ライヴ

2016年9月23日 (金)

東京ドーム観戦記

Corset

 私はファンクラブ抽選で二日とも外されてしまったのだけれど、友人が幸い当選してくれたお陰で、二日とも観る事が出来た。
 ドーム規模なのに外れるなど受け容れ難かった(何の為の登録だ)が、ライヴが近づくともう落ち着いてはいられなかった。

 開演直前の前説アナウンスで、二日かけて1枚目と2枚目のアルバムの全曲を、被りなしで全てを披露するという宣言がされると、誰もが二日来られる訳では無いのにとも思った。
 掛け値無しに5万5千人を二日集めるというこのライヴは、セットリスト以外については概ねがBABYMETALのルーティンなライヴであった。勿論ステージセットは弩級なものだったし、3人のパフォーマンスはやはり普通のライヴよりも昂揚していた事に疑いはなかったのだが。

 1日目は内野ではあるものの後方。二日目は外野レフト後方だけど前日よりはアリーナに近く、席としては共に悪かった。尤も8割の観客にとっても良い席ではなかっただろう。アリーナ客はステージ構造体の天頂に立つ3人は目視出来ない。
 円形ステージは多層になっており、並ぶ3人の姿は幾度か一周して、全方向に幾度かは向く(かなり速度があるので、相当な遠心力が掛かっていた筈だ)。
 来た人全てを愉しませようという意図は判ったし、配慮も感じた。
 しかし華奢な少女達は遥か遠くにいるという距離感ばかりが感じられた。
 円形ステージ上方には素晴らしい画質の4面構成の筒型モニタがあって、やはりその映像が頼りとなってしまう。

 両日共にライン・アレイ(スピーカー)の近くで、このスピーカーの指向性は極めて優秀だった。ドームという特性からだろう、低音が控えめの出音であり、帯域バランスも良かった。ドラムが心地よく響いていたし、ギターのリフもはっきり聞こえる。ただどうしてもモノラル音像になってしまう。また、スピーカー側の耳はやはり痛くなりそうだったので、両日共に片耳にイヤープラグを少し浮かせ気味に入れて、これで丁度良かった。

 天気は想定し得る中で最悪の二日だったし、11万人には色々な我慢を強いるイヴェントであったと思う。しかし東京ドームの係員による、終演後の観客の送り出しは極めてシステマティックに統制されており、非常に感銘を受けた。
 サポートアクト無し、モッシュも出来ず、1時間半弱だけのショウ。

 それでも、来た人の多くは満足しただろう。それだけのものになっていた。その事に率直に感銘を今尚受けている。


 1日目「Red Night」は、『Road of Resistance』始まりで『THE ONE』締め。チョイスとしては2枚目が多めなセットリスト。
『Tales of The Destinies』が初披露されたのが何よりも印象深い。
「(この曲を)どうライヴでやるのか想像つかない」とSU-METALはかつて述べていた。
 しかし神バンドによる演奏は既にしてこなれており、変拍子やテンポチェンジなどもナチュラルに聴かせるものとなっていた。3人はもう慣れており、至って普通の曲だと言わんばかりに歌い、踊ってみせた。
 ただ初演ならではなハプニングではあろうが、SU-METALのヴォーカルは終盤、「あ、ヤバい」という顔を見せた直後に声が裏返った。まあこれくらい起こってくれないと、ライヴ感が薄くなる。

 横アリ二日目程の完璧さではなかったが、SU-METALのヴォーカルはすこぶる調子が良く、5万5千人をたった1人でも圧倒する。
 ラストの『THE ONE』では、YUIMETALが感極まっている表情をしていた。
 ただ、やはり私は個人的にこの幕引き方があまり好きではない。
『Red Night』は、充分に満足は出来たが、しかし何か物足りなさを感じたのも事実だった。

 二日目『Black Night』は『BABYMETAL DEATH』始まり。やっぱりこれだよなぁと思った。
 最初にテンションが上がったのは、序盤にギタリストの1人がStrandberg BORDENを弾いている事に気づいた時。「Ledaだ!」
 私は今回のドーム公演で、スペシャル・プレイヤーの登場を勝手に望んでいたのだが、まさに正攻法はこれであった。トレブリーなトーンは藤岡幹大とは全く異なる個性で、これは愉しかった。

