないのだけれど(昼日中のRock In Viennaのステージですらバックに埋没している)、無闇に露出させない重装備がWeirdではあっても、安心してステージ・パフォーマンスを愉しめる担保となっている事は評価されるべきだとも思っている。
 別のアメリカ・メディアのインタヴュウで、KOBAMETALは「レディガガの衣装を日本人が担当した例もあるのだし、欧米のデザイナーの衣装もアリだと思う」という様な事を言っていたが、勿論デザインは様々に試みられるべきとも思うものの、激しいダンスに堪え得る伸縮性、体温を逃し易い、かつ空気抵抗が最小限な仕立を可能にしているのは、今の担当者ならではだろう。これまでのチームで、より見栄えがする衣装を私は期待している。

 コメントで、このところまともに「論」を書いていないじゃないかという御批判があって、それは確かにそうなので申し訳ない。
 けじめとして何より『Road of Resistance』考を完結させねばならないとは思っている。

 昨年1月から今年春先までの期間に、私がブログに書いた文章量は30万字を越していたらしい。その労力を実業の方に振り向けていたら……、などとは考えない様にしていた。しかし最近ファンになった人には、とても頭から読める代物ではなくなってしまっている。
 いつかはやろうと思っていた、これまでに書いたプログラム批評の改訂作業に取り掛かっているところだ。しかしこれは苦行である。
 まだはっきりと述べられないが、「読みたい人が読みやすい」ものにしようと思っている。

2016年6月 1日 (水)

メタルなのだと完全に認知される

 昨日のエントリは、こういう事態が起こりそうだと見越しての焦りからアップしたものだった。

 過日から報道があっては取り下げられたりしていたが、足並みが整ったのか正式に発表があった。
 BABYMETALはAlternative Pressが主催するMusic Awardのショウでパフォーマンスをする事はかねてより報じられていたが、このライヴにJudas Priestのロブ・ハルフォードがコラボレーションとして共演する事となった。

Judas Priest’s Rob Halford to perform with Babymetal at 2016 APMAs

翻訳

 APにロブは公式コメントをしている。しかもこれが「やあクールだよね、楽しみだ」といった軽いものでは全く無かった。

“It's really cool to hear and watch such a strong young Japanese metal band make solid growth in the world with such unique conviction and invite me to headbang along with them for this special appearance,” says Halford of the collaboration. “Further proof of the continuing power exchange from the roots of metal into the future metalsphere!”

 BABYMETALは「メタルバンド」だと完全に認めているのだ。
 それに留まらず、自らがメタルのオリジネーターの1人であるという前提で、BABYMETALが正当な後継者の1人だとまで述べているのだ。
 まあロブは過去を振り返っても、「無茶苦茶佳い人」な印象の人格者であるし、レディガガと会った時にはコラボも噂された事もあるので、BABYMETALとの共演は有り得なくは無いものだった。しかしDragonForceとのコラボとは違いヴォーカリスト同士の共演はSU-METAL単身で臨んだJam Projectライヴ以来であり、大きな愉しみである。

 メタルバンド、という規程であるなら、3人のみならず神バンドもインクルードされるのだと個人的には思っているのだが、さて。

「BABYMETALはメタルか」などというエントリをちまちま書く意味など消えてしまった。勿論、私の結論だって「メタルだ」と断じる結論ありきではあったのだけれど。



 

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