 実のところ、『No Rain, No Rainbow』についてはあまり思い入れがなかったのだが、この日の『No Rain』はSU-METALが良かったのは当然として、音源でもギターを弾いているLedaが大村孝佳と共にソロを弾くのが観られた事もあり、実に心に染みた。
 そして『紅月』だ。数十回以上聴き続けたこの曲だが、初めて目の奥が熱くなった。SU-METALの憑依度はかつて観た事が無い程だった。
 続いて、再演を諦めていた『おねだり大作戦』である。前日の紙芝居では「もうおねだりは決してしません」と言っていたくせに(Wembleyの完全流用)。
 もうこれでこちらのテンションはMAXになったが、BABYMETALはそこから本当にノンストップでラストまでやってしまった。
 これまでも「ノーMC、ノンストップ」は貫かれてきたものの、Black Nightの中盤以降は本当に曲間が無かった。3人の移動分だけである。
 それなのに『ヘドバンギャー!!』では二箇所ともYUIMETAL+MOAMETALは大の字ジャンプをやったのだ。
 ラストは当然『イジメ、ダメ、ゼッタイ』。紙芝居のナレーションは今年新録されている。SU-METALの英語発音はもうほぼネイティヴに近い。
 アリーナエンドに伸びた花道を、YUIMETALとMOAMETALは全力疾走で中央ステージに駆ける。
 完全燃焼した。ステージも客席も。

 二日でセットとしての東京ドーム公演は、最終的には極めて満足度が高いライヴだった。
 もし『Red Night』だけしか観られなかったとしたら――。
 いや、今はまだあの二夜の熱を抱いていたいと思った。
 4日経ってもまだ、その熱は残っている。腰痛も続いているのだが……。



 さて、またも長らく無沙汰をして大変申し訳ありません。
 出版した事で、まるで人前で全裸になったかの様な自己嫌悪があり、体調不良に陥り、ついでにウチのネコまで片眼が悪くなり、更には自宅用PCまでも不調になったという負の連鎖だった。
 本については、極めてケアレスなミスがあり、御指摘された以外にも見逃した部分が多く、これもまた自己嫌悪の元となっている。重版分は修正しているが、近い内に本ブログで正誤表をアップしますので暫くお待ち下さい。

 そして、出版記念イヴェントを今頃になってだが、やらせて戴く事になった。
 文藝・音楽評論のプロ、円堂都司昭さんとのトーク・イヴェントを10月3日に、下北沢の本屋B&Bにて行う。
 初対面なので、怒られに行く様な気分なのだがw、しかしプロの談話は私も是非伺いたいところだ。
 よろしければお越しを。詳しくはこちらへ。

2016年4月 3日 (日)

ウェンブリー・アリーナ公演 Live Viewing

 今晩、NHKが番組を放送するので、取り敢えず思いつきを記したが、あまりまとまっていない。
 ウェンブリーにはイギリス国内ばかりでなく、世界のコアなファンが集結していたが、どう観られていたかについては今回は触れずにおく。新プログラムについても然り。
 ただこれだけは書いておきたい。
「みみみ緑の電車――」などという歌を、臆面もなくロンドンで1万2000人相手に歌った事は歴史に刻まれるだろう。

 幾分冷静になってから書いているが、それでもZepp Divercityで見終えてまだ10時間も経っていない。


 これは苦行だなと思いながら赴いた。それでも観たいとも思っていた。

 以前私は本ブログで、ライブビューイングには関心が無いと書いている。国内の公演のLVは躊躇するが、今後BABYMETALは規模を拡大して世界を巡るだろう。LVの機会は増える筈だ。
 Zepp規模の立席会場でのLVは、全然アリだと思った。まず映写される映像が素晴らしい。4K解像度だと思うが(アスペクト比はIMAXに近い)、ほんの僅かなディレイでストリーム出来る高速回線とコーデックは見事に「金を取れる」コンテンツとなっていた。全く不明であった。
 後述の様にモッシュはほぼ不可能な客の詰め方だったが、充分リアルタイムで観戦している感覚は得られる。

 音響は……、傾向としては横アリライヴと同じものを目指していたのだとは思うが、誰しも思う様にサブウーファー域のローが出過ぎてミッドをマスクしており、ギターもヴォーカルも良くは無かった。これは会場での出音が実際そうであった様だ。

 私は最後に入場した客であったが、ドアを空けて自分が立てるくらいドアを背中で押していなければならなかった。2000弱程度の観客が来ていたが、率直に言ってオーヴァー・キャパシティであった。



 ウェンブリーはBABYMETALにとって試金石となるライヴだった。しかし私は全く不安を感じていなかった。
 昨年までは、海外に赴く前にはZepp等で会員限定ライヴを行っていた。しかし今回それが行われないのは何故か、私はずっと考えていた。
 もうBABYMETALは些かブランクが空いたとしても、ライヴ勘を失う事は無い。しかしステップアップする為には、新たな試練を乗り越える必要がある。

 それは単純にライヴのショー時間の延長である。

 ウェンブリーでBABYMETALは色々と新機軸を見せつつも、これまでの方法論は完璧に維持してみせた。「(ほぼ)ノンストップ/ノーMC/ノー・アンコール」そして「サポート演者なし」。
 それを過去に例のない、1時間45分程の長さで演じる。当然ステージは広大で花道もあり階段もあるのだ。体力的ペース配分など、過去の経験値だけでは計れない事をやらねばならない。ワンマンのアリーナ・ライヴなのだから当然だ。

 どこか大きなスペースで、BABYMETALは相当に特訓(リハーサル)を重ねたに違いない。
 改めて紙芝居インターバルというのは素晴らしい発明だったと感じた。
 二階のセンターには小型スクリーンを縦に設置されており、様々な演出を見せてくれた。誰しももう一度見たいと思っていた『Catch Me If You Can』の影絵演出はやはり息を呑む。

 ただ、では全てが巧くいったかと言えば、そうとは言い難い面もあった。
 冒頭の『BABYMETAL DEATH』は、ステージに先ず『KARATE』MVの白装束トリオがダミーで登場し、3人は出島の方に現れそこで演じる。直径5mも無い円形なので、どうしてもいつもの振付けよりも小さい動きになる。
 セットリストが進み、3人は決していつもと変わらない様に見えるのだが、果たしてこの小さな女の子達の動きが、大きな会場でどう見えているだろうと若干気になった。

 しかし、それはやはり本番の常なのだった。すぐにSU-METALは全開になっていき、圧巻の歌声を響かせた。柱のSU-METALが弾けだすと、YUIMETAL+MOAMETALも一層動きが大きくなっていく。

 次第に盛り上げるとか、緩急つけてといったオーソドックスなセットリストはBABYMETALには似合わない。攻めて攻めきる構成だった。次に何が出てくるのか予測がつかない、スリリングなセットリストだった。
 そして、それを最後までやりきれたのだ。
 やりきれると思ってはいたが、「See You!」を見終える頃になると、「うはぁ、やっちゃったよ本当に」と感慨が深かった。

 

 新曲は期待以上に演ってくれた。MIKIKO-METALは大変だっただろう。
『GJ!』『META!メタ太郎』や直近の『KARATE』も含めると一挙に演目が増えたのだから。
『Amore -蒼星-』は、「いつものSU-METALの独自振付け」が殆どの様だ。同じスピード・メタルという事もあり『紅月』とかなり同じモーションが多かった。

 ところで、私は自分でも意外な思いを抱いていた。
 これは紛れもなくアイドルのライヴだ。輝く魅力を持つヒロインが、己の持てる能力を熟知し、最大限以上に発現させるのを崇める様に観るショウなのだから当然だ。

 このブログで、使うまい使うまいと避けていた言葉が脳裏に浮かんで離れない。
 「か、かわいい……」
 尋常でなく、そう思わざるを得なかった。

 そして、これは私の錯覚かもしれないが、「さくら学院回帰」的な印象を抱いた。
 その主な理由は、『METAL RESISTANCE』楽曲の幾つかに原因がある。
 私の予想はさして当たらないのだが、黒ミサが映像商品化されるだろう事と、『GJ!』というタイトルの楽曲はさくら学院的なものかもしれないという点は実際その通りだった。

 メロディはコーラス部のみ(なのだが、ラップ部も完璧にシンクロする音の微妙な高低がある)という『GJ!』でのBLACK BABYMETALの歌声は、どうしたって2代目ミニパティのそれに近しい。今回のライヴではユニゾンだった。
【訂正】ファンカムはあまり見られていないのだが、『GJ!』は生でハモっている。2人にお詫びして訂正します。

 YUIMETAL+MOAMETALは、通常通りプログラムの構成に沿った表情を見せるのだけれど、『4の歌』が階段上からスタートし、2人がポーズを決めた後に階段を降りようとする瞬間、2人が顔を見合わせて笑っていた。
 そしてSU-METALが、もの凄くナチュラルに「うはー」という笑顔(かなり油断しきった)を幾度も見せていた。『ギミチョコ!!』であんなに笑っている顔は初めて見た気がする。
 勿論、カッコイイ系のプログラムでは完璧になりきっており、そのオンオフが明瞭になっているのが印象的だった。

 僅かではあるけれど、BABYMETALの表現には変化の兆しがあるのかもしれない。
『Amore』や『シンコペーション』の様な日本ドメスティックな楽曲も「敢えて」導入しているのだろう。
 アルバムでは「メタル」を強め、ライヴではもうちょっと「アイドル」を強めるといった変化は、単なる再生産を続けるプロジェクトなどではなく、進化させねばならないBABYMETALとして、必要な措置なのかもしれない。

 ただ、今回のLVで私がアイドル方向として愉しんだのは、良い理由ばかりでもない。
 神バンドは今回もテンション高い演奏を完璧にやってのけた。しかし残念ながらディテイルは伝わらない。ロックのライヴとしては愉しみ難かったのだ。
 やはり青山英樹が最も大変だっただろう。
 BABYMETAL楽曲の全般で多用されるキックの16連打は、良い音響であれば迫力となるが、今回の様な再生環境では粒も揃って聞こえず、バックトラックのシンセと同化してノイズと化する場合がある。横アリでもそうだった。

 キックの一発一発に気合いを入れた、ロックらしいビートをもっと尊重した曲が増える事を望む。アリーナの観客達もリズムに乗れたら、もっと楽しめるのだから。


2015年12月13日 (日)

横浜アリーナ ACT-II 観戦報告

 横浜アリーナ公演ACT-IIへ行ってきた。
 まだブログで長文を書ける状況になく、公演に行けるのか先週まで見えなかったが、何とか行く事が出来た。

 BABYMETALを好きになって1年、遂に実際のライヴを観られた。
 驚きや意外な事は何もなかった。新曲披露も発表の数々も想定の範疇。
 しかし今年で最も楽しい時間だった。

 いずれ私のインプレッションもまとめて書きたいとは思っている。
 取り敢えずは印象的だった事などを。

 アリーナDブロックのシートだった。シートとしては最も良いポジションだったかもしれない。しかしやはりステージは遠い。
 大型スクリーン・モニタと実際のステージと、結局半々くらいに観ていた気がする。

 ギターの低弦は全く聞えず、音響は到底良いとは言えなかったが、予想していたよりは遥かに良かったし音楽として愉しめた。
 ヴォーカルは3人共に抜けて聞えていた。
 SU-METALの歌声は私にはノーマルに聞えていた。音楽用耳栓は持っていったが使用しなかった。音量は至って普通だったと思うが、ACT-Iと設定は変わっていたかもしれない。

 そしてSU-METALの歌声に関してだけは、予想よりも上回っていた。PA越しではあるが、明らかに地声の抜けの良さ、強さがあってこその歌声だった。
 歌に関してはほぼ完璧であり、『メギツネ』のいつものところでブレスが足らなくなっただけだ。
 もうSU-METALの歌を「巧い」などと軽々に評すべきでなく、押しも押さぬ実力派歌手なのだと認識を改めた。

 カンフー的な振りの新曲だけは、YUIMETALとMOAMETALのモーションでまだユニゾンが徹底されていなかったが、これも新曲ならではの観客の愉しみだろう。他のプログラムが完璧であるのと対照的だった。ここから精度を上げていくのだ。

 最も予想を裏切ってくれたのが照明だ。目潰しやストロボは最小限に留め、三人がパフォーマンスをしている最中はきちんと光を当ててくれた。
 美術装置も衣装も、「Trilogy」の意匠を徹底して入れ込まれていた。幕張のそれが後付けでとってつけた感に不満を書いたが、もう称賛しか出来ない。

 曲として完成された『ラララ』(幕張では事前録音でスキャットだけが流れた)は、恐らく『(We Are) The One』といったタイトルになるのだろうが、アンコールでは三角四面体のゴンドラに乗って、アリーナ上空を一周した。この時が最も三人をよく見えた時だった。ステージ上の三人のサイズ感は、遠目ではやはり実感が無かったのだけれど、MOAMETALがこちら側を向いてるのを見て、やはり小さくて細いんだなぁと思った。

 アリーナ・シートの真ん中よりやや後方から見る客席は壮観だった。
 BABYMETALの曲は皆全てのフレーズを覚えており、面白い程に1万数千人が揃って腕を上げ声を上げる。
『Road of Resistance』のシンガロングは、バンドが音を止めている間も完全にテンポを維持して歌っていた事に感銘を受けた。

 やはりこんなライヴはこれまで観たことが無い。メタル/ロックでもアイドルでもなく、BABYMETAL独自な観客が仕上がっている。

 アイドル的存在は、ポピュラリティを広げるにつれ、アイドルの主体のみならずファン、オタがどういう仕上がり方をするかという事も、考える必要があると感じた。
 私よりも先輩な方々も多く、年齢層は極めて広い。
 そしてシートならば、体力に自信が無い様な観客(私)でも充分堪能出来るライヴだ。
 BABYMETALは素晴らしいファンを作り上げたと思うし、そのファンも含めてのBABYMETALなのだと思う。

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